『両利きの経営」を読む(1)

『両利きの経営』O'Reailly and Tushmanをゼミで輪読。
https://www.amazon.co.jp/dp/4492534083
一般書なので、あまり厳密なことは置いておいて、内容のかんたんな紹介と感想、TODOを記す

探索と深化(exploration and exploitation)が本書のテーマ。両利きの意味は、探索と深化の意味。exploitationは、利用とか活用とか言う意味。探索して得た知識を、活用する、という意味。exploitationに深化という訳語を当てている

企業は、成功すると、イナーシアが強く働いてサクセストラップにおちいる。サクセストラップにおちいると、イノベーションできなくなる、というのが主張。そこで、組織マネジメントとして、探索と深化を「制度化して」行わなくてはいけない。この過程でとくにリーダーシップが重要になるよ、といっている。

本書は、チェンジ・ロジック社(筆者たちが設立したコンサル企業)の研修で用いているコンセプトやツールなどを紹介するために書かれたそうである(p.44)。そのせいか、リーダーシップを強調する箇所が多い。あと、研修用のツールのためか、気付きを与えることを最優先にかかれている。その代わり、かなり議論・ロジック・エビデンスは荒っぽい。

第1章 では、イノベーションが組織にとって難しい、ということを紹介している。イノベーションのいくつかのタイプを紹介している。漸進型イノベーション(インクリメンタル)、ラディカルイノベーション、アーキテクチャルイノベーションが取り上げられている。

インクリメンタルイノベーションは連続型のイノベーション。改善などが含まれる。組織内に蓄積された能力が、このイノベーションで効果的。

ラディカルイノベーションは非連続型のイノベーション。組織能力が無効になるような技術進歩。真空管技術から半導体技術になる、などが例としてよくあげられる。

アーキテクチャルイノベーションは、技術・構成要素は既存だけれども、その組み合わせで製品・サービスを改善させるイノベーション。(注:わかりやすくいうと、技術進歩がなかったとしても、製品の複雑性が増加すると、起こるイノベーション。複雑性が増すと、製品設計をモジュールに分割し、モジュールの組み合わせで、製品を作ろうとする。モジュールの組み合わせの仕方で、製品の売り(≒core concept)が変わるよね、

筆者らしい指摘として、「アーキテクチャルイノベーションは、基本的に、クリステンセンの破壊的イノベーションと同じ」を指摘している。これは、あたっている。

破壊的イノベーション(ディスラプティブイノベーション)は、販売チャネル由来の組織ジレンマがおこるイノベーション。アーキテクチャルイノベーションは製品開発由来の組織ジレンマがおこるイノベーション。

どちらも、組織的な誤認識を扱っている。また、どちらも、新しい市場(ユーザーセグメント)を見逃す(組織的誤認識によって無視する)という点も共通している。

(注:組み合わせる、という点でモジュラー・イノベーションを想起する読者もいるかも知れない。モジュラー・イノベーションは、組み合わせで新しい用途を生み出す、という視点がある。それに対して、アーキテクチャー・イノベーションは用途は変わらない。

3つのインベーションタイプを紹介しているが、要は、「イノベーションは単に技術開発じゃないよ。組織能力が必要なんだよ」といっている。イノベーションはマネジメントできるよ、と言いたいのだろう。

でも、なぜ、この3つのタイプのイノベーションを取り上げたのか、不明。もっといろいろなイノベーションタイプがあると思うけれども。。

第2章は、探索と深化。

  • 組織の進化には、多様化ー選択ー維持、というような3つのフェーズがあること

  • サクセストラップがあるから、企業は新しいイノベーションできなくなる。成功すると、そこから、惰性(組織イナーシア)が生まれて、失敗してしまう、としている

  • 必要とされる組織変化のスピードが近年、早まっている、と指摘


成功例として、アマゾンの成長が紹介。もともとオンライン書店だったけれども、ネットECのプラットフォーム(メーカーが出品できる)になり、その後、AWS事業を成功させた、と紹介している。探索と深化の成功例だとしている。

このあたり、よく理解できなかったのが、アマゾンのどこにサクセストラップがあったのか?という点。ここまで、サクセストラップにおちいった場合に、そこからリカバリーできる方法が、両利き経営なのかな?、とおもって読み進めていたから、理解できなかった。

アマゾンの例は、多角化経営(関連多角化と非関連多角化)の例でよく取りあげられる。両利き経営というのは、多角化戦略というぐらいの大きさで考えればいいのだろか。

以降、次の章あたりから、雲行きが怪しくなるが、読み進めてみる
(ゼミでは、この後、関連した学術論文も読む予定)


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