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作業道の冬

 DOMです。
    一年のうちでどの季節が好きかと聞かれると、季節の変わり目が好きだと答えます。南から暖かい空気がやってきて冷たい空気とぶつかり、春の嵐が長い冬の終わりを告げました。雷で大気が震え、暖かい雨でしぶとい残雪もいよいよ溶けました。

 今年の冬は本当によく雪が降り、零下5度を下回る日々が続きました。積雪と冷え込みが作業道づくりの大きな障害であることを思い知らされました。積雪中に作業道を延長しようとしても、少なからず雪が土と混ざって転圧されてしまい、時間を経て融雪し、じわじわと泥濘となります。積雪中に道は触らないというのが基本であり、冬が来るまでに道を仕上げる、冬までに仕上らないような仕事を計画しないというのがシンプルな解決方法です。

 冷え込みはもっと大きな問題かもしれません。我々の師匠は「凍て」と呼びますが、作業道の山側、切り取った面にびっしりと霜柱が立ち、霜柱によって持ち上げた細かな土が融氷と同時に路上に落ちます。日々、少しずつ、パラパラと土が削られて道の山側に蓄積していきます。冷え込む日が長く続くとこの凍てによる崩壊土が道の幅員を著しく狭めるという問題を起こします。しかしこれは「凍て」の本質的な問題ではないかもしれません。地中の水分が氷結して膨張するときの力は強く、土を持ち上げるにとどまらずに細かい岩の層を剥離する様子を見て取れました。細かい岩の崩壊が大きな岩の崩壊に繋がりました。ヘアピン部分は山側の切り取りが高くならざると得ませんが、ヘアピンをつくりやすい尾根部では岩の層にあたることが多く、高く切取った岩の面が大きく崩れ通行不能状態を引き起こします。

 崩壊を防ぐために山側を補強する手段としては裏積工法があり、木組みによって法面を作ります。これはそれなりに手間がかかるので崩壊しやすい場所に限って用いる手段だと思いますが、「凍て」はすべての場所に発生します。岩の層が露出する場所は、そもそも木組みのために掘るということができないので裏積工法は使えません。よく一般道路では山側法面にモルタルが吹き付けられていますが、技術的には解決しそうなものの、自伐型としてはコストの問題を避けられません。ここでやはり、山側直切が安定するのは140cmまでという初心にかえることになります。基本的にこの基準を超えないようなルート設計をすること、超える場合は補強手段のコストと作業時間を計上すること、施工後のメンテナンスを前提とすること、これらが長期的に使える作業道づくりに欠かせないと思います。

 作業道を崩す一番の要因は流水だと思っていましたが、「凍て」の力にも目をみはるものがありました。不自然な人工物が時間をかけて自然な状態にかえるのは当たり前のこと。なるべく自然に則したものを作れば持続するという理念を忘れないようにしたいと思います。


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