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田舎の映画館の話

ゴジラの感想について若い友人と話した時、

「たなかさんはゴジラの旧作はテレビで観たのですか?」と質問された。

彼女は今までゴジラ映画というものを観たことがないのだそうだ。

「『ゴジラ対へドラ』までは殆ど映画館で観てたと思うよ。親が必ず連れて行ってくれた」

「豊岡市には当時映画館が2つあって、『豊岡劇場』という映画館は東映系、『有楽館』は東宝系だから、ゴジラは有楽館の方に行って観てた。ビルの中にあったけども、僕が大学生の頃にビルがなくなってマンションになった。」

センチメンタルな感じになるのでそれ以上は言わなかったんだけど、その後にはこんな話が続くはずだった。

「僕の父親の世代は多分映画が一番の娯楽だったんだと思う。父親は肺病の後遺症で運動はできなかったし商売があるからそんな遠出もできないから、せめて映画だけでも連れていってやろうと思ったんちゃうかな。ビルだから、テラスみたいなところにゲームコーナーみたいなのもあった。だから行くのが楽しみだった」

「ゴジラはキングギドラがはじめて出てくるやつが一番好きだった。観に行った夜に、いらなくなった店の伝票の裏に、キングギドラの絵を描いたのを覚えてる」

「それと、有楽館の方はオーナーと商売の繋がりで仲が良かったんじゃないかと思う。入場料も払ってなかった様な気がする。『木戸御免』ってやつ(多分、それなんですか?と聞かれるだろう。そして、「木戸」は「木戸銭(入場料)」のことだよ、と説明するだろう)。」

「一度、ゴジラ映画のどれかだと思うけど、映写室に入れてもらったことがある。もちろん父親と一緒に。カタカタって映写機が回って、レーザービームみたいに光が飛び出して画面に映ってた。」

なんかリアル版「ニュー・シネマ・パラダイス」みたいな話だし、自分でもあれってほんとにあったことなんかなと思うのでこの話は人に喋ったことがない。

自分が今でも「映画館で映画を観る」ことにこだわっているのは、親が映画にマメに連れて行ってくれたからだと思う。

そのことはとても感謝している。

特に若い女性にこのようなエピソードを話すのが大変照れくさいので話せなかったんですが、かわりにここに書いてみました。

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