星空の下

「今日は星が綺麗だ」

いつもの道を歩きながら、空を見上げた。

オリオン座くらいしかわからないけど、星空ってなんで綺麗だと思えるんだろう。
1人で歩く時はいつも考え事をしてばかりだ。今日は急がないから余計に。

ラインの受信音に急いで携帯を取り出す。画面を見て思わずにやけてしまい、周囲を気にしてなんだか気まずい思いになる。

これもきっとこの星空のせいだ。

何かの広告のように、意味もなく難癖をつけた。
この感じも久しぶり。ひとりでワクワクしたり落ち込んだり、感情が忙しい。

恋ってこういうことかな。

なんて恥ずかしいこと考えられるのも。

ラインをもう一度見返す。まだかかるみたいだ。

「早く会えないかなあ」

自然と出てきた言葉に何故だか焦る。恥ずかしいことばかり言うなとまた小突かれそうだ。


駅が見えてきた。
もう一度空を見上げるが、電灯で明るくなったせいかあまりよく見えない。

流れ星でもないけど、空にあるだろうオリオン座に向かって祈ってみた。

仕事が早く終わりますように。

手を合わせて、ふと時計が目に入った。乗ろうとしていた電車がもうすぐ来る。どうやらゆっくり歩きすぎたらしい。

歩いても間に合いそうだったが、少し小走りになる。
気持ちばかり逸るがそれも仕方ない。

そんな時ふと浮かんだ言葉に笑ってしまった。
少し詩的すぎるか。

手早くラインの画面を開き、送ってみた。会った時の反応が楽しみだ。

"いつもの道を私は歩く。
この星空の下、あなたに会いに。"

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