ごくうが行く:新築の家に引っ越す人の挨拶を受けた

さくら(先代犬)の晩年、いつもの散歩道に新築の家が建ち始めた。みるみるうちに新築の家が建ち、引っ越しの日に遭遇した。引っ越しを終えた奥さんがちょうどさくらの散歩時に庭に出ていた。

「今度引っ越してきました。」

何の縁もないが、挨拶を受けて、返す。

「こちらこそ。散歩なんですよ。」

奥さんはさくらを見て、

「いいですね。」

庭で、ご主人も何やら作業しており、5才くらいの男の子と3才くらいの女の子も何やら立ち回っている。

軽い会釈を返して、散歩を続ける。

さくらは散歩でその家の前を通る。引っ越しの挨拶を受けたが、それからしばらくは出会うことがなかった。2,3度車が庭に入っていったが、庭先に着いたときには、家の中にすでに入った後だった。

ごくうが来た。ごくうは自分で散歩ルートを選択する。2つのルートはあるが、ごくうは空間認識ができているのか、変則的に組み合わせる。ごくうが引っ越しの挨拶をした家の側を通っていった。そのとき、中学生の男の子が家の前で苛立ったようにドアを叩いている。締め出しを食ったらしい。

その男の子は下校中によく出会っていた。いつもグループで下校している。そのグループはごくうに関心を示さない。ごくうも寄って行こうとはしない。

しばらくして、その家の近くの細い辻(四叉路:シサロ;あまり使われない)の辺りで中学1年生と思われる(当時は学年によってカバンの色の移行期)女の子と出会った。女の子はごくうを見つけると、

「かわいい。」

といって近づいてきた。ごくうも女の子に躙り寄っていく。しばらく可愛がって貰い、分かれて帰って行った。

出会い出すとよく出会う。今度は家の前の辻で出会った。女の子はごくうを撫でて家に帰って行く。

2,3日後、ごくうは逆向きに歩いて行く。お大師堂を過ぎ、歩道を歩いていると、中学生の女の子が小走りに走ってくる。

「市の体育館で課外活動が・・・」

話しかけながら急ぎ足で去っていく。ごくうは何事もないかのように歩いて行く。すぐ下校時のグループに出会ったが、口々に「かわいいね。」と言いながら歩き去って行く。

出会い出すと、よく出会う。お大師堂から帰っていると、また女の子が逆向きに小走りで歩いてきた。

「間に合わなくなる。」

話しかけながら、ごくうをチラリと見て、過ぎ去っていく。次のグループも急ぎ足で歩き去って行く。ごくうを可愛がる暇もないらしく、急ぎ足で歩き去って行く。

散歩時間と同期しなくなったのか、お大師堂コースで中学生と出会わなくなった。

学期末に、家の横を通るとき、男の子と出会った。面倒くさそうに思うのか、さっさと家に帰っていく。もうすぐ高校生になる。

ごくうの散歩コースが別の団地に向かうコースに変わって来ていた。しかし、時に前のコースをなぞることがある。新学期になり、団地へに入り口は新築の家(もう5年が経っている)への辻に向かうとき、家に帰る中学生の女の子に出会った。ごくうを見て、「かわいい。」と呟く。もう中学2年生になっているはずだ。

1年生の子供らしい雰囲気がすっかり消え、少女らしさが前面に出ている。すっかり変化した中学生の横を黙々と歩き、団地へ向かって歩いて行く。さくらが散歩しているとき、新築引っ越しの挨拶を受けたが、あの時の兄弟はすっかり大きくなり、男の子は高校生に、女の子は女子へと変わっていた。