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滑落録

先日にソロで親不知〜朝日岳〜白馬〜唐松縦走中に滑落してしまった。岩場やキレット部分じゃなくて水場の沢で。結果的に無事に自力で登山道復帰したが、今後の安全のためのヒヤリハット記録として残す。

経緯

https://maps.gsi.go.jp/index_m.html#16/36.923299/137.718955/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1
栂海新道登山中に上地図の箇所の少しだけ登山道を外れた水場に向かっていた(YAMAP地図だと水場となっている)。途中きのこが沢山あって写真を撮って喜んだりしていたので、別段疲れていたということはないように思う。

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水場に着くと、こじんまりとした沢になっていて、金色にヌラヌラと光る大きめの岩に薄く水が流れていた。それだと水が汲めないので、少し先に段差から水が流れているところまで歩いて、さあ水を汲もうとしゃがみ込んだ。

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そのとき、つるっと滑り、思わず手をついたがその手も滑り。ザックから着水して、気づけば広がる青天井。あたた、と思いまた手をつこうとするが起き上がれない。この黄金ヌルヌル岩は滑りに滑る。気づけばゆるゆるとした傾斜を水と共に体ごとゆるりと流れて、先が見えない滝に頭から向かっている。

体勢を戻そうとするも戻らず、そのまま水と共に落ちる。わりい、おれ死んだ。よくて骨折だなとか思ってたら、2mくらい落ちたところで、平場に水が溜まっていた堰のようなところで勢いが落ちた。しかし、止まれず、そのまま次の滝へ落ちる。汗水垂らして溜め込んだ位置エネに殺されるのかと思いながら、今度は3mほど落ちて、また、堰のような少し平坦な地点で、幸いにも完全に体が止まり、立ち上がれた。

ここにいるとずるずるとまた流されて次がもっと大きな滝だったら終わりだ、と思い今落ちた目の前の滝を登ろうとしたが、はっと思い深呼吸をした。一旦冷静になろう。

今立っている場所も黄金ヌルヌル岩だが、止まっている分には安定をしてて、次動いたらまた滑って流される可能性がある、大好きだったらリンカーンのローション階段みたいになるところだった。とりあえず状況を確認。

目の前には今落ちた2+3mくらいの滝があった。黄金にキラキラが輝いていて美しかった。

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後ろには先が見えない落ち込みがある。右側方面に登山道があるが、ゴルジュと呼ぶのが合ってるかわからないが両岸は切り立った岩場。スマホは圏外。怪我はなし。先月買ったカメラは水没。

幸いなことに不帰キレット超えのためのヘルメットを持っていたので、ヘルメットをつける。これでかなり気持ちが楽になった。

落ち着いてもう一度周りを見渡すと両側の崖は黄金ヌルヌル岩ではなくて節理と言っていいのかわからないが、縦に亀裂が走っていて表面が剥がれるような別種の岩場だった。さらに右側崖は草本植物が多かったが、左側崖は木本植物がちょこちょこ生えていることに加えて、滝から距離があるため完全にドライだった。

左から木を掴んで登攀して滝を巻いて上がることに決める。飛びつくように木を掴んで黄金ヌルヌル岩を抜けて左の崖に正対する。

登攀も沢の知識も経験もないが、この選択でいいのだろうか、目の前まで来て少し悩むが、いくしかない。わずかばかりのボルダリングの経験を思い出し、木を掴むのをベースに木が生い茂っている方向へ登る。途中足掛かりが出来ず手だけでぶら下がり膝を負傷するがなんとかかんとか復帰して3mほど登ると、藪の中を歩きで登れるところまで来れた。

そのまま藪の中からはじめの水場に到着。助かった。だけど、最後にまた黄金ヌルヌル岩を超えて渡らなければならない。もう少し沢が狭くなっているところまで歩き、また対岸の木に飛びついて渡る。どうにかはじめの滑落地点まで戻った。

落ち着いて水場を再度見渡すと先の方に見える木が下の滝から見えた右手の木なので、だいぶ流されて落ちたことがわかる。

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安全のために木を掴んで沢から登山道へ戻る。完全に助かった。

この日の行程はかなり長く、結果的に切り傷程度で無事であったことからすぐ行動は継続した。もう少し状況が悪かったらどうなっていたかわからないと思うと精神的に動揺して、その後落ち着かなかった。

最終ピークである朝日岳はガスを抜けた先にあり、雲海が広がっていた。

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あれ?この道進んだら界王様のところ?それってもう死んでるじゃん!と浮かぶくらいに景色が喜びを贈ってくれた。山はいろんなことが起こるもんだね。

振り返り

その後に不帰キレットを行ってみて思うが、自身が気をつけてないようなときに事故は起こるものだなとしみじみ思った。岩場だったら通常と比べて安全率2倍くらいの最大限の注意を払うが、水場は全く気にしてなかった。今後は沢に近づくときも安全率2倍の心構えにしよう。また、ソロ登山の時は全体的に安全率高めの行動設計をしよう。

しかし、沢が美しかった。安全に行けたら楽しいだろうなぁと恐怖も魅力も感じてしまった。

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