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ヤンキー塾のその後

先日、ヤンキー塾と呼ばれていた頃のお話を前編・後編に分けて書きました。

これで書き終えたつもりだったんですが、もう一つだけ当時のエピソードを思い出したので、今回はそれを書いてみます。

「後輩」たちにも人気の渡塾。しかし・・・

先日の記事で書いた子たちが中学を卒業し、これで一区切りだと思っていたら、なんとその後輩たちが入ってきました(笑)

入塾理由を聞けば「○○先輩があそこいい塾やでって言ってくれたんで!」とのこと。

ヤンキーの上下関係の影響力の強さは侮れません・・・

ただどちらかといえば、この後輩たちの方が手を焼きました。

特にある女の子二人が印象に残っているので、その二人について書こうと思います。

その子たちとは、彼女らが中三の1学期をかけてなんとか関係性を深め、少しずつ勉強するようになってきていました。

この感じなら、夏休みにこれまでの復習を頑張れば結構成績上がるんじゃないか。

そんな期待を抱かせてくれた子どもたちだったのですが、夏休みに入ってしばらく経った後に状況は一変します。

なんと、塾に全く来なくなりました。

彼女たちは自分の携帯を持っていたので、授業の時間になっても来ないその子たちに電話します。

「もしもーし」

「〇〇(その子の名前)、今日授業やで〜。覚えてる?」

「あ、ごめん、忘れてた!今日休むわ〜。」

「そっか・・・。わかった!来週は忘れず来てな。待ってるからな。」

そう言って電話を切る日々。

当時の僕らは、夏休みという時期が子どもたちにどんな影響を与えるのかよくわかっていなかったんです。

元々非行傾向があったその子たちは、近隣市の同じような中学生たちと過ごす時間が増えて、かなり生活が崩れてしまっていました。

フラッと塾に来ることはあっても全く勉強せず。

1学期の頑張っていた様子が幻だったんじゃないかと思うくらい、その落差はすごいものでした。

夏休みが明けても、その影響が尾を引いて全く勉強になりません。

そして先輩たちの時と同じように、「ツレ」たちが塾にやってきました。まるで1年前をなぞるように、とりあえず無料体験授業を受けるという彼ら。

この時期、塾が一番荒れました。

当時いた職員から「渡さんは、勉強を頑張りたい子どもたちを守りたいんですか?それとも勉強意欲がない子どもたちを守りたいんですか?どっちですか?」と言われ、答えに詰まったことを今でも覚えています。

「そんなのどっちもに決まってるじゃないですか!」と言いたいけど、そのための方法が全くわからない。

長く塾に通ってくれていた一人の生徒が「全然集中して勉強できない!」と怒って帰ることもありました。

彼女たちやその仲間たちも塾で勉強するわけではなく、遊んで、時には大声を出して、自由に過ごす始末。

リーダーの仕事は意思決定だと言われますが、当時の僕はその状況に対して明確な意思決定ができず、結果として渡塾を誰のためにもならない場所にしてしまっていました。

「親に言わんといてな」

そんな中、一つの事件が起きます。

その女の子のうちの一人の保護者さんから電話があり、「今日うちの子は塾に行ってましたか?」と聞かれました。

実はその子がこれまで塾を休む際に「親に言わんといてな」ということを言われていました。

なので僕たちは遅刻・欠席の確認連絡は保護者にはせず、その子にしていました。(これが正しい判断だったかどうかはわかりません)

ただこの時は、保護者の方に現状を伝えることで現状を打開できないかと思い、「今日は来ていません」と伝えました。

ただ、そこからが大変でした。

電話の向こうで聞こえる怒鳴り声。その矛先は間違いなく彼女です。

そしてその矛先はこちらにも向きます。

「普通子どもが来てなかったら親に連絡するのが筋ちゃうんか!」

当たり前すぎる正論に、僕は申し訳ありませんという言葉を返すことしかできませんでした。

このことがあってから、学校の先生と再び話し合いの場を持たせていただくことになりました。

その後は学校の先生、それからその子のお母さんと僕らは連絡を取り合い、今後どのようにサポートしていくかということを話し合いました。

そういうこともあって、しばらくその子の足は塾から遠のきました。

でもこの時一つ決めたことがあります。どんなに来なくても毎回連絡をして、その子が「やっぱり受験に向けて頑張りたい」と思ったタイミングでいつでも戻ってこれる環境をきちんと用意しておくことです。

担当講師の学生にお願いして、毎回その子に電話をしてもらいました。

そんなことを続けるうちに、季節は冬になりました。

ようやく、その子ともう一人の子が授業を継続して受けてくれるようになりました。

無事高校合格、そして中学卒業

そこから入試まではあっという間でした。

二人とも、無事に合格。しかも一人は成績が良かったために特待生として授業料等が免除されるというおまけ付き(笑)

合格発表の連絡をもらった日の夜。塾が終わった後の振り返りの時間に、講師のみんなとその喜びを分かち合いました。

「あの子たちが学ぶ環境を守り切れたね」

そう言って、みんなで雄叫びをあげました^^

そしてそして、早いものであっという間に中学も卒業。

今はコロナでできなくなりましたが、卒業式には箕面市内の各中学校に講師と職員が分かれて行ってました。

最後の最後までやんちゃなその子たちは、卒業式のプログラムが終わるや否や着替え、長ランなど思い思いの格好になって記念写真を撮ってました(笑)

その後彼女たちは事務所に来てくれて、ひとしきりしゃべった後に帰って行きました。

その帰り際にその子たちが「ありがとう」って言ってくれたことを、今でもはっきり覚えています。

正直なところ、この子たちと関わる中で辛かったことの方が多かったです。多分9割は辛かったことに該当します。

でもその残りの1割が本当に大きいんですよね。今もこの記事を書きながらその当時を思い返して、パワーをもらっています。

以上、ヤンキー塾のその後のエピソードでした。

このエピソードを書いてて、もう一個だけこれに付随するエピソードを思い出したので、また来週書きます!

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