児童相談所63日目。「落ち着くことのない心」
とにかく暴れた。感情をうまく言葉で表現できなかったり、うまく抑えることができないからこその奇声や問題行動。
なにかを殴りつけることで溜まったストレスを吐き出すために、僕のお腹を何発も殴った。少し手加減しているのがわかったから悪意に満ちたものではないのはわかるけど、高学年男子のパンチはおじさんの曖昧に鍛えている腹筋だと防御も怪しい。
彼の奇声や暴行に対して、力や権力でねじ伏せることは余計に彼のストレスを抑圧させてしまうような気がする。だからこそ
取り合わない
を決める。心を「無」にして、耳を吹き抜けにして、ただただあるがままの彼を受け止めてみる。未熟であるが故に、自分の快空間を乱されることに時折苛立ちが僕の心の中で覗くんだけど、もっともっと自分自身を釣り上げて、超客観視しながら時を耐える。
外向きに放たれた彼の行き場のない苛立ちは、反響がなければ意味をなさない。「なにもしない」を貫けば何事もなかったような時間が来るんだけど、「なにもしない」ことほど難しいものはない。
奇声は近所の目が気になるし、眠ろうとしている別の保護児童を起こすし、暴力は物が壊れたり彼自身の怪我を招く可能性がある。
「なにかする」と「なにもしない」の出し入れが、こんな時もっと上手だったならと思う。
1時間ほどして彼は落ち着いた。心の思うままに時間が過ぎれば彼も納得する。いや、彼の心が納得する。ただ、乱れた心はうまく落ち着くことが出来ず、夜の部屋からは泣き声が聞こえた。
どうしたらいいんだろう…。
彼の人生に僕は責任は持てない。人生をかけて彼を変えようなんてできるほど立派な人間じゃない。施そうなんて思わない。ただ、どこにも落ち着くところがない彼の心を思うと、なんだか居た堪れない気持ちになる。
もしかしたら、63回ここで過ごした中で一番苦しい気がする。
なんでもいいから、彼の落ち着くなにかが見つかればいいなって思う。
いつも読んでくださりありがとうございます。いろんなフィードバックがあって初めて自分と向き合える。自分を確認できる。 サポートしていただくことでさらに向き合えることができることに感謝です。