海にゆきたくなった。

それはエメラルドグリーンの海だった。

もう茶色に染まることを決してしない、透き通ったエメラルドグリーンの海だった。

わたしは何が出来るのだと考えた。

辛い時でも出来ることとは何だ。

文字を書くことだと思った。


海は遠浅で島から少し離れた所でも水が膝のあたりまでにしかこない。

暖かい陽気で、でも暑くもない。

暖かい中でひんやりとした海に脚をつけるのはとても気持ちが良かった。

仕事を辞める前のことを思い出しては悔いたり憎んだり、そうして自分が世にいう社会不適合者なのではないかと思う日々。加えて身体が毎日重くて自由がきかない。

以前は2つくらいのバス停なら歩いていた。

30分くらいの徒歩はかえって好きだった。


海に脚をひたしていると上から何かがふってきた。

鳥からのプレゼントだった。

鳥は一つの封筒を落としていった。

その封筒を、水に濡れないようにと服を押さえていた手を離して、スカートをびしょ濡れにして急いで開く。

「ここにはそう長くいられませんよ」

手紙にはそう書いてあった。

わたしはこの島からの帰り道を知らなかったが、きっとまたこの鳥が手紙を落としたように、いつしかこのエメラルドグリーンの海が見えなくなる日が訪れるのだということを直感した。

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