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ごくうが行く:噂をすれば、

昨日、

「最近、ジェームス君を見ないねー」

「そういえば、ビビちゃんも」

ビビちゃんはパピヨンで、アーモンドアイで、尾もふさふさ。

ごくうは上のコースを選択した。中学校の運動場の角を曲がり、旧山陽道に出る。角を曲がったところで、白いワンちゃんが見えた。

「あっ、ビビちゃん」

ビビちゃんが近づいてくる。ごくうも近づいていく。

「昨日、最近、ビビちゃんに出会わないねーと話していたんですよ」

ビビちゃんのパパは

「そうなんですか。ビビは元気ですよー」

ごくうを可愛がりながら、ビビちゃんは妻に可愛がって貰う。

「ごくうちゃんもアーモンドアイね」

ビビちゃんのママが言っていた言葉を思い出す。

一通り可愛がられると、ごくうは散歩に戻る。ごくうはいつも路地裏に行こうとする。その手前の角地に家がある。その家では、小型犬を2頭飼っている。ごくうがその家に近づいたとき、ちょうど奥さんが車で帰ってきた。

奥さんはごくうに2度程出会い、可愛がってくれた。思い出したように、奥さんはごくうを可愛がる。見ると、左手にコルセットをしている。

「あれ、どうされたんですか。妻も右手が打ち身で使えないんです。」

左手の親指を骨折したそうだ。

「ボルトを3本も埋め込んだんですよ。」

もうだいぶ癒えているようだ。奥さんは妻の右手を見て、

「家事をしてあげなければなりませんね」

「ええ」

相づちのように応える。

右手と左手の違いはあるが、よくも同じように手を痛めていることに互いに慰め合う。

「お大事に」

「ありがとうございます」

ごくうも可愛がられるのに満足し、散歩に戻る。

ナンパチワワのさくらちゃんの家を過ぎた辺りで、ルイ君に出会った。ルイ君は毛を刈って貰ったようだ。

「だいぶ、よくなられているようですね」

妻の右手を見ながらお見舞いしてくれる。

ごくうは可愛がって貰うと、さっさと散歩に戻る。

交差点で、妻は帰宅するという。ごくうが信号を渡ろうとすると、挨拶しない高齢の女性が通り過ぎていく。

ごくうはできるだけ距離を伸ばそうとするが、もうすでに暗い。ごくうも諦めて明るい方に回りながら散歩する。迷った末に、帰路についた。

と思ったら、暗いのではっきりしなかったが、前から黒いトイプードルのモコちゃんだ。ごくうはモコちゃんが嫌いではない。しかし、モコちゃんはごくうに軽く吠える。ごくうは自分より小さい犬なので、平気だ。戯れるように吠えられて、ごくうはモコちゃんと別れた後、素直に家路についた。

今夜は雲っている。でも、ごくうは意気揚々だ。足を洗った後、ガムが待っている。ジェームス君のことが気に掛かる。