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人生に乾杯 34(Ryan Anthonyさん)

米国でCancerBlowsを主宰していたトランペットプレイヤーRyan Anthonyさんが、昨年6月23日に亡くなっていた。Multpile Myeloma(多発性骨髄腫)という血液のがんだった。 彼が亡くなったことを僕は昨日初めて知った。

2018年のCancerBlowsでRyanさんが「You'll never walk alone」を綺麗なメロディで奏でていたのを、僕が退院した昨年にYouTubeで知った。その時は、まだ元気そうで彼が主宰者とは思いもしなかったし、自分もあんな風に吹けたらいいな、くらいに思っていた。

一方、多分今年撮っただろうYouTubeで、Ryanさんへの応援と医療従事者への感謝を込めた「A Hope for the Future」の演奏を見ると、コロナ禍で世界各地を結んだラッパ吹きが同じメロディを奏でていた。次々と切り替わる画面の中に1人、病室からラッパを吹いている(はずの)Ryanだけが、体に入る管があまりに痛々しく映っていた。髪の量、顔の皺や体の浮腫み、声の張り、全てが闘病8年の最後に急変したことを物語っていた。Wikiを見る。彼のFacebookを見る。FBには病室からものを含めて何十枚の写真が収納され、今もアップされている。

A Hope for the FutureにはWayne Bergeron 、エリック宮城ら世界30人以上の奏者が同じメロディを吹いていた。中にはRyanさんのFBに載った顔と同じ奏者もいた。

YouTubeビデオの最後、病室のベッドに座るRyanさんが語りかける。音楽への謝辞に触れた後、「自分は音楽と共にあることを誇りに思う」(I am honored to be a part of this)とコメント、そして、画像のスイッチを切る仕草でスクリーンに右手を伸ばした。そこで終わり。僕より2歳年下、1969年5月17日生まれだった。

余りの変わりようだった。

この8年、どんな思いで生きてきたのだろう。苦しくなかったはずはない。が、画面で見る限り生き生きしていたし、明るかった。自身を公開するという意味では彼は僕と同じだが、彼ほど誇れるものが自分にあるのか、家族に伝えるものがあるのか、今はまだ探している。それでも明るく、前を向いて生きよう。彼のためにも。

(写真はCancerBlowsのロゴが入るトランペットバッグ。 RyanさんのFBに載っていたのを拝借した。続く。)