Nice to meet you.の "meet you"が、 なぜ [mi:chu] のように聞こえるの?

実は、meet you だけでなく YouTube や Not yet. 等の t と y[j] を続けて発音した場合、本来なら ミィーテュウ, ユーテューブ, ナッティエット のように聞こえるはずなのに、アメリカ英語を聴いていると、ミィーチュウ、ユーチューブ、ナッチェット のように聴こえます。

これは、英語を母語にしている他の国の発音には無い アメリカ英語(General American)(略 GA) 独特の発音現象なのです。

これまでの記事でも指摘してきましたが、GAは通常、舌を喉の奥に引き込むような感じにしておいて、あるいは 舌を口腔の後部に引いておいて発声します。つまり、GAでは、舌の中央部分に力を込めておいて発声しているということです。

その結果、発音によっては 舌の動きが窮屈になることがあるのです。meet you や YouTube の[tju]の発音も、その影響を受けているのです。 

どういうことかと言いますと、y[j] の発音の構えをするには、舌の中央部分にかなりの力を加え、舌を上あご(口蓋)に近づけなければならないのです。

GAの[j]の発音の構えをすれば、自動的に舌に強い力が加わります。そのため、舌は動きづらくなり、その動きは かなり制限されることになるのです。

y[j]の前の t は、通常 舌先を上の歯茎に付けておいて発音します。ところが、GAの連続子音の発音の原則では、子音の発音が二つ続いている場合 前の子音の構えよりも後ろの子音、つまり、次の子音の発音の構えを 先に行うという原則があるのです。(一部には例外もあります)

そのため、meet you や YouTube の発音も、この原則に従い t よりも先に j の発音の構えをしているわけです。

t の発音の構えよりも先に j の発音の構えをすることにより、舌には強い力が加わります。そのため、舌の動きが制限され 舌を移動させる範囲が限定されます。このような状態で t を発音しても、舌先が t の調音位置の歯茎に届かないため  t の発音にはならないのです。

その結果、本来なら「テュ」のように聞こえるはずの発音が、舌先の位置が歯茎よりも上部の「チャ」「チュ」「チョ」の調音位置になっているために、「テュ」ではなく、「チュ」の発音になってしまうという訳です。


英語の発音、特に二つの子音を連続して発音する場合、前後の子音を区切って発音するのではなく、前にある子音の構えよりも先に、後ろにある子音の構えをしておいた上で、前の子音から発音していくという原則があります。

例えば、please の発音は、p よりも先に 次の l の発音の構えをしておいて pを発音し、そのあと l を発音するということです。このようにすることで p と l をスムーズに、そして一気に発音できるという訳です。

stop の場合も同じです。先に t の発音の構えをしておいて(舌先を歯茎に付けておいて) s を発音し、そのまま続けて t を発音すればいいのです。

私たち日本人は、please を発音する場合、 p と発音したあと l の発音の構えをします。stop も、s を発音したあと t の発音の構えをします。これでは、スムーズな発音ができないだけでなく、please が pulease に、stop が sutop のように余分な母音を侵入させてしまうことになりかねないのです。


カタカナ発音に慣れてしまっている私たちが正確な英語の発音を身に付けるには、この「子音の発音の原則」を身に付けるべきではないでしょうか。 

尚、could you が「クッヂュゥ」のように、would you が「ウッヂュゥ」のように聞こえるのも、原理は同じです。また、got you が gotcha のように表記されるのも同じ理由です。chu ではなく cha になっているのは、 you を ya のように略して発音しているからです。

以上です。



 

 

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