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色覚異常を持つお子さんがいる保護者の方へ

※色覚異常(色弱・色盲・色覚多様性)の見え方・度合は個人差があります。
このnoteは、あくまで私個人の見え方・見解であり、全ての色覚異常を持つ人の意見を代弁するものではありません。
また、この記事の内容は重度色覚異常や全色盲には対応していません。ご了承の上ご覧ください。

はじめに

私は赤緑色覚異常を持つ女性です。
このnoteを書くに至った経緯を簡単にですが説明させてください。
私が小学生の頃に色覚異常がわかり、診断された眼科の帰りに母が落ち込んでいた姿が今でも記憶に焼き付いています。

「私は全然困っていないのに、お母さんが悲しんでいる」

10歳だった私には母の様子がとても不思議に見えました。
だけれども、私も今年母となり、あの日の母の気持ちが少しだけわかりました。
色覚異常は遺伝性の障害です。色覚異常の私と、色覚異常の夫との間に生まれた娘もまた、色覚異常を持っています。
母であること、当事者であること。双方の立場から、保護者のみなさんの不安な気持ちが解消できればいいなと筆を執った次第です。

色覚異常を持つ旦那さんがいる方へ

もしかしたらこちらをご覧の方の中には、色覚異常の旦那さんをお持ちで子供を持つことに不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
男性側が色覚異常を持ち、女性側が保因者でない場合は男の子が色覚異常を持って生まれることはありませんが、女の子の場合は保因者となります。
保因者の女性から生まれる男の子は、1/2の確率で色覚異常を持って生まれます。
もし女性側が保因者でなければ子世代での色覚異常の発現はありませんが、孫世代では色覚異常が発現する可能性があります。

保因者のパートナー男性が色覚異常かでも変わります

※保因者とは、色覚異常の遺伝子を持っているが発現していない女性のこと。色覚に異常はない。

もし、色覚異常の旦那さんをお持ちで遺伝が心配な方にも、ぜひこのnoteを読んでいただきたいです。

色覚異常はなぜ困っていないように見えるのか

当事者である私と母の反応のギャップは「困っていない私」と「(自分は見えているのに)自分の遺伝的要因で我が子が障害を持ってしまった」という両者の認識の差異が激しすぎるところにあると考えています。

ではなぜ当事者は困っていないのにもかかわらず、保護者が深刻に受け止めるのでしょうか?

お子さんのふとした行動や発言に、ぎょっとしたことはありませんか?
例えば、お絵描きをしていて赤で塗るような場面において茶色を塗っていた。学校指定の白靴下があるのに、薄いピンクの靴下を履いて登校した…

「なんでその色とその色が同じに見えるの?」とビックリすることでしょう。
「こんなに違った色に見えるなら、とても苦労するのではないか?」と不安になるでしょう。
見当違いな色を連発されるたびに、より深刻に受け止めてしまう人も多いはずです。

あまりびっくりしないでほしい

しかし「この色がその色に見えるの!?」とびっくりされると「普通に見えてる人が見てる世界ってそんなに綺麗なの?」とガッカリしてしまいます(私個人の意見です)。
私が見えている世界も十分綺麗です。なぜなら、普通に見えている人が見てる世界と比較しようがないからです。

比較できないからこそ、間違いを指摘されたり失敗した体験以外で困ることはないのです。
今見ている色いちいち全てを確認しません。どの色の認識が合っていて、どの色が間違って見えているのか、答え合わせをするまではわからないままなのです。

色覚異常で困ること

困ることの例(赤緑色覚異常の私の場合)

  • 資格・職業が制限されることがある(全色覚異常共通)

  • お肉の焼き加減がわからない

  • 色で指定されても自信がない

  • 人の顔色がわからない

  • 育児始まってから→子供のうんちの色や皮膚の赤みがわからない

  • お絵描きしても変な色を塗ってしまう(人間の肌に黄緑を塗りたくる等)

  • お化粧が難しい(特にコスメ選びやチーク)

  • 夜間の点滅信号が何色かわからない

  • 店頭での服選び(タグを見て解決)

  • お花見&紅葉狩りが全然綺麗に見えない

  • テレビやら電化製品の電源の光がわからない etc…

保護者、そして本人にとってとても気がかりなことは「資格・職業が制限されること」でしょうか。
主に医療、交通(航空や航海)、警察、消防あたりでしょうか。
こればかりは本当に困りますが、誰にも罪はありません。

昔と比べれば色覚異常の制限もゆるくはなってきています。が、無事その職業に就けたとしても他の人と同じパフォーマンスができるわけではありません。
こればかりは医学の進歩を願うほかありません。

この令和の時代に性別でものを語るのもナンセンスですが、今のところは男性の色覚異常よりも女性の色覚異常の方が困ることが多いです。
主に料理、化粧、子育てにおいて…ですね。
しかしきっと、今の子ども世代が大人になったときはジェンダーロールの境界がなくなっているかもしれないので、女性特有の悩みではなく色覚異常全体の悩みになっているかもしれませんね。

色覚異常の子どもにしてあげられること

職業選択以外のことならば、周囲の人によってフォロー可能です。大事なことは、小さいうちから「どんな場面で、何色っぽい色が出てきたときに困るのか」を本人に刷り込んでおくことです。
先述した通り、本人たちは答え合わせをしない限り「間違った」という自覚を持てません。ひとつの世界しか見ることができないため何が正解かわからず、トライ&エラーでしか自分の苦手な場面・色を自覚できないのです。

  • 苦手な色、何色と何色を混同しがちなのかを把握する

  • あらゆるものの一般的な色のイメージを結び付けさせる

苦手な色、何色と何色を混同しがちなのかを把握する

これはなるべく早いうちに周囲の人が把握してくれると生きやすさが変わります。
私の場合は母、弟(どちらも正常色覚)がこの役割を担ってくれていました。

例えば、
薄いピンク⇆薄い灰色⇆薄い水色
黄色⇆黄緑
赤⇆茶色
深緑⇆黒⇆茶色
ベージュ⇆黄緑⇆薄い茶色
赤⇆紫⇆青 etc…
なのですが、私の今までの間違いから母と弟は「この色は間違えやすい色だな」と把握し、私に何色に見えるか尋ねてくれます。
これを繰り返すことによって母と弟の中で私の間違いやすい色の精度がどんどん上がるため、さまざまな場面で適切なフォローをしてくれています。

具体的には
①色では指定せず、場所で指定する
「左から2番目の本を取って」とかです。
これは周囲の人間だけでなく、本人にも役立ちます。私はよく学校や職場で色で指定してしまい「え?」とその場の空気が微妙になり、取り繕うように色弱の説明をするのが苦痛でした。

②苦手な色のものを手に取ったときは確認してあげる
服を選ぶときなど「あれ?この服の色って好みだっけ?」と思ったときは確認してもらえると、認識が合っていたとしても本人の中でも「この色は他の〇〇と間違えやすいんだな」と「間違えやすい色リスト」として引き出しを作っておけます。

上記2つを心がけるだけで、長期的に本人が苦労する機会が減っていくと思います。

あらゆるものの一般的な色のイメージを結び付けさせる

「草は緑」「海は青」と言ったように、神羅万象と結びつく色の引き出しを作ってあげましょう。
もちろん色のない概念はその限りではありません。
複数の色を結び付けてあげてもいいです。
「猫ちゃんは白、灰色、茶色、黒、茶白灰白と黒のトラ、茶黒白の三毛」そして「黄色や赤、青の猫ちゃんはいないよ」と、「ありえない色」も引き出しに入れてあげてください。
「コカコーラの自動販売機は赤だよ」「(景観条例でもない限り)緑のコカコーラの自販機はない」こんな感じです。

どうしてその作業が重要かというと「色の推理」が可能になるからです。
私たちにとっては自分が見えている世界が全てなので、どこでエラーが出ているのか確認しようがありません。
なので自分には見えていないけれど、他の人からは見えているであろう色を推理する作業が重要になります

ついこの間遭遇した場面の具体例を挙げてみます。
自治体で開かれる娘の定期健診にて
「娘さんの図書館貸出カードを作りませんか?」
ゆくゆくは娘と図書館で絵本を借りて一緒に読むのが夢だったので、作っていただくことにしました。
「今ならお好きな色のリボンをお選びいただけます」
しかしそこにあるのは濃げ茶色?緑?赤?紫?ピンク?全て苦手な色でした。指差しだと不自然になってしまうし、色で指定しなければならず急いで推理を始めます。
この際色を間違わなければどれだっていい、赤ちゃんの図書カードにつけそうな色ってなんだろう?多分このバリエーションなら青と赤は用意されているに違いない。
この茶色?緑?と思しきリボンは赤の可能性が高い。なぜなら赤ちゃんにプレゼントするものにメジャーな色を押しのけて微妙な色を使わないはずだから…
「赤でお願いします」
「はい、赤ですね」
差し出されたのはやはりこげ茶色?濃い緑?(に見える)リボンがついた図書カードでした。
本当は水色に見えるものがほしかったのですが、ピンクだったら恥ずかしいので絶対に用意されているだろう赤にしました(私には水色に見えるからピンクでもいいけど)。

回りくどい例になりましたが、「自分の苦手な色の把握、その色は実際何色の可能性があるのかという選択肢」「一般的なものの色の知識」を身につけると、その場でわざわざ色弱の説明をしたり、タブーな話題だと思われて気を使われてしまい気まずくなる経験が少なくなります。

落ち込む保護者に伝えたいこと

私は無責任に「きっと大丈夫ですよ、あまり落ち込まないで」と言うつもりはありません。お子さんが色覚異常で何かを諦めたり、苦労したり、嫌な思いをすることもあるかもしれません。お子さんがどんな経験をするのかは私にはわかりません。

しかしなぜこのnoteを書いているのか…
私は自分の色覚異常とは何かを知るために、中学生の頃から調べてきました。
その中では、子どもの色覚異常が発覚したばかりでショックを受けている方や、色覚異常によって子どもがこの先不利益を受けるのではないか、何をしてあげられるのかと同じ悩みを抱える保護者のコミュニティが形成されていました。
保因者のお母さんの「自分は見えているのに」「自分のせいで」と自責してしまう気持ちは親になった今わかるようになりましたが、それでも私の色覚異常がわかった日に悲しんでいた母の姿は私の望むものではありませんでした。

程度の差はありますが、色覚異常なりに自分の見え方に合わせた対処をしていけば日常生活において困ることはほとんどなくなります。
(焼肉は焦げ目がつくまで焼く、お肉は細かく切って中まで火が通る時間の感覚をつかむ、信号機は光っている場所で覚える…など)

私は母親が悲観する姿を見て「私はもしかしたらかわいそうなのかもしれない」と、当時はあまり困っていなかったのにかわいそうがられてつらかったです(個人の主観です)。
月並みですが、最近では「色覚多様性」との言葉もできたことですし、困りそうなことは先回りして対策を打った上で、そのお子さんにしか見えない自分だけの世界を尊重してあげてほしいな、と思います。

この記事はどんどん追記していく予定です。
疑問点があればどんなことでもかまいませんのでコメントしていただければと思います。

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