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広州大学での学生との交流会

前回の投稿を書いていて気づいた。2019年11月に訪問した広州大学の記事がない。ということで、当時のことを思い出しながら記事にしておきます。

これまでの記事はこちら。

広州大学は現勤務校との協定校。広州市政府が設置機関の公立大学。先に書いたように、広州市と福岡市は姉妹都市協定を結んでいるご縁もあって、本学と広州大学も学生交流が行われている。

今回の広州へのツアーには福岡市職員で現在は広州市に駐在している方に大変ご尽力頂いたのだが、この大学訪問は市役所職員さんからのご提案だった。広州大学側はもっと本学との交流を進めたいのだけれどもと。「ならばやりましょう」と良くも悪くも断らないので、今回の交流が実現した。

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広州大学の本館的建物?

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キャンパスは緑豊か。日本語学科の学生が案内してくれた。

以前、深圳大学を訪問した時には数名のやり取りだったこともあり、今回もそんな感じだろうと思っていた。福岡から来た教員と学生にそんなに興味を示さないだろうと。ところが、そんなことはなかった思わぬ歓待を受けることになった。

学びの意欲が高い

いざ教室に入ると、約100人くらい入る教室が熱気に包まれている。夕方16時から始まるセミナーの告知を見て、席が埋まるほどの人が来たそうだ。表紙の写真は3分の2だけで、実際には右側1列にも人が埋まっていた。多くの学生さんだけでなく、日本語学科の先生も多くお越しくださった。

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真ん中と右列のみなさん

冒頭は私の拙い中国語による挨拶。「こんにちは!私は〜」という定番の挨拶だけしてあとは日本語。中国人留学生に同行してもらっていたので、あとは彼の通訳をお願いした。

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私の挨拶

そして、学生からのプレゼンを2本。今回は3年生による「楽旅」プロジェクトと、ゼミ4年生が実際に取り組んでいるフィットネス・ビジネスのプレゼンだった。

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プレゼンその1「楽旅」

まずは「楽旅」から。プランの内容は、団体旅行で幹事が苦労することがあるので、その苦労をどうすれば取り除くことができるかを提案しようとしたもの。実はこのプロジェクトは夏に開催されたStartup Weekend Fukuokaで優勝したチームによるもの。Instagramやスマホの画像に関連づけられた位置情報をアプリにお気に入りとして蓄積し、グループ内でその情報をシェアすることで最適なルートを教えてくれるというアイデアだった。福岡ではすでにMy Rootというサービスが大手交通機関や自動車メーカーによって実験が始まっていたこともあり、これらのアイデアをうまく取り入れられればさらに進むだろうと期待していた。

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プレゼンその2「PineFit」

次のプレゼンはPine Fitと題したゼミ4年生によるビジネスアイデア。実業部分ではすでに動いている彼のビジネス。顧客のサポートのためのコミュニケーションにオンラインを使いながら、人々にもっと気軽に楽しくフィットネスを楽しんでもらえるようにと試行錯誤しているサービスについて発表してくれた。

途中通訳を織り交ぜながらとは言え、日本と中国とでは環境が大きく異なるのは言うまでもない。彼/彼女たちにはどのようにこのプレゼンが聞こえていたのだろうか。質問はあまりないかもなと思っていたのだが、実際にはそのようなことはなかった。

日本人学生がいたと思ったら!

さて、先に書いたように、広州大学は本学と協定校なのだが、実は日本人が2人いたという話を最終盤に聞いた。

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学生との交流①

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学生との交流②

その日本人は2人とも本学の人文学部の学生さんだった。日本への帰国後、会いましょうと話になった。

後日談として、この中の1人の話を市役所職員さんから伺った。というのは、最初は中国語を勉強するつもりで来たのだけれども、このプレゼンテーションを聞いて自分の将来を考えたらしい。

中国はお手洗いの清潔さがまだ問題になることがあり、世界中にはそうやって困っているところがたくさんある。できればここで学んだ中国語を生かして、その企業に就職して、世界をより清潔にしていきたい。

こうした異国でのリアルなコミュニケーションは、日本と諸外国だけでなく、日本人同士でも起きることなのだ。若い人がこうやって異国で交流するっていい機会だな、自分ももっと早く外に出たかったなぁと改めて感じるエピソードでした。

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広州駅でお別れ。大変お世話になりました。

まとめ:オンラインはオンラインでも考え方が全く異なる?

今回プレゼンした2本が双方ともにアプリを使ったサービスだったこともあって、学生の関心は総じて高かったように感じた。ただ、質問が日本で日本人向けに行ったプレゼンのそれとは大きく異なっていた。

彼らはWeChatを日常的に用いる。WeChat1つで買い物もできるし、友人とのコミュニケーションも可能だし、さまざまなサービスを利用することができる。だから、双方とも「そのサービスはWeChat上で使うことができるのか?」からスタートする。これが重要。そして、「類似したサービスはすでにWeChat上にある」と来る。確かに旅行関係であればCtripがある。

そこでさらに学生は質問をやり取りするのだが、日本人同士であれば当たり前に共有しているコンテクストが通じない。彼らは彼らの生活様式を基本に話を聞いているのだから当たり前。ビジネスのローカライズと言えばローカライズなのだろうが、質疑応答が進めば進むほど、日本と中国の置かれている現状とその大きな違いを認識することになる。

こうしたやり取りの後、帰りのバスの車中で4年生がこんな話をしていた。「日本のビジネスはどんどん細分化して小さい方、小さい方に進もうとしているけど、中国は全部WeChatに乗せようって話になる。そこに最適化する方向でUIやUXができていく」と。その時は何気なく聞いていた話なんだけれども、確かに日本の今のビジネスのやり方と中国のそれとでは全然違うのかもしれない。経済が発展しているしていない、後進国かそうかどうかという問題ではない。

日本は顧客主導でどんどんサービス側が1人1人のサービスの好みに合わせていく印象。一方で、中国では合理的に顧客が便利になるサービスであれば受け入れる。進化論的に中国経済がそこまで成熟していないという理解も可能かもしれないが、スマホとアプリ、インターネットの登場で彼らの生活は間違いなく豊かになっている。が、日本人から見るとまだまだ大雑把に見えるのかもしれない。いや、ダイナミックすぎて理解できないのかもしれない。

この1−2年、中国や香港、ベトナムなど近隣のアジア諸国を訪問していて彼らの日本に対する憧れのようなものをヒシヒシと感じる。日本的な美的センス(すごいチープで嫌だな/もう少しちゃんと表現したい)に憧れのようなものを持っているようだ。中国人は「日本のものは壊れない。いいものを作っている」というような信仰めいたものがまだ根強く残っているそうだ。まだ、なんとか日本はリスペクトされている。

が、アナログで一定の成長を遂げてしまい、あとからオンラインでサービスを乗せてきた日本と、アナログの成長とデジタルの成長が同時に来て(場合によってはオーバースペック)いる中国とでは、オンラインの使われ方が全く異なっている。これは注視すべきことかもしれない。

実際に2020年に入り、新型コロナウイルスの話題が広まるにつれて、当初は中国に対する伝統的な理解が支配していたように感じるが、徐々に日本の後進性が案じられるような事態になりつつある。特に台湾のIT大臣の話は最たる例。ITはあくまでも道具なのだが、これを課題解決にどう利用していくのかというトレーニングを受けている人が少ないのかもしれない。これから経済的にも厳しく、人口が減っていく中で、この国の経済力を維持するためには個々人の生産性向上が欠かせないのだが、今回の災禍は日本社会のあり方をいろいろと変えていくキッカケになるのだろうか。

(余談)
そのあと新幹線で香港に戻り夕食。以前は満員だったレストランは空席ばかり。

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実はこの翌日から立て籠もっていた学生を排除するために警察隊が大学に突入していくというシビアな時期の訪問だった。定宿にしている尖沙咀から歩いて近くにある香港理工大学は大混乱だった。この旅もギリギリの綱渡りだった。

帰国してすぐ非常勤先で講義をしたが、さすがに眠たかった…。

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