確定拠出年金と資金繰り
確定拠出年金では、企業は決められた額の拠出を行えばよく、仮に年金の積立不足が発生しても、その補填をする必要はありません。このため、確定拠出年金は、将来の財務リスクのない退職金制度として紹介されることがあります。
このこと自体は間違ってはいません。しかし、確定拠出年金が手軽な退職金制度であるかどうかは全くの別問題です。今回は、確定拠出年金における企業の資金繰りの注意点について説明したいと思います。
確定拠出年金では企業に年金の運用リスクはない
まず、基本的なことですが、確定拠出年金では年金の運用は従業員自らが行います。したがって、将来年金としていくらもらえるかは、従業員の運用の巧拙で決まり、企業が責任を負う必要はありません。
このため、確定拠出年金を採用している会社では、将来において掛金の追加拠出を求められることはありません。つまり、予定外の支出をする必要がないのです。これは企業にとって、確定拠出年金の大きなメリットの一つです。
追加拠出の義務はないが、拠出の義務はある
年金の積立不足が発生し、従業員が受取れる年金額が想定よりどんなに下回ってしまったとしても、それは従業員の責任なので、企業が追加で拠出を求められることはありません。ただし、企業には掛金を拠出し続ける義務はありますので注意してください。臨時に行う追加拠出はないけれど、年金規約で決められた額を定期的に拠出するという義務はあります。
この義務は軽視されがちですが、実際にはかなり重い義務です。なぜかというと、掛金の拠出は年金規約で定める日までに納付しなければならず、期日後には拠出ができなくなってしまうのです。その理由が、担当者のミスであったとしても同様です。
拠出できなかった掛金は企業の負担で補償する
拠出ができなかった分をどのように補償するかは企業しだいです。給与に上乗せ支給するなら、税金や社会保険料を引かれる分も考慮しなければならないので、拠出するはずだった金額の20%以上は多く支払わなければならなくなります。
そうすると、掛金を拠出できるだけの資金は常に準備しておかなければならないことになります。業績が悪くなったから、拠出を待ってもらうということはできません。拠出期限を待ってもらえない以上、シビアな資金繰りが求められるのです。
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