没後70年 吉田博展

こんにちは。

イラストレーターのmoecoです。

今日は現在会期中の吉田博展のレポートを書きたいと思います。

まず私が何故この展示に興味を持ったかと言うと、ポスターの絵が単純に綺麗だったから!そして調べるとどうやら版画家らしい、、ん?この線どうやって描いてるの?と言うところから始まります。

恐らくこういう展示には版そのものが置いてあるんではないかと睨んだ私はさっそく行くことに。(妹に話すと行きたい!とのことだったので、一緒に行くことになりました)

当時緊急事態宣言が3/8までだったので、妹の予定とすり合わせて3/26に行こう〜!と言っていたのですが、まさかの宣言延長。。宣言解除直後&桜が綺麗な時期なので人混みが予想され、行くか少し迷いましたが、この展示だけはどうしても見ておきたくて、娘を親に預け、車で向かうことにしました。

途中渋滞と道に迷い、美術館には16時着(!)閉館まで1時間半しかありませんでした。(正直最後の方はパーっと見て終わってしまったのが悔やまれる。。)

結論から言うと、すごくいい展示でした!

ポスターの作品だけでなく、他の作品もクオリティが高く、また色彩表現豊かで、本物をみてもやはり上から筆で描いたのではないか?と疑ってしまうくらい、主線が細く滑らかで、きっと気の遠くなる作業だったのではないかと容易に想像できてしまうほどでした。

吉田博さんご本人は版下を描かれる方で、彫師、摺師はまた他にいると途中でわかり、(そしたら吉田博展ではなく吉田博アトリエ展とか別の名前の方が良いのでは...ごにょごにょ...という気持ちが生まれたのは小声にしておきます)、吉田博展改め、監督吉田博展として途中観ることになりました。
この彫師さんと摺師さんもすごくて、通常浮世絵などの版画は十数枚の版で制作されるのに対し、吉田博さんの作品は平均30枚以上の版を使っていたと説明があり、ただ伝えるものではなく、作品にしようという気概がその事実から伝わってきました。(吉田さんは彫師さん、摺師さんの制作時もそばにいて指導していたそうです、、こだわりの強さと彫師さん・摺師さんはさぞ大変だったろうなあ...と思わざるを得ないエピソードでした)

また吉田さん本人は登山家でもあり、山や川など自然の風景が多く描かれています。その観察力たるや圧巻で、富士の山脈を上手に線で拾ったり、川や滝の流れ落ちる瞬間の描写や水が渦になっているところを見事に捉えて、作品へと落とし込んでいます。一体どれだけずっと観察していたんだろうか...と思ってしまうほど、自然の表情が今そこにあるかの様に表現されています。(『渓流 Rapids』という川の流れが描かれた作品はその力強さと繊細な観察力が見事で本当に圧巻でした)

また色彩感覚も豊かで、空気感や綺麗なグラデーションに心を奪われていました。。今イラストとしてSNSに発信したら間違いなくバズるのではないか、と思ってしまうほど昔っぽさを感じない、コントラストと彩度のバランス感覚の良さは本当に一度見て欲しいです。

また摺りですごいのが、滝が落ちた後の水蒸気(モワッとした部分)を見事に版画で表現されているところです。まさにどうやって摺ったの?と聞きたくなるくらい、良い塩梅でもやもやしていて(語彙)、作り手からすると「憎い!」と思ってしまう様な表現だなと思いました。(米国シリーズ ナイヤガラ瀑布 参照)

そしてやはり読み通り版木そのものも展示してあり、その細やかさたるや、彫師さんに脱帽でした。(摺の部分はもう複雑すぎて訳がわからなかったですが(笑)恐らく綿密な計画を立ててから摺ったのではないかと思います)

また展示の中央などにスケッチが置いてあったのですが、その中でアヒルのクロッキーがあって、バツしてあったり、何匹も描いて練習している痕跡を見ると、少し親近感が湧いてしまうのでした。

どれも良い作品ばかりで、もう一度見返したい!と思い、美術館で図版を買ったことがなかったのですが、最後に買ってしまいました。(このボリュームで¥2200ってめちゃくちゃお得やん...)

図版も楽しいのですが、やはり本物を生で観るのが1番作者の心遣いを感じられて良いなあ〜と改めて思ってしまう展示でした。

コロナであまり個人の方など、他の展示に行けていないですが、落ち着いたら色んな作品を生で観に足を運びたいと思います。

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