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移動平均線と絶対モメンタムの違いを直感的に理解する


序論

「最終的に投資手法は些末な問題にしかすぎず、適切なルックバック期間さえ分かればよい」みたいなポストを見ました。果たしてそうでしょうか?実際に検証してみることはデータエンジニアとして、いえ、投資家として当然です。(まさか「偉い人がそう言っていたから!」と他人の発言を鵜呑みにしてはいませんよね?)

まずは1倍ETFで検証してみる

さてここで、ルックバック期間を固定して、移動平均線と絶対モメンタムという対象のシグナルが上の場合はフルベット、そうではない場合はマーケットから資金を引き揚げるという似たような思想の戦略で検証することにします。

具体的にはS&P500指数のETF $SPY をシグナルを上回った場合はホールド、下回った場合はキャッシュポジションというシンプルな戦略を用います。ここでルックバック期間は8ヶ月で固定します。

あえてportfoliovisualizerのリンクは載せませんが、結果を先に載せます。(必要であれば自分で設定してみてください。自分の手を動かすと言うのはとても大事なことですよ?)

$SPY 移動平均線。ルックバック期間8ヶ月
$SPY 絶対モメンタム。ルックバック期間8カ月

1.5%とは言え、大きく差が出ました。何故でしょうか。

1倍ETFでの結果を受けて考察

ここで、トラックレコードを確認します。一例として記事を書いた2024年から直近の2023年のトラックレコードです。

$SPY 移動平均線。ルックバック期間8ヶ月
$SPY 絶対モメンタム。ルックバック期間8ヶ月

移動平均線モデルは11月でIn Market → Out Marketとなっていますが、絶対モメンタムはホールドをし続けてます。これは移動平均線は直近8ヶ月の平均値を採用するのに対して、絶対モメンタムは単純に8か月前の値を採用するからです。
具体的にチャートで確認しましょう。

$SPY の月足チャート

移動平均線モデルは10月の終値の段階で移動平均線の下に居るのでキャッシュポジションですが、絶対モメンタムは1月末の終値(図では分かりやすく2月に矢印を引いていますが)よりも上におり、プラスのモメンタムである為、引き続き株式をホールドです。

こういった細かい積み重ねが最終的には大きな差に繋がると考えられます。

レバレッジETFだったらどうなるか

ルックバック期間が同じでもシグナルを算出する式が異なればパフォーマンスに大きな影響を及ぼす事が分かりました。1倍ETFですらこれなのです。レバレッジETFだったどうなるでしょうか。

ティッカーシンボルを $SPXL に変更し、ルックバック期間を10ヶ月で固定して再度検証を行います。
なお、ルックバック期間を10ヶ月に固定したのは移動平均線モデルだとこの値が一番パフォーマンスが良かったからです。(レバレッジETFの場合、減価を考慮してルックバック期間を長めにとった方がパフォーマンスが良くなるからでしょう)

$SPXL 移動平均線 ルックバック期間10ヶ月
$SPXL 絶対モメンタム 10ヶ月

これでもかと言う程の差が出ました。ちなみにこの結果は6, 8ヶ月も同様です。

結論

同じルックバック期間を似たような思想の戦略で使用したとしても、戦略が異なると大きな差になることが証明されました。

そして、絶対モメンタムに至ってはまさかのレバレッジETFを使用していながらインデックス投資ガチホに大敗するというありさまです。これではインデックス投資原理主義者に笑われてしまいます。 $SPY を保有して気絶していた方がまだマシでしょう。

つまり、
「戦略」 × 「ルックバック期間」 × 「ティッカーシンボル」
この3つがそろってこそ投資と言う名の投機は上手くいくのです。

補足

この結果を受けて「移動平均線こそ最強!絶対モメンタムはゴミ!」としてはイケマセン。最終的には移動平均線が勝つかもしれませんが、直近5年に渡っては絶対モメンタムが勝つこともあるでしょう。(とは言え、バックテストですら上手くいかない戦略がフォワードテストで上手く行くとは私は思いません)

投資に聖杯はありません。適切な戦略が分からないのと同様に、適切なルックバック期間も分かりません。であればどうするか?
これを逆に利用するのです。

大半の方は単一の戦略において適切なルックバック期間を探そうとしますが、そうではありません。同じルックバック期間であっても戦略を変えてみるのです。(ティッカーシンボルも変えてみるのも良いでしょう)

するとポートフォリオのどれかの戦略がダメでも、どれかは上手くいきます。そうすることで最終的には全体として上手くいのではないでしょうか。

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