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The 100 Best Songs of 2023

 2023年もたくさんの名曲が誕生しました。2万曲の候補から100曲ほど選曲しました。できるだけジャンルは広く設定したのですが、どうしてもポップスとインディロック、そしてコラボレーションソングに偏ってしまいます。短いですが、コメントも載せます。曲の感想っていうよりかは、そのアーティストとその1年の総括みたいなコメントが多いです。2022年12月から2023年11月までにリリースされた曲から選んでいます。


  1. "Flowers" Miley Cyrus

 MileyがWrecking Ballにぶつかってから丁度10年と言う節目でキャリアハイを記録した記念すべき曲。歌詞や曲が良いのはもちろん、やはりカントリーにルーツがある歌声からはなたれる説得力が何よりも良いですね。一つ残念なのが本作で全くプロモーションをしていないことですね。本人の健康が第一なのでしょうがないですが。


2."Welcome To My Island" Caroline Polachek

 冒頭の叫び声から終わりまでずっと引き込まれる。この声はオートチューンではなくて本人の地声から繰り出されているというのが驚き。エレクトロを自在に使いこなすだけでなく、ちゃんと彼女にしか出せない確固としたスタイルがある。


3."$20" boygenius

 アルバム発売発表と同時に先行で発表された"Emily I'm Sorry" "True Blue"と同時にリリースされたこの曲。擦れたエレクトロギターがサウンドの主軸なのでおそらくJulien Bakerがメインの曲であるが、実はPhoebe BridgersとLucy Dacusそれぞれの個性が光っている曲でもある。メインを歌うJulienに寄り添うように力強いコーラスを支えるLucyに叫ぶPhobe、これだけでboygeniusの名刺代わりになる。


4."My Love Mine All Mine" Mitski

 Tik Tokの影響でバイラルヒットしてついにはBillboard Hot100にまでランクインするほどにまでなっております。これが2024年もどこまで行くのか、今から楽しみです。Mitskiの曲にしてはおとなしめですが、しっかり彼女にしか出せない味というのがしっかりある曲です。


5."Pearls" Jessie Ware

 「パールが落ちるまで身体を揺らして」と自分自身を鼓舞するエンパワーメントソングで、これが中年の女性アーティストが歌っているというのがすごく意味のあることです。今年はRoisin MurphyやKylie MinogueなどUKを拠点としている中年以上の女性アーティストが名盤をリリースした年でもありますが(これだけでもUKのシーンの守備範囲の広さが分かる)、この勢いをアメリカに影響を与えてくれると助かるのですが。


6."A&W" Lana Del Rey

 Pitchforkなどの音楽メディアなどがSongs of The Yearに選んでいるなど多くのメディアが絶賛している曲ですが、それもそのはず曲の展開や歌詞などLana Del Reyのキャリアを総括するような内容なので絶賛されるのも当然と言えば当然なのです。曲後半のトラップ部分が映画『ビック』にオマージュを捧げていて、それがこの曲の理解をリスナーに促してくれているのが見事だと思う。


7."Borrow Trouble" Feist

 私はFeistは嘆きの女王だと思っているんだけど、その彼女が明るいサウンドをバックに「あなたの悩みを貸して欲しい」と歌っていて、ラストはPhobe Bridgers並みに叫ぶ。「Feistと言えば"1234"でしょ」と思い込んでいる人にこそ聞いてほしい。


8."Nothing Matters" The Last Dinner Party

 来年のダークホース的な存在であるUKのバンド。Xでフォローしている方がこのバンドを絶賛していて、気になったので聞いてみたところ、一目ぼれならぬ一聞きぼれ。ゴシックぽいMVに物語っぽいミステリアスな曲の始まりから一気にコーラスで派手になる曲調で、最高の一言です。こういうバンドを広く寛大な心で受け入れるUKメディアの存在が羨ましい。


9."Kill Bill" SZA

 去年の12月にリリースされていなければ確実に1位になったであろう曲ですね。SZAはジャンルにとらわれない『SOS』をリリースしましたが、そのアルバムのテーマとサウンドを包括するような曲です。SZAを知らない人が聞けば普通の売れ筋のポップソングだと思うでしょうが、それこそSZAの狙いでしょうね。Miley同様に大ヒットを素直に喜んでいて欲しいです。


10."Only Love Can Save Us Now" Kesha

 去年の12月に晴れてDr. Lukeの傘下をようやく離れて自由になったKesha。おそらくRCAレコードから最後のシングルになるでしょう。いくら離れるからと言っても曲作りに一切の手抜きと妥協をしない姿勢は本当に素晴らしいです。愛が私たちを救うことができると力強いコーラスで歌う姿にもはや迷いはありませんね。次のレコード会社に行けばガラッといろんなものが変わるでしょうが、きっと今の彼女なら大丈夫です。


11."Gorilla" Little Simz

 この曲もSZA同様に去年の12月にリリースされていなければもっと高い順位にいたであろう曲です。クラシックなサウンドにLittle Simzのラップがのるスタイルは他のラップとは一線を画す魅力がありますね。


12."Runnning Out of Time" Paramore

 この曲にはHayleyのソロを経て進化したParamoreのサウンドが集約されていますね。ただ感情を吐露するだけじゃなく客観性を持たせて冷静に吐き出している感じも素敵です。


13."To Be Honest" Christine and the Queens

 Christineもハイペースでリリースするアーティストです。Christine流のシンセサウンドに正直でいたいと気持ちを吐き出すスタイルは唯一無二でしょうね。


14."bad idea right?" Olvia Rodrigo

 『SOUR』の時点でOliviaのやりたいサウンドはロックなんだろうなと思っていたのですが、この曲は普通のロックより、もっとラウドにノイジーなロックでその潔さに惚れました。


15."Paradise Calling" Birdy

 あまり話題になっていないようですが、実はサウンドの方向性を大きく転換したのがBirdyです。80年代のシンセポップなら正直Birdyより優れているアルバムは今年だけでも多くリリースされていましたが、この曲単体だけ見ると、とても魅力あふれる曲だと思います


16."Padam Padam" Kylie Minogue

 長いキャリアの中で何度目かのヒットを記録しているKylie Minogueですが、この曲でもみごとヒット。耳馴染み良い低音エレクトロに繰り返して歌いたくなるPadam Padam。Padamって男性更年期障害のPartial Androgen Deficiencyin Aging Maleの略称?なのかと思っているのですが、ゲイのファンが多いKylieから中年ゲイファンへのメッセージかな?だとしたらこの曲を聞いて男性ホルモンの安定をはかりましょう。


17."boy's a liar Pt. 2" PinkPantheress, Ice Spice

 セールスでは女性ラッパーの健闘、批評面では女性エレクトロの高評価が目立った一年でしたが、まさにこの曲はそれが組み合わさった曲です。ゲーム音みたいなサウンドにほどよいIce Spiceのラップがスパイスになって何回もリピートしたのは私だけじゃないはずです。


18."Rush" Troye Sivan

 この曲とKylie MinogueのPadam Padamが同時期にリリースされたのでオーストラリアはゲイ国家であると証明するきっかけになったそうですが、本当にそうだと思う。


19."Attention" Doja Cat

 Doja Catはポップ過ぎると揶揄されたことへの反論から作られた曲だろうけど、純粋にオールドスクールなヒップホップを作ってくれたことが嬉しい。ポップ過ぎると言われたことへの反論でゴリゴリのラップを作って反論する必要はないと思うけど、でも実は売れる水準で作られている点は注目すべき。


20."Berbie World" Nicki Minaj& Ice Spice with Aqua

 ここから映画『バービー』のサントラからの曲が続きます。Aquaの伝説の曲をサンプリングする潔さに加えて、Nicki MinajとIce Spiceのバービーがテーマの高速ラップが心地よい。映画のエンドロールに流れるという攻めた姿勢も評価したいです。


21."Dance The Night" Dua Lipa

 今年映画の予告編を始め一番色んな場所で聞いたのが実はこの曲です。年末にリリースしたDuaの新曲と比べると映画用という感じで少し幼稚な感じもしますが、映画用だと思えば、何よりMark Ronsonがプロデュースしているので外れない。ディスコと言えばDua Lipaというイメージも付いてきましたね。


22."Speed Drive" Charli XCX

 こちらも『バービー』サントラから。Charli XCXらしく疾走感のあるハイパーポップが心地よい。


23."What Was I Made For? Billie Eilish

 同じく『バービー』サントラから。映画を観れば分かるけど、これが映画のテーマと呼応する本当のテーマソング。若干Dua Lipaが損している気がするけど、映画のテーマとなるとこういうバラードになってしまいます。「私は何のために作られたのか?」というアイデンティティの歌でかつ最近のBillieのテーマである成功の代償についても歌われていて、聞けば聞くほどアーティストのテーマと映画のテーマがマッチした奇跡に感謝したくなる。


24."Barbie Dreams" FIFTY FIFTY feat. Kaliii

 こちらも『バービー』のサントラから。この曲自体は映画では使われていなかったけど(確か)、底抜けに明るいポップスで大胆にもJanet Jacksonの"Together Again"をサンプリングするという強気。歌詞も実はちゃんとバービーの世界観を表現してるんですよ。


25."oral" bjork ft. rosalia

 元よりBjorkがインタビューでROSALIA愛を炸裂したことでコラボレーションに至ったであろうが、2人の音楽への情熱とサウンド作りを知っていれば何も不自然じゃない、こうなるべき運命のコラボレーションだろう。一つ残念なのがこの一曲のみで終わってしまうことだ。オーケストラをバックにしっかりとBjork節と言っていい歌いまわし、それでもROSALIAが参加してくれたおかげで非常に聞きやすい作りになっているのが嬉しい。


26."Take It From Me" MAN ON MAN

 中年ゲイカップルのイチャイチャしているサムネに釣られてMVをクリック、観終わるころには完全にファンになってしまいました。MAN ON MANにとっては2ndアルバムからのリードシングルです。けっこう明るい曲ですが、歌詞がけっこう辛辣と言うかリアルと言うか、2人の人生経験がかなり濃く反映されているのでしょうね。


27."Salad" Blondshell

 Wednesdayと同じ時期にデビューアルバムをリリースしたBlondshellですが、彼女が聞いてきたであろう90年代のインディまたはロックの女性アーティストたちを彷彿とさせるサウンドや歌詞に惹きつけられるのは自然の成り行きであった。


28."Lights Light Up" Fenne Lily

 Fenne Lilyも2023年に偶然知ったアーティストの1人。とにかくこの曲のアウトロのギターが良くて。


29."Tiny Garden" Jamila Woods, duendita

 地元シカゴを離れたのがきっかけで3rdアルバム『Water Made Us』では多種多様なプロデューサーと組んだ中で、やはり先行シングルのこの曲が抜群に良かったですね。同じ毛色のduenditaと組んだのも良かったと思います。


30."Float" Janelle Monae

 "Make Me Feel"と比べるとかなり自由でワイルドでリスキーな曲だと思いますが、聞けば聞くほど惹かれていきました。


31."Princess Diana" Ice Spice & Nicki Minaj

 Ice SpiceとNicki Minajの高速ラップを聞いてください。『2001年宇宙の旅』チックなMVも面白く、セクシーすぎてモノリスの出番も無いですね。


32."Bongos" Cardi B feat. Megan Thee Stallion

 "WAP"と比べるとセールス的にも話題的にも失敗している感じは否めませんが、私は好きです。


33."Cobra" Megan Thee Stallion

 女性に悪いイメージで植えつけられる蛇を逆手に取ってラップするこの曲。ラストのギターソロも驚きですが、蛇のように脱皮を繰り返し強くなるMeganの姿にこれからも注目です。


34."I'm Not Here To Make Friends" Sam Smith, Calvin Harris, Jessie Reyez

 ほぼ温情票です。私はSam Smithのモンスターペアレントみたいなところがあるので。私もお友達を作りにここにいるわけではないので。


35."What Now" Brittany Howard

 やっぱりBrittaniyは派手なサウンドがよく似合う。


36."Green Honda" BENEE

 キャッチーなリフを2023年に何回繰り返し聞いたことか。


37."Honey" Samia

 2023年に新しく知った一人にSamiaもいます。フォークな感じだけど、ポップで聞きやすくて、何回もリピートしてました。


38."Body Better" Maisie Peters

 日本でもEd Sheeranパワーとサマソニ出演でじわじわと知名度が高まっているMaisie。2023年の単独来日公演に行きましたが、とてもキュートな歌声でしたが、それ以上にキャッチーなポップロックでそれが凄く良かったですね。また歌詞を読みこみたくなる魅力もしっかりと持ち合わせていて、これからもっと人気が出て欲しいアーティストの1人です。


39."Glue Song" beabadoobee

beaの故郷であるフィリピンで撮影されたMVが素敵ですが、チルだけどしっかり起伏のあるアコースティックな曲作りに拍手。


40."TRUSTFALL" P!nk

90年後半デビュー組で一番コンスタントにヒットソングを出して、幾度となく大きなツアーを成功させているのがP!nkです。こういうメッセージ性あるポップソングを書かせて歌わせたら右にでる人はいないと思う。やっぱり声がいいんだよね。


41."Over" CHVRCHES

2023年の1月に来日公演でChvrchesのライブを初めて観たのですが、エレクトロがベースでありながらしっかりバンドの音がして、さらに響く歌声が重なり本当に感動したのを覚えてます。この曲はまさに私が感動した要素がそのまま表現されているので自然とランクインです。


42."I wish you Roses" Kali Uchis

2023年に新しいアルバム出したのに、もう来年に新しいアルバムを出すと言う彼女の創作意欲を称えて。


43."Kandy" Fever Ray

ジャケット写真にひかれてアルバム一聴。このままファンになりましたとさ。


44."RATATA" Skrillex, Missy Elliott & Mr. Oizo

やっぱりMissyのラップは最高で最強なんですよ、ラタタッタ


45."Baby Lay Your Head Down" Aly & Aj

インディロックにシンセをアレンジするサウンドはよくあるけど、元々ポップを牙城としていた2人にかかれば、インディっぽさを無くして絶妙にゴージャスだけど質の高い曲に仕上げるのは見事です。


46."DEATH" Melanie Martinez



47."Oscar Winning Tears." RAYE

 彼女なりの21世紀のブルースを歌うために大胆なサウンド変更を行ったRAYE。Amy Winehouseよりモダンな感じがしますね。スピーチをしているかのようなストーリーテーリングが見事です。


48."For Granted" Yaeji

 今作ではより多くの人に聞いてもらおうと良い意味でオタクっぽい感じが消えたのが良かったのですが、この曲はまさにその姿勢が垣間見える一曲です。


49."Charge It" ENNY

 Little Simz同様ですがこういうオールドスクールなクラシックなラップをやってくれるラッパーが多いのがUKシーンの良いところですが、とりわけENNYはラップがその中でも特出して上手だと思っているのですが、もう少し知名度が上がればな~。


50."closure" Princess Nokia

 ラッパーでもあるPrincess Nokiaからは想像できないほどのポップさがあり、Pink Pantheressみたいな曲だが、なぜかせっかく作ったMVも削除してしまった模様。本人としては納得していないのか分からないですが、個人的には好きな曲です。


51."Hearts Wants What It Wants" Bebe Rexha

 ずっと迷いに迷い続けたサウンド遍歴を持つ彼女でしたが、『Bebe』でとうとう自分に合うサウンドを見つけた感じで良かったと思います。2023年に彼女の単独公演行きましたが、やはり新しいアルバムの曲が魅力的だなと個人的には思っていたのですが、どうしても日本の観客はEDMの方が反応が良かったのが残念でした。


52."Tropic Morning News" The National

 骨太なロックをもはや捨てたThe Nationalですが、曲単体で言えばこの曲は好き。The National (Taylor's Version)みたいな曲。


53."Worry" The Lottery Winners

 今年好きになったUKのバンド。底抜けに明るくキャッチーなサウンドが特徴的なバンドですが、ちょっと子供っぽいなと感じる部分も。


54."Weightless" Arlo Parks

 多くの人がArlo Parksにシンセは似合わないと言うけど、私は彼女のジャンルレスな感じがすごくUKのミュージシャンって感じで良いし、それこそこの姿勢が今のUSシーンにはなかなか評価されないんだよね。Arloの挑戦心を讃えてランクインだ。


55."Popular" The Weeknd, Madonna, Playboi Carti

 プロデューサーのMike Deanが仲介して実現したコラボレーションでしょう。Britney同様にわざとAI生成したような声で歌うMadonnaのスタイルは見事です。歌詞も陰謀論を茶化したかのような内容で、曲の随所に漂う余裕な態度はまさに人気アーティストの証。


56."MIND YOUR BUSINESS" will.i.am & Britney Spears

 "Scream & Shout"からまだ交流が続いていることが嬉しいが、それ以上に相変わらずBritneyのファンから不評なコラボレーションだ。ただAI生成した声のような感じで歌うBritneyはさすがで、このスタイルはAI生成が流行するよりもずっとBritneyのほうが早い。それで「自分のことに集中してろ」と何回も繰り返して歌うのだから職人の域である。


57."AMERICA HAS A PROBLEM (Remix)" Beyonce feat. Kendrick Lamar

 『RENAISSANCE』の中でもそんなに好きな曲ではなかったけど、Kendrick Lamarがリミックスに参加すればそりゃランクインですよ。


58."Karma" Taylor Swift ft. Ice Spice

 『Midnights』の中でとりわけ好きな曲ではないのだけど、これはほぼIce Spice評ですね。


59."Hot (Don't Date A Musician)" Dream Wife

 「ミュージシャンとはデートするな」と自戒を込めているのか、それとも自分たちがどれだけホットな存在なのかをフレックスしているのか。いずれにせよDream Wifeが秀でたパンクバンドなのは確かだ。


60."Psychos" Jenny Lewis

 時にはソフトロックを聞いて心を落ち着けよう。


61."Alone" Kim Petras & Nicki Minaj

 EDMみたいなダンスポップにNickiのラップがのればそれはもう2012年。Kim Petrasの恐れずダンスポップを歌う姿は称賛に値するが、いつまでもDr. Lukeと組むのはやめて欲しいな。


62."Players" Coi Leray

 リミックスの方がバズを起こしたらしいのですが、どう考えても原曲の方が良いでしょう。


63."True Babe" Gwen Stefani

 久しぶりにクリスマスソングじゃない新曲をリリースしてくれましたね。ポップなロックですが、こういう感じをNo Doubtで歌って欲しかったなと言う願いはもう通じないんだろうな。まあソロでもいいので、定期的にアルバムはリリースしてください。


64."Boyhood" The Japanese House

 前作のアルバムから新人とか思えないくらい、4年のブランクが空いてリリースされたアルバムからの一曲。The 1975のメンバーが曲作りに携わったということもありThe 1975が歌っていても違和感ないアルバムですが、そんなアルバムの中でもこの曲はThe Japanese Houseにしか出せない味がある曲だと思います。自分の夢の中を描いたカウボーイMVも良い(カウボーイは男女関係なく憧れるもんね)。


65."Slime" Marika Hackman

 実はThe Japanese Houseと意図的に近い順位にしました。The Japanese Houseがカウボーイなら、Marika Hackmanは中世の騎士です。二人とも夢の世界を表現していますが。Marikaの方がまぜか悲しい。2024年にリリースされるアルバムが楽しみですね。


66."A Child's Question, August" PJ Harvey

 アルバムごとにスタイルというか、どれくらいギターが鳴っているかが変化するPJ Harveyですが、この曲は大人しめで音数を意図的に減らしている気がしますが、実はここ数年の女性インディシーンに彼女なりに呼応しているようにも見えます。相変わらず声が良いですし、歌詞もミステリアスだけでちゃんと解釈の余地と理解しやすさを残してくれているのが嬉しいです。


67."So Hard So Hot" Alison Goldfrapp

 Kylie Minogue, Roisin Murphy, Jessie Wareに続くベテラン女性エレクトロの年でしたが、彼女もその中に入れていいと思います。境遇もサウンドも似ている事ですし、Roisin Murphyとコラボレーションして欲しいですね。


68."Vampire Empire" Big Thief

 2023年に単独公演を観た時に、ギターのチューニングまで自分たちでやる姿に大変プロ意識を感じたのですが(それゆえ一曲ごとに結構な間が空くのです…)、あんな感じで音作りに向き合っているのだと思うと。とりあえず曲後半のAdrianneの雄たけびを聞いてほしい。


69."Chemical" Post Malone

 トラップで名声を得た彼が、そのトラップが人気に陰りが出た2023年に急激な方向転換を図るためにリリースした曲。白人の彼がトラップと距離を取って身軽にロックに転換できるあたり、無自覚なのか意図的なのかその白人特権を誇示するきっかけになってしまっているような気もしますが、この曲自体はすごくキャッチーで良いと思いますね。


70."Psychedelic Switch" Carly Rae Jepsen

 "Run Away with Me"以降の批評性が高いポップソングを職人のように作り続けているCarly Rae Jepsenですが、それがとうとう辛口の批評メディアでも認められたのがこの曲。


71."Black Eye" Allie X

 この誇張された80年代サウンドに誇張されたホラーみたいなMVはもはや芸術の域。こういうシンセでダークな雰囲気は最近増えてきましたが、その中心人物が彼女であることを2024年にリリース予定のアルバムできっと示してくれるんだろうな。


72."black mirror" Noname

 2018年の『Room 25』から5年ぶりにリリースされたアルバム『Sundial』から一曲。オールドスクールなヒップホップとジャズやネオソウル組み合わせたスタイルに彼女の詩を読むようなラップスタイルは健在。


73."Fader" Roisin Murphy

 ドイツのDJ Kozeとほとんど二人で制作されたアルバム『Hit Parade』から一曲。故郷で撮影されたMVが示しているように歌詞にも感傷的な部分も感じられるが、それでもダンサブルな感じは見事です。


74."Dumbest girl alive" 100 gecs

 2023年のフジロックに出演したきっかけで好きになったバンドです。派手なロックにハイパーポップ的なテイストもあって初見で聞いたときは驚かされました。


75."TUYA" ROSALIA

 通夜のことではなく、英語でYOURS(あなたのもの)という意味です。わざわざ日本ロケを敢行してまでの気合入ったMV。ROSALIAの曲はアップテンポの曲も良いですが、こういうしっとりとした曲も魅力的です。


76."Everything Is Boring" The Beaches

 カナダのバンドで2023年のコーチェラに出演していたのがきっかけで好きになりました。私がバンドに求めるのってやはり分かりやすいキャッチーな派手なサウンドなので自然とこういう曲が好きになってしまいます。


77."Evangeline" Stephen Sanchez

 "Until I Found You"きっかけで彼を知りました。1940~50年代なレトロを追求する姿に男性版Amy Winohouseを重ねながらも、少しロックなテイストもあるので、これからどっちに行くのか楽しみですね。


78."NOTHING LASTS FOREVER" SEVDALIZA ft. GRIMES

 AIを使った珍MVに目を奪われますが、Grimesとコラボレーションしたことで底抜けに変態的なビートにどうしても心奪われますね。


79."HONEY (ARE U COMING?) Maneskin

 今にして思えば2022年のサマソニで彼らのステージを観れたのはとても貴重な体験でしたね。そこからウナギ登りで日本で人気が出ましたからね、こういうバンドの存在は貴重です。悲しいことにそんな彼らをアメリカが冷遇しているのが勿体ない気がします。


80."We Can Be Anything" Baby Queen

 You Tubeのオススメで"Dover Beach"を聞いて以来熱心におっかけていますが、この曲にもあるようにドリームポップをもっと分かりやすく解釈して曲作りをしているのは見事だと思います。日本で知られていないのが勿体ないくらい、紹介されれば人気出そうなんですけどね。

 

81."Dippin My Feet" Rick Astley

 私がベテランの男性ミュージシャンを熱心に追っかけていること自体が珍しいのですが、やはりRick Astleyは私のアイドルですからね、ついつい聞いてしまいます。また『50』をリリースしてから、実は第2の春を迎えているのではないかと思うくらい熱心に地道にハイペースで活躍しているのが彼です。ソウルやロックをベースにしていますが、やはり先行シングルは聴きやすいポップを選択してくれる辺りはさすがです。なんだかんだ言っても80年代のアーティストで一番1曲だけですが、再生回数が多いのは彼ですからね。その辺は侮辱を越えて、自信を持っていいと思います。


82."Enough For Love" Kelela

 2023年の黒人女性エレクトロの快進撃は批評面では彼女から始まったような気がします。せっかくいい曲なのにあまりセールスで健闘していないのが勿体ない。


83."WHAT A MAN" DEBBY FRIDAY

 今年は黒人女性エレクトロの年でしたが、DEBBY FRIDAYもその中心的な人物だと思います。骨太なビートにアルテミジア・ジェンティレスキの絵画を意識したMVは見事です。


84."Bubblegum" Dawn Richard

 このサウンドでこのMVだとどうしても思い出すのはMissy Elliottです。


85."I Won't Tell" Baby Rose feat. Smino

 Pitchforkのレビューで知ったBaby Rose。2022年は黒人女性R&Bの快進撃が目立つ年でしたが、彼女は流されず2023年にアルバムをリリース。心地よいリズムにBaby RoseとSminoがのせてくれる歌声が見事です。


86."Chosen to Deserve" Wednesday

 インディロックレーベルの老舗から満を持してデビューしたバンドであるWednesdayから一曲選びました。来年の3月の来日公演が楽しみです。


87."Miami" Caroline Rose

 前作はシンセサウンドでしたが、ここに来てインディロックに回帰。少しアンビエントな感じも見受けられる。


88."The Tree" Maren Morris

 保守的なカントリー界と批判し、そんな古巣を抜け出す決別を宣言したのがこの曲。もともとカントリーが下地にあるMarenだけに大きな挑戦だと思いますが、ブレずに自分を貫き女性とクィアと有色人種のために立ち上がることを宣言した彼女を全力で応援したい。


89."Lose You" Bully feat. Soccer Mommy

 USインディシーンを代表する女性同士のコラボレーション。Soccer Mommyと組んだことで擦れたギターが鳴り響く明るい感じになっているのはすごく良い変化だと思う。


90."Lifetime" Faye Webster

 ひしめくインディ界でひと際の個性があるのがやはり私は好きなのですが、Feyeはしっかりとその個性があるアーティストです、壮大なオーケストラをバックに鳴らすインディロックは相変わらず良いです。


91."Back On 74" Jungle

 こちらもTik Tokでバズを起こしたダンスビデオのおかげでヒットしていますが、それ以前に真摯にあの時代を蘇らせたサウンド作りを褒めたいですね。


92."Borderline" Tove Lo

 エレクトロでセクシーでキャッチーだとどうしてもTove Loの存在は無視できないというか、2010年代から彼女だけ抜きんでている。


93."You Make Me Sick!" Ashnikko

 悪趣味を貫く彼女を讃えたいという意味でも選びました。ただこの感じだとMelanie Matinezのほうがポップで聞きやすいんだけど、Ashnikkoももっとポップでいいよ。


94."Falling or flying" Jorja Smith

 実はアルバムを発売するごとにサウンドが変化するJorjaですが、本作ではエレクトロを選択したようですが、しっかり売れ線であるR&Bテイストになっていて聞きやすい。


95."Motorbike" Poppy

 コンセプトがもろにROSALIA感があるのですが、きっとPoppyのことだから着想元がROSALIAと同じだけだろう。キャッチーなサウンドは見事。


96."Pet Rock" L'Rain

 2023年は黒人女性のエレクトロが非常に盛り上がった一年ですが、彼女の存在はそれを代表する者でしょうね。それなのに全くセールスで健闘していないのは残念だ。


97."Good Time" Alex Lahey

 Troye Sivanのところでオーストラリアはゲイ国家だと書きましたが、Alexもそれを証明する1人でしょうね。Alexの場合はインディでかつロックですが。オーストラリアの音楽シーンの幅広さを感じると共に、インディシーンが活発であるこことが分かります。面白いことに次に紹介するClaudとほぼ同じタイトルですね。


98."A Good Thing" Claud

 Phoebe Bridgersのレーベルの秘蔵っ子的な存在であるClaud。Bedroom Popとジャンル分けされがちですが、この曲を聞いて分かるようにかClaudは正々堂々のロックです。


99."Summer Glass" Julie Byrne

 各メディアで絶賛されたJulie Bryneの新作から一曲。もともとフォークだったJulieですが、この曲ではフォークにアンビエントの要素を足してよりスピリチュアルな世界を追求しています。初見ではあまりピンとこなかったのですが、年末に聞いていたらとても良い曲であることに気付かされました。


100."It Must Change" ANOHNI and the Johnsons

 ANOHNIも大胆にサウンド変化を起こしたアーティストの1人だ。もともと包容力ある歌声なので、それに溶け込んだソウルを選択したのは賢明だ。


と長々とお付き合いいただきありがとうございました。

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