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note甲子園出品作品 月
頭の中に残された、俺の手にはどうしようもない鐘を、律儀な北風が転がしている。だが、風向きをその冷たさで感じるには俺の感覚はあまりに劣化していた。もう右足と左足の区別すら出来ない有様だ。ちらちら映る目の前の空間に、灰色のコートを着て下を向いたまま、つまらなそうに道を急ぐ通勤帰りのサラリーマンが入ってきた。きっと六時を回ったんだろう。その隣では赤い顔をした学生達が植え込みの周りをくるくると回りながら
もっとみる頭の中に残された、俺の手にはどうしようもない鐘を、律儀な北風が転がしている。だが、風向きをその冷たさで感じるには俺の感覚はあまりに劣化していた。もう右足と左足の区別すら出来ない有様だ。ちらちら映る目の前の空間に、灰色のコートを着て下を向いたまま、つまらなそうに道を急ぐ通勤帰りのサラリーマンが入ってきた。きっと六時を回ったんだろう。その隣では赤い顔をした学生達が植え込みの周りをくるくると回りながら
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