第2章 中小企業における経営管理・管理会計実践に関する実態調査 ―福岡市内・熊本市内の中小企業を調査対象として―

ここから論文は第1部に入ります。第2章から第4章の第1部は熊本県と福岡市の中小企業を対象に行ったサーベイ調査を中心にまとめています。第2章はサーベイ調査の報告,第3章は従業員別の傾向を平均差の検定で測定,第4章は変数を合成して共分散構造分析にトライしています。

今日は第2章の調査結果を見ていくことにしましょう。

1.はじめに

本章は,未だその実態が完全に明らかにされていない中小企業の経営管理・管理会計の実践の一端を明らかにすることをアンケート調査において明らかにすることを目的とする。

中小企業白書2019年版によれば,日本国内の全企業359万者のうち,いわゆる中小企業や小規模企業者と呼ばれる企業は358万者あり,全企業の99.7%を占めている。しかしながら, 管理会計研究における実態調査では, そのほとんどが大企業を対象としたものであり, 中小企業を対象とした研究は数えるほどしかなかった。そうした中で, 本調査の結果によって, 中小企業の経営管理, あるいは管理会計の実態の一端でも明らかにできたのであれば幸いである。

中小企業であっても経営管理者による企業内部の管理に資する会計情報の提供を主目的とする管理会計の重要性はいささかも減じない。例えば,大手メーカーの下請として生業を立てている中小企業にとって,取引先からの要請に応えるための原価低減の必要性は極めて高い。そのため,企業経営の計器盤たる会計実務,とりわけ管理会計の実態を知ることは研究上でも,実務上でも意義深いものと思われる。

そこで本章は,2010年秋にくまもとテクノ産業財団,2011年夏に福岡商工会議所の協力を得て実施した中小企業を対象とした経営管理や管理会計実践に関する実態調査の結果を報告するものである。これにより,中小企業における経営管理・管理会計実践の一端を明らかにするとともに,過去の調査から得られた結果との類似点,相違点を明らかにできると思われる。

ここから先は

8,277字 / 10画像
この記事のみ ¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?