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志存高遠 目標は高く持て その13
新聞社の仕事は楽しかったよ。
市町村の特集から業界の特集まで担当しながら、その中に入れる記事も書かせてもらえるようになった。
だから広告営業は並行してして取材活動にもなり、ますますやりがいを感じたし、業界特集や、行政の首長との取材はとにかく面白くて、「地方行政の裏側」を覗けたのも大きかったね。
県知事をはじめ市町村長、団体のトップ、企業のトップなどとどんどん会って話を聞いた。
ある優良企業の社長さんに言われたんだけど、僕は物腰が柔らかくて、ほかの新聞記者みたいに「聞きたいことだけ一方的に聞く」タイプじゃあないから話しやすいと。
だから「オフレコ」の話がどんどん飛び出す。
取材も、営業も基本は同じ。
相手に興味を持つことなんだけどね。
普通の新聞記者は勉強不足だから、突っ込んだ話ができないでしょ?
僕は実際に経営もわかるし、工業系の知識も技術者レベルで持っていたから、質問のレベルが半端じゃあない。
だって、知りたいから。
というより、「知りたいところを選んで訪問している」からね。
新聞社の名刺1枚で、いればだいたいの社長さんは出てきてくれる。
いなくても2回目は待っていてくれる。
商社マンだった僕は、「敷地内にいる人は全員お客様だと思って接しろ!」と教育されたから、企業の門をくぐった習慣から愛想よくふるまったから。
伝言をお願いした人が「感じが良い人でしたよ」と言ってくれたり。
こんなこともあった。
ある会社へ行った時、草むしりをしていたおじいさんがいてね、僕は「こんにちは、暑いのに大変ですね。お疲れ様です!」って声をかけて、社屋へ入ったんだ。
そして、常務と話していたら、さっきの草むしりをしていたおじいさんが手をふきながら近寄ってきたので、「お邪魔してます。お疲れさまでした!」って挨拶したら」常務さんが大笑い。
「社長、もう会ってたんですかあ?」って。
えっ、あの草むしり爺さんが、あの有名な優良企業の創業者???
腰が抜けそうだった(笑)
社長も大笑い。
「まさか、社長が草むしりしてるとは思わなかったろう?」と。
僕は、「いやあ、そんなことはないですけど・・・」ってやっと言ったかかどうか。
でも、なんだかいい雰囲気になって、「飯を食べながら話そうよ!」って社長室で弁当を食べながら話して、そうしたらすごいオーディオが置いてあって、僕もオーディオが大好きだからつい「すごいですねえ」って言っちゃったら、延々とオーディオ自慢と試聴会が始まって、夕方までいたかなあ。
楽しかったけど、あの時もしも、用務員のおじさんだと思ったら…と思うと怖かったね。
でもね、その後もすごく可愛がってくれて、支局のそばに来ると、声をかけてくれて、「旨い蕎麦屋があるから一緒に食べに行こう」とか誘ってくれるんだ。ただそれだけなんだけど。「あとはさ、息子たちに話は聞いてよ。あんたの取材には協力するように言ってあるから」って。
実際いろいろネタをいただきました。
大きな目標をつかむためには、小さいことの積み重ねも必要なんだということ。これは教訓だったね。
<続く>
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