ごくうが行く:高齢男性が自転車を押してくる

ごくうは散歩コースを自ら選択する。団地から出て、坂を下ってゆくコースか、坂を上がって行くコースか。隔日で散歩コースが分かれているところを見ると、気分次第ではなさそうだ。

坂を上がっていくコースの先には中学校がある。歩道はあるが、片側にしかなく、道幅も1メートルあるかどうか。ひと2人がようやくすれ違える。歩道で出会った人たちは互いに譲りながら歩いて行く。

ごくうは急くように道を上がっていく。お決まりのマーキング箇所にはよく立ち寄る。20数メートル登ったところで、上から自転車を押す高齢の男性が下ってくる。自転車には前の籠と後ろの籠に荷物が沢山積まれている。高齢と言っても、定年を向かえて間もないはずだ。

ごくうと自転車を押してくる男性に道を譲るために家の庭先に身を寄せる。数軒の家が建ち並ぶ道がある。その道で自転車を押す男性が過ぎ去るのを待つ。自転車の前後の荷物台には紙おむつなど介護用品が積まれている。その男性を数ヶ月前に見たことを思いだした。

中学校からしばらく歩けば、国道を挟んでドラッグストアがある。先日、店舗が入れ替わった。ドラッグストアの売り出しで買ったのかもしれない。

男性は慎重に自転車を押しながら、軽く会釈して坂を下っていく。

ごくうは先に行こうとする。男性の運ぶ荷物が重いとは思わないが、家には介護を待つ人がいるのだろうと思いながら、ごくうのリードを緩める距離まで歩を進めた。