ドーンブリンガー3巻 リビングデッドガーデン初陣
ナーグル神から力を授かり姿形が腐敗したリビングデッドガーデン。
学者であったブックマンは、生前シルヴァネスの研究を熱心にしていた。
しかし今となってはそのような知識は必要は無く、むしろ逆に腐敗に関してを知り尽くしたい欲求に塗れていた。
ブックマンは、腐敗を知るためにはまず今、行使できる魔術を試すこと。そして腐敗した仲間達が周りに対してどのような影響を与えるのかを早く知りたかった。
ブックマンはそれには実戦をすることが近道だと考え、早速平原へと進軍を開始した。
マーシャルロー率いるシグマーの民がリビングデッドガーデンに立ちはだかる!
彼らはどうやら、この平原の先に進軍をして自らの陣地を開拓するために旅をしているらしい。
…ブックマンはそれを許すことは出来なかった。
ナーグル神の恩恵を受けた者たちは、腐敗を広めることに喜びを得ている。
繁栄は即ちその行いの逆である。
ブックマンは己の魔術と仲間の腐敗の力を試す矛先をシグマーの民に向けてぶつける事とした。
「繁栄の先に民の希望があるのです。ブックマンよ。何故腐敗など広めようとするのです?」
「マーシャルジョーよ。分からぬか?腐敗とは即ち大地の成れの果てだ。命ある者いつかは果てる。それならば、腐敗を得て永遠の喜びを得た方が朽ちて苦しむより遥かにましであろう?」
「…それはただ命を、生きることを諦めた世迷言だと何故理解できない!繁栄のために道をあけるのだ!さもなくばこの私が相手だ!」
「…話が通じなければ力ずくとは、全く… 私はあいにく力仕事は苦手でね。できれば勘弁していただきたいものですね!」
「ひっく… あぁーあ、酒が切れちまったよ。なぁ、ハエライダーさんよ。酒はねぇのかい?最後ぐらい1杯やらせろや?」
「悪いなおやっさん。オレの相棒をハエ呼ばわりするような奴にくれてやるもんは何もねぇなぁ。変わりにこれでも食らいな!」
ガーデンタクシーズが跨るのは砲術長が言うように確かにハエの化け物だ。
しかし、この姿になる前は違った生物であったのだ。腐敗を受け入れざる得ない状況により、突然変異してこの姿にされてしまったのだ。
…しかし、悲しくも腐敗の姿になる前の記憶はリビングデッドガーデンには無い。ただ感じるのはその者とあったであろう確かな繋がりのみ。
ハエとバカにされたガーデンタクシーズは、砲術長にむけて腐敗の刃によるトドメの一撃を与えていった…
「そこをどけー!ブックマン!坊ちゃん!今セバスチャンが行きますぞー!」
勢い良く騎兵隊を薙ぎ払うも…
「…よくも坊ちゃんを。ブックマンが貴様に何をした!」
「…貴方が怒るのも無理はない。許せとは言わないが、私には民を繁栄へと導く義務があるのです。道を開けていただきましょう」
吠えるセバスチャン。しかし腐敗した身体の動きは鈍く、ジョーの足には追いつくことはかなわないのであった…
リビングデッドガーデンは、シグマーの民の進軍を許す結果に終わった。
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