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指導上における男女の違いを理解してチームのベースを構築する

■男女の特徴および特質の違いを理解する

 ゴールドスタンダードラボの記事によれば、男女の声掛けやコミュニケーションの取り方など、その他多くのことが性別によって非常に異なることを述べています。例えば、女子選手の場合、新しいコーチが就任したとしても、突然男子選手よりも競争心を持って、練習に励むことはないと指摘しています。

 そして、身体的接触を嫌う女子選手は、練習でのコンタクト練習などは思い切ってやらない選手が多くいます。一方、男子選手であれば目一杯力が果てるまでやり切ることができる選手が多い傾向があります。

 さらに、女子選手は、筋力トレーニングをして肉体的に強くなることも男子よりも大変困難であり、それぞれの性別に最も適した指導方法へと変更しなければならないことを理解しておく必要があると思います。

 今現在、私は九州共立大学男子バスケットボール部を指導していますが、バスケットボールの指導において、男子と女子の声掛けやコミュニケーションの取り方など若干異なることが感じ取れるようになってきました。また、カテゴリーや競技特性、そして競技能力の差異がある場合も選手に話を掛ける内容やタイミング等も異なることを実感出来るようになってきたのです。

■男女選手の戦術的な考え方

 さて、ここからは、バスケットボールの戦術的なお話をしていきたいと思います。色んな意見があるとは思いますが、私は、男女選手を指導する場合、身体的特徴や特質は異なっていてもバスケットボールの戦術的な考え方は同じと捉えています。

 もちろん、走、跳、投など男女の基礎体力等に根幹的な違いがあるので、男女選手間の戦術は大きく異なるものと考えている方もいると思います。

 しかし、私が、松下電器時代に指導して頂いた※ポール・ウエスト・ベット氏は、NBAでヘッドコーチをしてチャンピオンになっていますし、WNBAでもチャンピオンになっているのです。そのバスケットボール戦術は、男女選手の指導上で練習内容を変えずに『ラン&ガン』ファーストブレイク主体のバスケットボール戦術で勝利を収めています。また、私を名門松下電器スーパーカンガールズへ声を掛けて頂いた※清水良規監督『堅守速攻』で男子日本リーグ、女子日本リーグでも結果を残されて、チームの核となるベースは男女選手共に同じでした。

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※ポール・ウェストヘッド Paul Westhead
・通算 3年 161試合 111勝 50敗 勝率.689
・NBA優勝 1回
・カンファレンス優勝 1回
NBAとWNBAの両方で優勝を経験した唯一のヘッドコーチ。レイカーズでは1979年に前任のジャック・マッキニーが交通事故のため、ウェストヘッドが急遽ヘッドコーチに就任。カリーム・アブドゥル・ジャバーやルーキーのマジック・ジョンソンらを擁して、見事1年目でNBAチャンピオンに輝きました。"The System"と呼ばれるランアンドガンのスタイルは、ロヨラ・メリーマウント大学 (NCAA)、フェニックス・マーキュリー (WNBA) でも継続され、それぞれの舞台で成功を収めました。hatenablog.com


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※清水良規(しみず よしのり)
日本体育大学卒
コーチ略歴
・1980-1995 松下電器 ヘッドコーチ
・1991-1994 男子日本代表ヘッドコーチ
・1996-2002 日立戸塚レパード(WJBL)
・2003-2005 松下電器 技術顧問
・2005-2013 松下電器 ヘッドコーチ
・2013-2014 三菱ダイヤモンドドルフィンズ(NBL)コーチ
・2014-2016 熊本ヴォルターズ(NBL)ヘッドコーチ
・2016-2019 大阪エヴェッサ GM basketballnavi.com

■フリーランスオフェンスを採用してチームのベース(核となる部分)を構築する

 私自身がこれまでに教えられてきた攻撃形態は、『ファーストブレイクを主体としたチーム』です。これは、現役時代の時から数多くの著名なヘッドコーチ陣からご教授頂き、ある程の指導イメージがありました。しかしながら、アーリーオフェンスからハーフコートオフェンスへの展開において迷いが生じていて、上手く指導が出来ない私がいたのです。また、F大学女子バスケットボール部の一人一人の特性を見ても動き方を決めた戦術よりもフリーランスでコート上の5人が自由に動けるオフェンスの方が合っているように感じていました。

何かしっくりきません💦

■フリーランスオフェンスのメリットとデメリット

 私はファーストブレイクの指導イメージはありましたが、ハーフコート・オフェンスにおいて決まった動きのようなセットオフェンス(パターオフェンス)というよりも、シンプルに全員が自由に動くことができるフリーランスオフェンスを考えていました。 しかし、どんなハーフコートオフェンス形態を構築する場合もメリットとデメリットが存在すると思います。

 そして、そのハーフコートオフェンスは、フリーランスオフェンスとセットオフェンスの2つに分類されます。

 フリーランスオフェンスのメリットとしては、少ない約束事で個々が自由に動くこと、決まった動きではないのでスカウティングされにくいなどが挙げられます。

 一方、フリーランスオフェンスのデメリットとして自由に動くことを理解できずに、ただ動き回るだけになることや形態が決まっていないだけに多くのミスが起こる可能性があります。セットオフェンスのメリット、デメリットはその真逆と捉えても良いでしょう。

メリット、デメリットはまだいっぱいありますが…       簡潔ですみません笑

■ W炳善氏の『パッシング・フリーランス・オフェンス』

 そこで頭の中に浮かんだのが、九州地区だけではなく、全国的にも有名なコーチである、当時、KS大学男子バスケットボール部監督(現T大学九州)の「W炳善」さんの『パッシング・フリーランス・オフェンス』でした。

 私とWさんとの出会いは、大学時代の頃、学生東西対抗バスケットボール選手権大会があり、私が西日本の学生選抜の代表選手になった時、Wさんがアシスタントコーチをして頂きました。その時からその戦術を教えて貰い、また福岡へプロ選手として帰ってきた時も大学生と一緒に練習へ参加させて頂きながら勉強をさせて貰っていました。


当時大学生の練習メニューはめっちゃハードです笑

 選手は、コート内をかなりハードに動き回らなければいけませんが、チームルールはとてもシンプルで、全員が自由に動き、観ている人を楽しませる大変魅力的な『パッシング・フリーランス・オフェンス』です。

 しかし、私自身、Wさんの『パッシング・フリーランス・オフェンス』を体験して理解していても、選手への指導となるとまだ教えることが出来ていませんでした。

 そこで、私はこのオフェンス戦術を採用したいと思い、Wさん相談したところ、1日クリニックを実施して頂きました。それによって選手も私自身もこの戦術がイメージできるようになり、これを機に『パッシング・フリーランス・オフェンス』という戦術を全員が理解出来るようになっていったのです。

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■『過程』を楽しむこと

 もちろん、1日指導して頂いただけで、簡単に上手く行くことはありません。何度も何度も失敗をして、チーム内でコミュニケーションを取り、問題点が出れば、その都度止めて動きを確認しながら実施しました。

 また、私も選手の質問に答えることができない時は、Wさんに連絡をして、助けて頂きながら、何が正しく何が悪いのかを区別して来ました。

 失敗もいっぱいありましたし、全てが私の考え方が正しいと思うこともありませんでした。

 つまり、コーチとして『選手達と一緒に苦しみ、悲しみ、そして、一緒に笑い、楽しみにながらチームの核となるベースを構築していく過程』は本当に楽しく何よりも幸せな時間でした。もちろん、当時の選手からしてみれば、『練習がキツい、走り過ぎ』と言うかも知れません。でも、『一つの目標に向かって努力することの大切さ』を時が経過した今は『結果』よりも『過程』がキツかったけど、楽しかったと実感しているのではないでしょうか。

どうですか笑 当時の選手の皆さん笑
続きは後日アップします。

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次回は、F大学女子バスケットボール部についてのコーチングは最後になります。

『ドン底からの念願のインカレ出場』を書きたいと思います。

引用及び参考文献

・ゴールドスタンダードラボ(GSL)http://goldstandardlabo.com/(2020.8.27)

・吉井四郎(1987)バスケットボール指導全書2,大修館書店:東京.

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