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洋館へのドライブ#2

洋館へのドライブ

車は走り出した。
森の中を走る。
霧がかかってライトがそれに反射して目の前は真っ白になっていた。
この周辺には野生の生き物はいないから、前が見えなくても車を走らせることができた。
私はとある館に向かっていた。
そこにはおじいさんが1人で住んでいる。
そのおじいさんは1人で焚き火をしながら本を読むのがすきなおじいさんだ。
私はそのおじいさんと1年前に出会った。
今晩と同じような霧の夜、車が故障して困っていた私に後ろから話しかけてくれたのがそのおじいさんだったのだ。
その車は廃車になった。

私はそのおじいさんに会うのを楽しみにしていた。なぜならそのおじいさんは不思議な力を持っていて、人生の道に迷ったときにアドバイスをくれるからだった。

おじいさんとの再会

洋館に着いた。
そのおじいさんは玄関を入ると暖炉の近くで何かを飲んでいた。
暖炉の灯りとそれ以外はなく暗い部屋。
でもあたたかさがしっかりと溜まっていた。

おじいさん、また来たよ
私は声をかけた。
おじいさんはゆっくり振り返って、
おや、いらっしゃいと言った。
来ることを知っていたとも驚いたとも言わなかった。

おじいさんにはいろんな話をした。
この洋館に来る途中の道が砂利で車が揺れて大変だったこと、来る途中に可愛い猫の親子を見たこと、さっきまで飴を舐めていたこと。
おじいさんはうんうんとうなずきながら聞いてくれた。
おじいさんはココアが好きだった。
温かいココアを飲んでいたおじいさんはもうだいぶ眠くなっていたようだった。
遅くまで話を聞いてくれてありがとう、おじいさん。
そう言って私はその日のおじいさんとの会話を終えた。

おじいさんは昼によくしゃべる。
とくに料理をしながらだとよく喋るんだ。
甘いものを作るおじいさんは心なしか背筋がしゃんとしてはっきりとした話し方をする。

今日は朝起きるとおじいさんはジャムを作っていた。
いい匂いだ。なんのジャムだろう。
冬だからいちごかな。
苺のジャムを作っているお爺さんを想像したらなんだかかわいすぎてふふふと笑った。
階段を降りてキッチンへ行く。
おじいさんは少し小さすぎるんじゃないかと思うくらいのエプロンをして、鍋でジャムを煮込んでいた。

つづく

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