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なんのことを言っているか当ててみて


下絵の線画を描いていた。

予期せずモノクロ世界へ色がはいる。

一瞬戸惑ったが、すぐに理解できた。

子供のころ以来で、懐かしいなんて感覚もわきつつ、上をむいて洗面所へ走った。

そこで鏡に映った自分と目が合う。

野性味を感じてまんざらでもない。

調子にのり、ワイルドに腕で拭った。

そのあとすぐ腕を洗うことになる間抜けさよ。 

Tシャツへ両腕を引っ込める。

今度は腕なしの自分を、鏡のなかにみることとなった。

シャツのなかで肘をつっぱり空間をつくる。

のちに首元がだらしなくのびてしまったTシャツにならぬよう···

それでもできるだけ首元を広げる駆け引き。

慎重に頭もなかへ引っ込めた。

引きのばされ薄くなったTシャツごしに鏡を見た。

シルエットは亀だ。

なんとか甲羅を洗濯カゴへ脱ぎ捨てて、そのまま浴槽の縁をまたいだ。

目をかたくつむり、顔の中心にシャワーをあてた。

そうしながら、架空の生態を空想した。

野生のリクガメが数年に一度、甲羅を脱いで、滝で体を洗うというもの。

紛いなりにも絵描きのはしくれのくせに、あまりにも捻りのない発想。

そのままではないかと、鼻で笑った。

その瞬間、自分の顔を跳ね返るシャワーの色が少し濃くなった。

体を拭いて、また鏡をみていた。

顎を上げて穴のなかを入念にチェックした。

体を拭いたタオルで、洗面所から絵まで床に続く花柄を消していった。

「タオルで拭いちゃダメ」と止める人がいないことをいいことに。

しゃがみ歩きで絵までたどりつく。

箱からティッシュを数枚重ねるように引き抜いた。

それを最後の花柄にふわっと落とす。

花柄は表面をまだ潤ませつつも、一瞬ティッシュに隠された。

ティッシュが染まる。

それをどけると、花柄は薄茶色に渇いたアウトラインだけを残していた。

このアウトラインを生かして絵を仕上げるしかないな。

いつもよりポジティブな発想。

そのポジティブさは、さっき鏡の前で感じた、野性味の尾を引いたものから来ているのだと直感した。
 
 
 

konekoさんのこれ↑を読んで、
イカ変態同好会↓へ参加しましたっ。

選んだテーマは「鼻血が出た」でした。

 
 


“拍黄瓜”また作ってしまった。

ハマった。

ニンニクとキュウリが合うってもっと前から知っていたかった。

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