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人生に乾杯 32(4泊5日入院記、その3ー命を紡ぐ)

田部井医師は素晴らしい人格者だと気づく場面が、入院中にあった。

田部井先生がアレイを貼り付けてくれたその翌日夜のこと。日記から引用させていただく。

「この夜8時ごろ、突然回診にやって来る。あのニコニコした顔で『ちょっと教育的なことにお手伝いいただければ』と、何やら企んでいる風。9階(自分の部屋は8階)に連れて行かれ、ナースステーションで『これがノボTTF(Optune)です。いつも講演や学会で話すことはあっても、入院患者さんを診ている皆さんは機会もなかろうと思って、佐藤さんにきてもらいました』と。あー、そういうことか。この人、やっぱり凄い。」

ナースステーションには当時、当直の看護師10人以上がミーティングをしている最中だった。20個以上の眼差しが一斉にこちらを向いた瞬間に、連れて行かれた僕はドキッとした。が、すぐに気を取り直し、目の前の1人に、弁当箱と自分で呼んでいるバッテリーを「持ってみます?」と、付属のストラップごと差し出してみた。「あ、結構重いんですね」という反応が返ってきた。そう、バッテリーは重いのだ。別の機会になるが、ノボキュアの技術者で毎月自宅や病院まで足を運んでくれる方ですら、「携帯電話くらいの大きさになったらいいのにと思いますよ。改良は日々続けてるみたいですけど、私たちは何も知らされないんです」と不安げだった。恐らく、ノボキュア社は医療機器としてのOptuneを独占しているので、機密漏洩を気にしているのだろう。

で、田部井先生。アレイの張り替えを自分から申し出てみたり、僕が自宅から病院に電話しても、(おそらく病院のプロトコルに反して)折り返し掛けてくるのは本人だったりと、とにかく患者に寄り添う姿勢が満載。命を紡ぐという姿勢が、滲み出ている。

それに触発された訳でもないのだが、退院した翌週の26日月曜日、写真展「照らす」に行ってきた(写真)。NPO法人Dialog for People( #D4P )の安田菜津紀さん、佐藤慧さんの主催だった。この日のTwitterに、僕はこう書いた。

「行かないといのちが続かないような気がして最終日の今日行ってきました。命を紡ぐことが如何に難しいか、身をもって体験した昨年。写真展でも一枚いちまいからそれが伝わりました。」

(続く。)