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The 50 Best Albums of 2023

The 100 Best Songs of 2023に続き、次はThe 50 Best Albums of 2023を紹介します。2023年は100作品ほど新しいアルバムを聞きましたが、その中でもお気に入りの50作品です。できるだけコメントを残していきたいのですが、時々コメントが薄くなるのはご了承ください 笑。こういう記事は12月中に更新しないとな~。


第1位 Mitski 『The Land Is Inhospitable and So Are We』

 去年リリースした『Laurel Hell』から1年ほど足らずでリリースされた新作。『Be The Cowboy』リリース後の活動休止を考えると非常に速いペースでのリリースに彼女のやる気と気合を感じる。私は別に前作の『Laurel Hell』は嫌いじゃないし、何なら去年の年間2位に選んだくらい好きだけど、彼女のファンからは賛否が分かれるもだったそうで、それをMitski自身が知ってか知らずか、新作では古くからのファンも新規のファンも批評でもセールスでも健闘する作品を作り上げてきてくれました。相変わらず曲ごとが短いがその中に色んな音を詰め込み変質的だけど、やりすぎない良い塩梅の密度の濃い曲が並ぶのは見事で、一曲入魂とはまさに彼女のことでしょう。サウンド的にはアメリカーナで一曲ごとに身体に染み渡る。 tik tok経緯でのMy Love Mine All Mineの特大ヒットはアルバムの出来のすばらしさの副産物だろうけど、素直に喜んでいて欲しいな。


第2位 boygenius 『the record』

 実はMitskiが今年リリースすると思っていなかったので、彼女がリリースするまでは間違いなくboygeniusが1位でしたね。一応バンドの説明をしますと、アメリカの女性インディロックシーンを支えるJulien Baker, Lucy Dacus, Phoebe Bridgersの3人が集まり結成されたバンドです。バンド名は若くして成功する天才児の男の子を形容する言葉をあえて自分たちに使っています。前作のEPと基本的には同じ曲作りへのアプローチでJulien, Lucy, Phoebeなどそれぞれのリード曲もありつつ、3人が平等に歌う曲などもあり、3人の集合知が集まって出来たバンドと言えます。全曲良いですが、先行でリリースされた”$20” "Emily I'm Sorry" "True Blue""が外せませんが、三人の見事なハーモニーと売って出てやるという意気込みが感じられる"Without You Without Them" "Cool About It" "Not Strong Enough" "Satanist"が印象的かもしれない。元々アメリカのインディレーベルでそれぞれソロで所属していますが、boygenius名義では恐れずInterscorpeという超メジャーレーベルを選んだのも、3人でいれば怖いものなんてない、女性のバンドだからと言って臆せずインディにいる必要はないという意気込みも感じます。 


第3位 Lana Del Rey 『Did you know that there's a tunnel under Ocean Blvd』

 Lanaのハイペースな創作活動の中で何度目かの高評価アルバムですが、実はファンからの評価は割と普通なのが、彼女のリリースするアルバムたちのレベルの高さが思い知れるエピソードでしょう。それはそうと確かに本作は『Lust For Life』期を思い出すほど多くのアーティストとコラボレーションして彼女の創作の幅が広がった気もしますし、仲間と共に作り上げたアルバムと言う感じで、それは自身の家族について多く言及するなどの歌詞の変化にも表れています。ラストのバックコーラスとのハーモニーが温かい"The Grant"、アーティストとしての不安や覚悟などが歌われる"Did you know…"、"Candy Neckless" "Sweet"とうのピアノでの力強い曲が続く中、曲がドラマチックに変化し明け透けな生活を描いた"A&W"は間違いなくLanaの代表曲になると思われる。Judah Smithという牧師の説教すら笑う余裕のある彼女ですが、アルバム後半も重厚なバラードが多く占められていて、飽きそうなところを一曲ごとの独立したプロダクションが集中力を持続させてくれる。来年あたりにまた新しいアルバムをリリースしそうな創作意欲は尊敬の域です。


第4位 Jessie Ware 『That! Feels Good!』

 前作『What's Your Pleasure?』でのディスコへの路線変更が好評だったJessie Wareですが、それに続く新作も同じくディスコですが、今作はそれに加えてJessie Wareがシーンに出てきたときに披露していたソウルのテイストが良い感じに加わっている。そもそも声が凄く良い人だし、それに好評だったディスコに彼女の基盤であるソウルの要素が色濃く加われば、自然と名盤になるわけです。また歌詞も明るくエンパワーメントされるので、大衆が求める明るい歌姫像も表現できているのが頼もしい。イギリスシーンに何かと厳しいアメリカ音楽メディアでも今作は好評で、ポップディーヴァに厳しいPitchforkでもBest New Albumを獲得する栄誉も。アメリカの歌姫に勢いが感じられない今、アメリカに良いディスコフィーバーをふかしてくれる最高の存在です。


第5位 Miley Cyrus 『Endless Summer Vacation』

 2023年の1月に突如リリースされたリードシングルの"Flowers"が異例のヒット。もはや元ディズニーアイドルという肩書も過去の遺物のように感じられるほど今の活躍が素晴らしいMileyですが、こんなにヒットする未来を予想できた人がいたでしょうか。忠実なファンの私ですら、今のMileyのヒットに驚いています。アルバム全体は12曲の上質なポップソングがおさめられていて、時々ロックだったりダンスポップだったりとMileyが過去に取り上げてきたサウンドですが、それに貫録がもたらされたことで一曲ごとが非常に洗練されて聞こえてきます。Miley本人が当事者であり強力なコミュニティ支持者でもあるため、ゲストに呼んだBrandi CarlileとSiaという人選も納得です。歌詞は今まで以上に正直で強がりを感じるものが多いですが、どこか吹っ切れていて清々しい印象すら。アルバムやシングルヒット、グラミーにノミネートという栄誉もありますが、残念なことに本作において本人が全くプロモーションやツアーやライブ活動をしていない様子。もちろん本人のメンタルや健康が大事なので、ご自愛して欲しいところです。


第6位 Paramore 『This Is Why』

 Paramoreとしては2017年にリリースした『After Laughter』を最後に活動休止状態でしたが、2023年に満を持して新作をリリースしてくれました。ここ数年の女性オルタナ、ロック、インディの活躍と呼応するかのように素晴らしいアルバムをリリースしてくれました。そもそも女性オルタナ、ロック、インディなどのシーンの影響の中心的存在であるParamoreが2023年に戻ってきて、それが盛大に迎えられるのは必然なわけです。サウンドもエモやパンクやロックの要素は引き続きありますが、それに加えて前作の『After Laughter』でのニューウェーブやHayley Williamsがソロ作で挑戦したことなどがしっかり活かされていて。これだけめざましい成長遂げたバンドですが、ここで一つ懸念が…なんと突如としてSNSの全投稿を削除し、真っ白状態。決まっていたライブもキャンセル。嫌な予感が現実になりそうな…


第7位 Caroline Polachek 『Desire, I Want To Turn Into You』

 ポップでもよりアートっぽいセンスなのに、しっかり聞きやすい。そして何よりのあのメゾソプラノの声ですよね。エレクトロを自在に使いこなすだけでなく、ちゃんと彼女にしか出せない確固としたスタイルがあります。


第8位 Blondshell 『Blondshell』

 Wednesdayと同じ時期にデビューアルバムをリリースしたBlondshellですが、彼女が聞いてきたであろう90年代のインディまたはロックの女性アーティストたちを彷彿とさせるサウンドや歌詞に惹きつけられました。OliviaやBillieを始めロックやオルタナティブに惹かれて、彼女たちよりもっとノイジーでさらにハードなロックをソロで女性でやっているアーティストを聞きたいと思う層が出てきても不思議ではないと思うので、そこにBlondshellがハマると良いのですがね。十分そのポテンシャルがあると思います。


第9位 Olivia Rodrigo 『GUTS』

 『SOUR』の時点でOliviaのやりたいサウンドはロックなんだろうなと思っていたのですが、アルバムも正々堂々とロックを選択しました。しかも曲によってはさらにラウドにノイジーなロックもあり、その潔さに惚れました。


第10位 Little Simz 『NO THANK YOU』

 この曲もSZA同様に去年の12月にリリースされていなければもっと高い順位にいたであろうアルバムですが、それでも10位です。クラシックなサウンドにLittle Simzのラップがのるスタイルは他のラップとは一線を画す魅力がありますね。少しInfloの企画ありきのアルバムみたいな感じがするのですが、それでも良いアルバムだと思います。


第11位 Roisin Murphy 『Hit Parade』

 DJ Kozeとほとんどリモート作業で作られたそうですが、全くクオリティが落ちないのは凄いですね。Jessie WareやKylie Minogue同様にこういうアーティストがとんでもない名作をリリースしてそれをみんなで温かく迎え入れるイギリスの音楽シーンの強さを感じますね。ただRoisinがトランスジェンダーのホルモン治療に使う薬についての発言で、彼女の主なファン層であるLGBTQコミュニティから批判されてしまい、それがアルバム評価に影響してしまっているような感じが年末辺りに見られたのが勿体ないですが(Roisin自身は後に謝罪)、それを差し引いてもいいアルバムだと思います。


第12位 Arlo Parks 『My Soft Machine』

 前作からジャンルレスな感じは見えましたが、SZA同様にもはやR&Bだけにとどまらないサウンド作りをしています。メディアでの評価がなぜか低い気がしますが、正直まだArloのようなアーティストをどう評価すればいいか分かってないような気がしますが、迷わずロックとして評価すればいいんですよ。特に"Devotion"を聞けば分かるはずです。


第13位 SZA 『SOS』

 去年の12月にリリースされていなければ確実にトップ10になったであろうアルバムですね。本作ではジャンルにとらわれない曲を多数収録していますが、やはりヒットした"Kill Bill"や"Good Day"は、そのアルバムのテーマとサウンドを包括するような曲です。SZAを知らない人が聞けば普通の売れ筋のポップソングだと思うでしょうが、それこそSZAの狙いでしょうね。Miley同様に大ヒットを素直に喜んでいて欲しいです。そして実は2月に行われるグラミー賞で大穴的な存在だと思っています。


第14位 Feist 『Multitudes』

 私はFeistは嘆きの女王だと思っているのだが、本作でもいかんなくその嘆きが見えるが、私生活では養女を迎え実の父が亡くなったことが影響してか、その嘆きにも希望やその問題を私に託して欲しいという頼もしさも。不いつも通りフォークが基礎にあるけど、どこかアンビエントな感じも見えて、丁度メディアで絶賛されていたJulie Byrneの新作と共振するところがある作品ですね。


第15位 Janelle Monae 『The Age of Pleasure』

 前作がかなりかっちりとしたテーマとプロダクションがあったのに反比例して本作ではあらゆる解放が見て取れます。レゲェやソウルやアフロビートに挑戦しています。前作で掴んだロックファンなどは少しとっつきにくいかもしれないですが、どちらかというと黒人のクィアコミュニティを祝福しようという気持ちが良いですね。


第16位 Christine and the Queens 『PARANOIA, ANGEL, TRUE LOVE』

 Christineもハイペースでリリースするアーティストです。Christine流のシンセサウンドに正直でいたいと気持ちを吐き出すスタイルは唯一無二で、本作でもいかんなく発揮されています。三枚組でほとんど映画みたいな長さですが、その意欲作を支えるようにMadonnaが参加しています。


第17位 Noname 『Sundial』

 2018年の『Room 25』から5年ぶりにリリースされたアルバム『Sundial』から一曲。オールドスクールなヒップホップとジャズやネオソウル組み合わせたスタイルに彼女の詩を読むようなラップスタイルは健在ですね、同じくシカゴシーンから出てきたJamila Woodsの新作と一緒に聞きたいです。


第18位 Jamila Woods 『Water Made Us』

 前作から4年ぶりにリリースされた本作では今までとは違いLAのプロデューサーと組んでいますが、もちろんJamiaの良さは失われていませんね。この曲かなりポップだななんて思う曲もありますが、やはり歌詞が良くてね、傷つきやすい自分をしっかり守ろうというリアルさが垣間見えます。同じくインディで活躍するduenditaとのコラボレーションは凄く嬉しかったです。


第19位 Kylie Minogue 『Tension』

 長いキャリアの中で何度目かのヒットを記録しているKylie Minogueですが、ここに来て"Padam Padam"がヒット。耳馴染み良い低音エレクトロに繰り返して歌いたくなる”Padam Padam”で良いスタート切りました。アルバムはというと、いつも通りリスナーを躍らせたい、多幸感に浸らせてあげたいと言わんばかりの明るい『Tension』が出来上がっています。アメリカのベテラン歌姫たちが調子悪い中、やはりイギリスのシーンは頼もしいですね(Kylieはオーストラリア出身ですけど)。


第20位 Doja Cat 『Scarlet』

 Doja Catが「私はラップができる、ポップすぎない」とまるで大衆のイメージへ反抗して作ったアルバムですが、実はちゃんと聞くとテイストが違うだけで前作『Planet Her』に続く聞きやすいラップアルバムなのです。ただそのラップもオールドスクールなこれぞヒップホップと言いたくなるのですが、やはりDojaはラップだけじゃなくコーラスの自分で歌えてしまうので、それだけでかなり強いです。"Paint the Town Red"の特大ヒットもみんな彼女のラップスタイルに感心してのものだと思うので、変に勘繰らずこのヒットは受け入れて欲しい限りですね。


第21位 Stephen Sanchez 『Angel Face』

 一昨年くらいに聞いた"Until I Found You"で「やっとレトロ趣味の男性ソローシンガーが出てきたな」と大注目していたのですが、本作では"Until…"みたいなレトロな曲もありつつ、ロックやドゥーワップみたいな曲もあってバラエティー豊かで感心しました。またやはり声が凄く良い。こういうレトロ趣味ってLana Del Reyが出てきたときにも必要以上にロックメディアで叩かれたりするのですが、本作もその憂き目にあっているような。ロックが50年代の大衆歌からの反動で出てきた音楽なので毛嫌いする理由は何となく理解できるのですが、レトロな音楽を純粋に愛して、モダン的なアプローチをして、それをヒットさせているだけ凄いと思うのですが。批判にめけず自分の好きな音楽を追及して欲しいですね。彼みたいな存在は貴重ですからね。


第22位 Wednesday 『Rat Saw God』

 Phoebe BridgersやMitskiが所属するインディレーベルDead Oceanからまたイイ感じのバンドが出てきましたね。ノイジーなギターが鳴っているですが、たまに「カントリー?」って感じのサウンドがあるのも特徴的です。そこにアメリカの田舎で暮らす若者の鬱屈とした感情がのってくるのが今っぽいかも。だからって全然保守っぽくないです。Blondshellと続いて2024年の来日公演には必ず行きます。


第23位 Melanie Martinez 『PORTALS』

 実は今までちゃんとMelanie Martinezのアルバムをしっかり聞いたことが無かった。ちょっとBjorkみたいなビジュアルで驚きましたが、でも先行で発表された"DEATH"のただならぬ雰囲気からアルバムを初めて通して聴いてみると驚き。普通にロックとかインディロックな雰囲気もあって、これはロックファン必聴ですよ。本作は死からの復活ということでコンセプトアルバムみたいな趣もあって、シングルヒットではなく、アルバム全体をしっかり聞いてもらおうという明確な意志の下で作られています。実はつい最近、Melanie Martinezの来日公演に行ってきたのですが、とにかくファンの熱狂が凄くて、少し怖いくらいでしたね。来日公演はサプライズもあったのですが、セットリストは本作の曲を全部順番通りに演奏するというかなりの野心的な内容だったのですが、観客はみんなどの曲も口ずさんだり、ノリノリだったり、しっかりMelanieのアルバム全体をしっかり聞いてほしいという意図が伝わっていて良かったと思います。


第24位 RAYE 『My 21st Century Blues』

 本作で1stアルバムですが、デビュー自体は随分前にしていたRAYEです。そこからレコード会社が上手くRAYEを売り出せなかったり、RAYE自身も私生活でトラブルが続いたりと波乱万丈な人生を送っていたようです。その気持ちを表現するのに選んだサウンドがソウルとブルースです。もちろん21世紀テイストの。冒頭から思い起こされるのはAmy Winehouseですが、それよりもっと自由にブルースという音楽を定義しています。"Escapism."のヒットも素直に受けて入れて欲しいですね。


第25位 Kesha 『Gag Order』

 去年の12月に晴れてDr. Lukeの傘下をようやく離れて自由になったKesha。おそらくRCAレコードから最後のアルバムになるでしょう。あの大御所であるRick Rubinの力を借しています。いくら離れるからと言っても曲作りに一切の手抜きと妥協をしない姿勢は本当に素晴らしいです。少し分かりにくい曲が続きますが、Rick Rubinとの曲作りは続けて欲しいですね。そもそもKeshaは60~70年代音楽にルーツがある人ので、絶対次は名作をリリースしてくれるはずです。次のレコード会社に行けばガラッといろんなものが変わるでしょうが、きっと今の彼女なら大丈夫です。


第26位 MAN ON MAN 『Provincetown』

 中年ゲイカップルのイチャイチャしているサムネに釣られてMVをクリック、観終わるころには完全にファンになってしまいました。MAN ON MANにとっては2ndアルバムですが、1stと聞き比べてみると2ndは聴きやすくなっている気がします。イチャイチャMVは健在です。こういう中年のゲイ男性たちが堂々とイチャイチャしながらバンド活動している時点で心強いですからね。


第27位 Maisie Peters 『The Good Witch』

 日本でもEd Sheeranパワーとサマソニ出演でじわじわと知名度が高まっているMaisie Peters。2023年の単独来日公演に行きましたが、とてもキュートな歌声でしたが、それ以上にキャッチーなポップロックでそれが凄く良かったですね。私含め"Psycho"みたいなポップスで知った人は多いと思いますが、本作ではより強めにロックを奏でていて頼もしい限りです。もともとTaylor SwiftとEd Sheeran大好きな彼女ですからね、ギターを曲作りの中心に据えて、独白の歌詞で共感を集めるスタイルはこれからも無くさないで欲しいところです。


第28位 The Japanese House 『In The End It Always Does』

 The 1975のメンバーであるGeorge Danielが曲作りに携わっているだけあって、もう「これ、The 1975の曲じゃない?」って感じの曲がちらほら。でもしっかりバンドで奏でてるなって感じがすごく良いですね。明るい曲調でも、けっこう暗く元恋人への未練が感じられる曲など、さすがのクィアネス。アルバムジャケもどこか輪廻転生を感じるメッセージで、ここに来て自身のバンド名であるThe Japanese Houseのバンド名を意識したのだろうか。


第29位 PJ Harvey 『I Inside the Old Year Dying』

 前作から7年ぶりの新作ですが、さすがPJ Harvey、アルバムの質は落ちませんね。今回はギターの音が小さめでどっちかというとフォーク的なアプローチですが、実は最近の女性インディロックのシーンと共鳴していて、ちゃんとシーンを意識しているんですよね。歌詞も抽象的なものが多くて、ちょっと読み込むには時間がかかりそうです。


第30位 Aly & AJ 『With From Love』

 インディロックなテイストでシンセがのっかり聴いていてとても心地が良い。元々売れ線世界に身を投じていた姉妹ですからね、変に地味な感じを追求せず、2人で楽しい音楽を追求しようという気持ちは素晴らしいです。同じく姉妹バンドだとHAIMがすぐに浮かびますが、HAIMと同じくらいみんなが気にかけて欲しいバンドです。


第31位 Yaeji 『With A Hammer』

 次のFever Rayでも説明しましたが、シンセでエレクトロ系でアジアテイストだったらやはりyaejiの方が良いかなって感じですね。まあ韓国系アメリカ人なので当たり前ですがね。アメリカ映画界では韓国作品や韓国にルーツがある作品が評価されていますが、そりゃそのムーブメントが音楽の世界で起きていても何も不思議ではないですね。The Japanese Breakfastと違ってアプローチがかなりこじんまりとしてオタクっぽいですけ。ただ盲目にルーツや家族を遡るのではなく、悪いことにはハンマーを振りかざして悪い習慣は断ち切ろうとポジティブで力強いメッセージを発しているのも良いです。


第32位 Fever Ray 『Radical Romantics』

 The Knifeのグループ活動と並行してソロ作品をリリースしてきたFever Rayがここに来てまたソロで良作を出してきましたね。ぎょっとするジャケ写ですが、その不思議で神秘的な雰囲気はアルバムのサウンドにも表れています。シンセを多用して誇張した80年代サウンドというか、アジアンテイストっぽい感じも良いですね。


第33位 Lapsley 『Cautionary Tales of Youth』

 Sam Smith同様にソウルとクラブテイストな曲でアルバムを構成するのがLapsleyですが、前作にあった理解しやすさが若干後退している気も…それでもシングルカットされた曲は素晴らしいし、やはり声がね魅力的なんですよね。


第34位 Sam Smith 『Gloria』

 "Unholy"の特大ヒットに、見事DIVAと化したSam Smithです。私はXでも何回も呟いていますが、Sam Smithのモンスターペアレントみたいなところありますからね、純粋に解放されたSamくんを見て清々しい気分ですよね。"I'm Not Here to Make Friends"など踊れる曲も多数ですが、"Love Me More"などのしっとりとした曲もありますが、少しアンバランスな気もします。でもそのアンバランスさこそSam Smithらしいのです。


第35位 Ava Max 『Diamonds & Dancefloor』

 今後の期待を込めてこの順位です。個人的にはこういう歌姫は何人いてくれてもかまわないのですが、初期のLady Gaga的アンセムからその次に中々繋がらないのがAvaです。"Maybe You're Ploblem"が個人的に一大アンセムだったのですがね。ただ2023年は同じくアルバニア系のBebe Rexhaがようやく表現したいサウンドを見つけて『Bebe』という傑作を作りましたからね、いつかAva Maxも見つけてくれるはずです。


第36位 Alison Goldfrapp 『The Love Invention』

 Roisin Murphy同様に元々Goldfrappというエレクトロデュオで活動していましたが、本作で初めてソロでアルバムを発売。シンセをベースにカラフルな曲が並んでいるので、それだけで聞いていて楽しいです。こういうベテランの女性アーティストが意欲的にエレクトロ系のアルバムを作れてすぐに発表できる環境があるイギリスが羨ましいです。Jessie Ware、Roisin Murphy、Alison Goldfrapp、Kylie Minogueの4人で是非アメリカの音楽シーンを脅かして欲しいですね。


第37位 yeule 『softscars』

 yaeji同様に少しオタクっぽいですが(褒めてる)、ポップでもかなりノイジーで聞く人をかなり選びそうですが、ちゃんとインディロックなテイストがあって良いし、何よりこのヴィジュアルですよね。それだけで独り勝ちです。


第38位 Maneskin 『RUSH!』

 日本でも押しも押されず人気バンドになったManeskinです。新しいアルバムは主にアメリカで製作されたにも関わらず自分たちの良さは変わらず健在でしたね。ロックバンドが弱い弱いなんて言われていますけど、ちゃんと新しい風を起こしてくれるバンドっているんですよね。


第39位 Jungle 『Volcano』

  ほぼアルバム曲全てにMVを作った景気の良さは讃えたいですね。サウンドはいつものJungleなのですが、よりソウルさが足された感じがしまうs。Jessie Wareもそうですが、こういう音楽デュオがアメリカではなくイギリスから生まれ、ソウルやディスコに新しい風を起こしているのは、それだけイギリスのシーンが良いからです。こういうソウルの良さを認識させてくれるアーティストが、理解しやすく大衆受けしやすい形でアメリカから出てくると良いのですが。


第40位 Birdy 『Portraits』

 実は2023年に地味に一番音楽のアプローチを変化させてきたのがBirdyです。もちろん引き続きアコースティックな弾き語りから派生した曲もありますが、本作で一番目立つのは"Paradaise Calling"を始めとした80年代風のシンセポップです。私は凄く好きでしたが、80年代シンセだと他にも良いアルバムがたくさんあるし、良いアーティストがいるんですよね。それでもあの声からはなたれる唯一無二な個性は素晴らしいですからね、今後またどう変化していくのか見守っていきたいです。


第41位 Carly Rae Jepsen 『The Loveliest Time』

 いつものBサイドプロジェクトかと思いきや、名前も変えて本人もこれはサイドプロジェクトとして位置づけたくないとのこと。それくらい自信のあるアルバム、自信のある曲作りをしてきたということだ。そのかいあって辛口のPitchforkで"Psychedelic Switc"がBest New Trackに選ばれるなど順調なスタート。あまりキャッチーな曲が並ぶわけではないですが、一聴すればそこには上質なポップが並んでいます。それでも私は『The Loneliest Time』と比べてしまいますがね(そしてそっちのほうがやはり良いアルバムだ)。ただ枯れない創作意欲と上質なポップソングを作ろうという気持ちは絶対に評価したいです。Carlyが人気な日本ですが、イマイチ『Kiss』以降の曲作りへのアプローチが知られておらず、未だに彼女に"Call Me Maybe""Good Time"を求めている人々が多いのが残念です。


第42位 Victoria Monet 『JAGUAR Ⅱ』

 実は初見で聞いたときは「正統派R&Bだな」と軽く流していたのですが、メディアや同業アーティストからの絶賛の声が続いたので、もう一回耳を澄ませて聞いてみると、これは良いアルバムだと気づきました。打ち込みじゃない生の演奏をバックにけっこう技巧的な演奏が続くんですよね、こりゃグラミー賞にも好かれるわけですね。2月の授賞式本番が楽しみです。


第43位 Romy 『Mid Air』

 The xxのグループ活動を経て初めてのソロでアルバムをリリースしたRomy。同じくグループからソロを出したFever Rayに続く存在になって欲しいですが、Fever Rayと比べるとRomyの方がずっとポップで聞きやすいです。その聞きやすさは評価したいですね。グループにいた時より制約から解放されて、ラブソングも多く、その全てがRomyの彼女に捧げられているのも良いです。


第44位 Kali Uchis 『Red Moon In Venus』

 実は本記事を書いている2024年1月の時点でもう新しいアルバムを発売したKali Uchisですが、本作の成功がそのハイペースな創作意欲に繋がっているはず。毎回この曲のタイトルはなんて読むのだあろうと困惑させてくるKaliですが、ありがたいことに本作に収録されている曲は全て曲名が読みやすい。そしてその理解しやすさが、アルバム全体にも。ほとんど英語の曲で普通に聞いていれば上質なポップソングかR&Bの売れ線に聞こえます。"I Wish you Roses"がいい例です。こういう理解しやすさが評価したいですね。


第45位 Kelela 『Raven』

 2023年はエレクトロ系の黒人女性アーティストが名作をたくさんリリースした年でしたが、その中でもKelelaの本作が抜きんでていたと思います。そもそも2022年にBeyonceがメジャーでハウスやエレクトロで旋風を巻き起こしていましたからね、その反動がインディシーンで起きていても不思議ではありません。願わくばもっとヒットして欲しいですね。


第46位 Julie Byrne 『The Greater Wings』

 Julie Byrneのことは知らなかったのですが、Pitchforkがベストニューアルバムに選んでいたので、聞いてみたのですが良かったですね。フォークにルーツを置きつつ、アンビエントも取り入れつつ、彼女にしかできない世界観を表現できています。やはり独特な自分だけの世界を持っているアーティストに惹かれてしまいますよね。Spotifyの再生回数見ていると少なくて、ヒットして欲しい限りです。


第47位 Samia 『Honey』

 Blondshellを通して彼女の存在を知りました。母親も父親も俳優として著名ですが、Samia本人は親とは違う道へ行き、インディ気質があって、あまり親の影を感じさせません。本作でもインディロックに基本がありつつ、けっこう聞きやすくポップな感じがあるの凄く良いですね。直接スピリチュアルを表現しているわけでもないのに、どこかスピリチュアルな感が残るのモダンですね。


第48位 Bebe Rexha 『Bebe』

 David Guettaが久しぶりにアメリカでヒットさせた"I'm Good (Blue)"で、府改めてEDMとの相性の良さを証明したBebeですが、本作では1970年代のカントリーやロックやディスコに影響を受けた様子。アルバム全体も非常に聞きやすく、ようやく自分に合ったサウンドを見つけたようで。実は私も初めてアルバムを通して彼女の音楽を全部聞いたのは初めてでした。変にヒップホップやラップにアプローチしていた時代が嘘みたいです。本作でカントリーの大先輩であるDolly Partonが参加していますが、そういえばBebe Rexhaの歌声ってDollyと同じ系統でしたね。改めて気づかされました。本作でようやく自分にあったサウンドを見つけたBebeですが、2023年11月に行われた来日公演では、新作より過去に客演で参加したEDMの方が日本の観客には受けていたのが非常に勿体無いというか、みんなもっとオリジナルのアルバムを聞いてみてください。(こんなEDMがまだ強い国って珍しいよね)


第49位 P!nk 『TRUSTFALL』

 90年後半デビュー組で一番コンスタントにヒットソングを出して、幾度となく大きなツアーを成功させているのがP!nkです。サウンド的にはここ数年特に変化は無いのですが、アルバムタイトル曲にもなってる"Trustfall"初め、メッセージ性あるポップソングやバラードを書かせて歌わせたら右にでる人はいませんね。やっぱり声がいいからね。


第50位 Rick Astley 『Are We There Yet?』

 音楽の内容と言うより、愛情票ですね。私の元祖アイドルでもあるので。The 100 Best Albums of 2023の記事でも書きましたが、実は80年代UKデビュー組みの中でもKylie Minogueに続くくらい熱心に活動しているのがRickです。2016年に『50』というアルバムリリースで復活したあのように音楽活動とライブ活動をしているのですが、2023年に出演したGlastonburyでも元祖アイドルらしく愛嬌とユーモアを振りまいて話題に。その中でリリースされた本作ですが、もちろん80年代的な明るいユーロビートな曲は見られませんが、その代わりに彼のルーツでもあるソウルやロックが。何より彼の場合は歌声が良いですからね、それだけでも強いです。ぜひコロナ禍に中止になった来日公演を再び実現して欲しいです。

以上50枚紹介しましたが、上記に入らなかったのですが、Elle King, Black Belt Eagle Scout, Liv.e, Gorillaz, Meet Me The Alter, Black Honey, DEBBY FRIDAY, Caroline Rose, Fenne Lily, Indigo De Souza, Baby Rose, Dream Wife, Jenny Lewis, Alex Lahey, Bully, Claud, 100 gecs, The Beaches,
Madison Beer, Molly Burch
などもお気に入りでしたね。


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