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余弦定理

余弦定理は、辺に関する式が、
$${ a^{2}=b^{2}+c^{2} -2 bc \cos A}$$
$${ b^{2}=c^{2}+a^{2}-2 ca \cos B}$$
$${ c^{2}=a^{2}+b^{2}-2 ab \cos C}$$
となり、角度に関する式が、
$${ \cos A=\dfrac{b^{2}+c^{2}-a^{2}}{2 b c}}$$

$${ \cos B=\dfrac{c^{2}+a^{2}-b^{2}}{2 c a}}$$

$${ \cos C=\dfrac{a^{2}+b^{2}-c^{2}}{2 a b}}$$
となります。
初めて学ぶときは、いきなり何本も式が出てきて、全て覚えなきゃいけないのかと、絶望感があったかもしれません。
しかし、これら6本の式のうち、
$${a^{2}=b^{2}+c^{2}-2 bc \cos A}$$
$${ \cos A=\dfrac{b^{2}+c^{2}-a^{2}}{2 b c}}$$
2本を覚えれば十分です。
特に暗記が苦手なら
$${a^{2}=b^{2}+c^{2}-2 bc \cos A}$$
の1本だけ覚えるでも良いと思います。
これは、
$${a^{2}=b^{2}+c^{2}-2 bc \cos A}$$
から、
$${ \cos A=\dfrac{b^{2}+c^{2}-a^{2}}{2 b c}}$$
簡単に導出できるからです。
また辺に関する式、
$${a^{2}=b^{2}+c^{2}-2 bc \cos A}$$
から、
$${ b^{2}=c^{2}+a^{2}-2 ca \cos B}$$
$${ c^{2}=a^{2}+b^{2}-2 ab \cos C}$$
となることが、簡単にわかります
角度に関する式も、同様になります。
これらから最低でも、
$${a^{2}=b^{2}+c^{2}-2 bc \cos A}$$
だけは覚えましょう。
さらに、この式を全て丸暗記する必要もありません
この式は、できるだけ暗記に頼る部分を無くしたとすれば、最後に、
$${\bigcirc 2 \square \square \cos A}$$
を加えれば良いということ、各$${\square }$$には2種類の長さが入る、$${ \bigcirc}$$にはプラスかマイナスのとちらかが入ることを覚えていれば良いとなります。

今回は、余弦定理のうち最低でも覚える必要がある
$${a^{2}=b^{2}+c^{2}-2 bc \cos A}$$
について書いていきます。
さらに余弦定理を直角三角形、鋭角三角形に使うときを考えます。
直角三角形に使うときを考えると、右辺に、
$${b^{2}+c^{2}}$$
がある理由がわかります。
また余弦定理は、$${b^{2}+c^{2}}$$と$${-2 bc \cos A}$$に分けて考えられることがわかります。
鋭角三角形に使うときを考えると、
$${-2 bc \cos A}$$
の符号がマイナスになる理由がわかります。
最後に、辺に関する式から角度に関する式の導出や、1本の辺・角度に関する式から他の式が簡単にわかる理由について書きます。
以上について、解説していきます。

基本的な覚え方

まず、基本的な覚え方を紹介します。
結論としては、
$${\square^{2}=\square^{2}+\square^{2}-2 \square \square \cos \square}$$
という形になること、ある辺の長さを、他の2本の辺の長さとその間の角度から求められることを覚えます
特にコサインを含む項に2があることは忘れないようにしましょう。
後は図で考え、$${ \square}$$に何が入るかを考えていきます。
なぜ、このようになるのか解説していきます。
特に重要なのは、式の形よりも図で考えることです。
図を、

とします。
このとき余弦定理から、
$${a^{2}=b^{2}+c^{2}-2 bc \cos A}$$
となります。
この式からわかることは、$${ a}$$は$${ b,c,\angle A}$$から求められることです。
このことを図で考えると、黒線部分の辺の長さは、赤線部分の2本の辺の長さとその間の角度から、求められることがわかります。
つまり余弦定理は、ある辺の長さを、他の2本の辺の長さとその間の角度から求められるということがわかります。
このことから、
$${\square^{2}=\square^{2}+\square^{2}-2 \square \square \cos \square}$$
の式の中で、「求めたい辺である$${ a}$$は左辺になり、角度である$${ A}$$はコサインの部分」となるので、
$${a^{2}=\square^{2}+\square^{2}-2 \square \square \cos A}$$
となります。
残りの$${ \square}$$には$${ b,c}$$が入ります。
ここで重要なのは、余弦定理の式、
$${a^{2}=b^{2}+c^{2}-2 bc \cos A}$$
の$${ b,c}$$を入れ替えると、
$${a^{2}=c^{2}+b^{2}-2 cb \cos A}$$
となり、これらは同じになります
また、
$${a^{2}=\square^{2}+\square^{2}-2 \square \square \cos A}$$
の右辺を、
$${\square^{2}+\square^{2} }$$と$${-2 \square \square \cos A}$$に分けて考えます。
このように考え、$${\square^{2}+\square^{2} }$$にそれぞれ$${ b,c}$$のどちらかを入れ、$${-2 \square \square \cos A}$$にそれぞれ$${ b,c}$$のどちらかを入れます。
つまり、
$${a^{2}=\square^{2}+\square^{2}-2 \square \square \cos A}$$
に$${ b,c}$$を入れると、
$${a^{2}=b^{2}+c^{2}-2 bc \cos A}$$
となります。
以上から、まず余弦定理は、
$${\square^{2}=\square^{2}+\square^{2}-2 \square \square \cos \square}$$
という形になることを覚えます

さらにある辺の長さを、他の2本の辺の長さとその間の角度から求められることを覚えます
「後は図で考え、$${ \square}$$に何が入るかを考えていくとなります。」

直角三角形のとき

$${ \angle A=90 \degree}$$のときを考えてみましょう。
このときを考えると、余弦定理の式、
$${a^{2}=b^{2}+c^{2}-2 bc \cos A}$$
「右辺に、$${b^{2}+c^{2}}$$があることが、わかります。」
また、「$${b^{2}+c^{2}}$$と$${-2 bc \cos A}$$に分けて考えられることがわかります。」
これらのことを、解説していきます。
図を、

とします。
余弦定理の式は、
$${a^{2}=b^{2}+c^{2}-2 bc \cos A}$$
となります。
「今$${ \angle A=90 \degree}$$としている」ので、これを代入すると、$${ \cos 90 \degree=0}$$より、
$${a^{2}=b^{2}+c^{2}-2 bc \cos 90 \degree=b^{2}+c^{2}}$$
となります。
これは、見覚えがある人が多いと思います。
中3で習う三平方の定理と同じ式です。
これにより、余弦定理は「$${ \angle A=90 \degree}$$のとき三平方の定理と同じになる」ので、右辺に、
$${b^{2}+c^{2}}$$
があることがわかります。
さらに、余弦定理は直角三角形以外のときにも使えるので、三平方の定理に$${-2 bc \cos A}$$を加えた式になっていると考えることができます。
つまり、三平方の定理に関する部分である$${b^{2}+c^{2}}$$と、直角三角形以外に関する部分である$${-2 bc \cos A}$$に分けて考えることができます。
これらから余弦定理は、三平方の定理を拡張して、直角三角形以外でも使えるようにした式と見ることができます。
以上から、「余弦定理の式の右辺に$${b^{2}+c^{2}}$$があること、$${b^{2}+c^{2}}$$と$${-2 bc \cos A}$$に分けて考えられることがわかります。」

鋭角三角形のとき

$${\angle A}$$が鋭角のときを考えてみましょう。
このときを考えると、余弦定理の式、
$${a^{2}=b^{2}+c^{2}-2 bc \cos A}$$
「右辺にある、$${-2 bc \cos A}$$の符号がマイナスになることがわかります。」
以下では余弦定理の式を、
$${a^{2}=b^{2}+c^{2} \bigcirc 2 bc \cos A}$$
と考え$${ \bigcirc}$$はプラス、マイナスのどちらの符号になるか、考えていきます。
図を、

とします。
このとき「図より、$${ a>d}$$となっています。」
$${ \triangle ABD}$$に余弦定理を使って、$${ d}$$を求めると、
$${d^{2}=b^{2}+c^{2} \bigcirc2 bc \cos  \angle DAB }$$
となります。
また$${ \triangle ABC}$$に余弦定理を使って、$${ \angle CAB=90 \degree}$$に注意して$${ a}$$を求めると、
$${a^{2}=b^{2}+c^{2} \bigcirc 2 bc \cos  \angle CAB=b^{2}+c^{2}}$$
となります。
この式を、
$${d^{2}=b^{2}+c^{2} \bigcirc 2 bc \cos  \angle DAB }$$
に代入すると、
$${d^{2}=a^{2} \bigcirc 2 bc \cos  \angle DAB }$$
となります。
$${2 bc \cos  \angle DAB }$$の値がプラスになるか、マイナスになるか考えてみましょう。
$${ b,c}$$は辺の長さなので$${ b>0,c>0}$$となります。
また$${ 0 \degree <\angle DAB <90 \degree}$$より、
$${ \cos \angle  DAB >0}$$
となります。
これらより、
$${2 bc \cos  \angle DAB>0 }$$
となります。
このことを使って、
$${d^{2}=a^{2} \bigcirc 2 bc \cos  \angle DAB }$$
の$${ \bigcirc}$$はプラス、マイナスのどちらの符号になるか、考えてみましょう。
$${ a,d}$$は辺の長さなので$${ a>0,d>0}$$となります。
また$${ a>d}$$なので、$${ a^2>d^2}$$となります。
$${d^{2}=a^{2} \bigcirc 2 bc \cos  \angle DAB }$$
「右辺は$${ a^2}$$より小さい値」となるので、$${2 bc \cos  \angle DAB>0 }$$より、$${\bigcirc 2 bc \cos  \angle DAB }$$の符号$${ \bigcirc}$$は、マイナスになります

その他

まず、
$${a^{2}=b^{2}+c^{2}-2 bc \cos A}$$
から、
$${ \cos A=\dfrac{b^{2}+c^{2}-a^{2}}{2 b c}}$$
を導出します。
$${a^{2}=b^{2}+c^{2}-2 bc \cos A}$$
の右辺のコサインの項を左辺に、それ以外を右辺に移項すると、
$${2 bc \cos A=b^{2}+c^{2}-a^{2}}$$
となり、両辺を$${ 2bc}$$で割り、
$${ \cos A=\dfrac{b^{2}+c^{2}-a^{2}}{2 bc}}$$
となります。
このように、この式は簡単に導出できます。
また$${ \cos A}$$の値を求めるとき、
$${a^{2}=b^{2}+c^{2}-2 bc \cos A}$$
と、
$${ \cos A=\dfrac{b^{2}+c^{2}-a^{2}}{2 b c}}$$
のどちらの式を使っても、大きな違いはありません。
例えば、$${ a=\sqrt{7},b=2,c=3}$$のときの$${ \cos A}$$の値を求めてみましょう。
$${a^{2}=b^{2}+c^{2}-2 bc \cos A}$$
を使うと、

$$
\begin{aligned}
(\sqrt{7})^{2} &=2^{2}+3^{2}-2 \times 2 \times 3 \times \cos A \\
12 \cos A &=13-7 \\
\cos A &=\frac{6}{12}=\frac{1}{2}
\end{aligned}
$$

$${ \cos A=\dfrac{b^{2}+c^{2}-a^{2}}{2 bc}}$$
を使うと、
$${ \cos A=\dfrac{2^{2}+3^{2}-(\sqrt{7})^{2}}{2 \times 2 \times 3}=\dfrac{6}{12}=\dfrac{1}{2}}$$
となります。
どうでしょうか。
個人的には、あまり差はないような気がします。
このことから余弦定理は、
$${a^{2}=b^{2}+c^{2}-2 bc \cos A}$$
だけ覚えても良いと思います。
しかし計算が苦手で、これらに差があると感じた場合は、
$${ \cos A=\dfrac{b^{2}+c^{2}-a^{2}}{2 b c}}$$
覚えましょう
また、さらに複雑な式になる場合もあるので、2本とも覚えることを、おすすめします
暗記が得意、計算が苦手、大学受験を考えてるという、いずれかの場合は覚えた方が良いでしょう。
特に大学受験を考えていて、大学入学共通テストを受ける場合は、時間との勝負になるので覚えた方が良いでしょう。

次に、
$${a^{2}=b^{2}+c^{2}-2 bc \cos A}$$
から、
$${ b^{2}=c^{2}+a^{2}-2 ca \cos B}$$
$${ c^{2}=a^{2}+b^{2}-2 ab \cos C}$$
を求めてみましょう。
このためには、輪環の順を使います。
「輪環の順は$${ A,B,C}$$を例とすると、
$${ A \rightarrow B ,B \rightarrow C,C \rightarrow A}$$
というように、$${ A,B,C}$$をアルファベット順に入れ替え、最後の$${ C}$$の次は最初の$${ A}$$に戻る」
というものです。
これを使うと、余弦定理の辺に関する式は、
$${a^{2}=b^{2}+c^{2}-2 bc \cos A}$$
から、
$${ b^{2}=c^{2}+a^{2}-2 ca \cos B}$$
がわかり、同様にこの式から、
$${ c^{2}=a^{2}+b^{2}-2 ab \cos C}$$
がわかります。
同様にして、角度に関する式は、
$${ \cos A=\dfrac{b^{2}+c^{2}-a^{2}}{2 b c}}$$
から、
$${ \cos B=\dfrac{c^{2}+a^{2}-b^{2}}{2 c a}}$$
となり、さらに、
$${ \cos C=\dfrac{a^{2}+b^{2}-c^{2}}{2 a b}}$$
となります。
この輪環の順は、重要な考え方なので、覚えておきましょう

まとめ

今回、余弦定理の覚え方について書きました。
余弦定理の式について、
$${a^{2}=b^{2}+c^{2}-2 bc \cos A}$$
と、
$${ \cos A=\dfrac{b^{2}+c^{2}-a^{2}}{2 b c}}$$
両方を覚えた方が良いかと思います。
理由は、よく使うからです。
しかし、全員が覚えなきゃいけないとは思いません
大学受験をするか、暗記が得意か、計算が得意か等により、どの程度まで覚えるかを自分で判断して欲しいと思います。
特に今回の内容を知っていると、覚えやすくなったり、符号ミスがなくなったりすると思います。
また、定理や公式などはできるだけ、証明をしたほうが良いと思います。
なぜ、こういう形の式になるのか等が、よくわかるからです。
しかし、数学が苦手な人に証明をするのは難しいでしょう。
今回は余弦定理の証明はしていませんが、直角三角形・鋭角三角形の場合を考えるだけで、より深く理解できます
また、輪環の順についても、覚えておきましょう

これを見て参考になったかたは、使ってみてください。




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