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さちの七不思議・小志郎の七不思議①

小志郎が就職して2年が過ぎた。
同僚がリクルート服を着た列を見つけて小志郎に話しかける。
「新人の入ってくる季節だ」
小志郎は歩きながら同僚に。
「この会社に入る女子は厳しい人が多いよ」
「何求めてんだ、お前は、悪ガキのくせに」
同僚は小志郎の過去を知っていた。小志郎は女の子が苦手なくせに、つい、悪戯する。

学生時代、小志郎は友人と「六甲山のROKKO森の音ミュ-ジアム」に出かけた。玄関を入るとき、黒く長い髪の女性と一緒になった。白い服を身につけている。友人は目を瞠った。

小志郎も注目したが、小志郎は雪女のような女性は好きだったが、優雅な女性は苦手だった。悪戯するのも憚れる。小志郎は友人の後を付いて行かざるを得ない。

公園に入ると、池の周りを周回する道がある。幅は1メートル位しかない。自然と二人は白服の女性の後を追うように遊歩する。しばらく追歩していたが、池を回り込むとき、友人は白服の女性の横顔を見ようとしたのか、気配を察した白服の女性が振り返った。

狼狽える友人、小志郎は軽く会釈する。女性は嫌悪感を抱いていず、「どうぞ、お先に」
友人は「あ、はい」と応じ、小志郎を促す。もう急ぎ足しかない。友人と小志郎は散歩も見学もそこそこに走り足のように周回する。

「あれ、若いよな」
友人は気後れしていたようだが、白服の女性の若さに驚いていた。「20才くらいだろうか」独り言のように自分を納得させようとする。
「あれは地元が近いな」
小志郎は聞くとはなしに聞いている。

もう夕方が迫りだした。小志郎は友人とバスの時刻表を確認した。しばらく間がありそうだ。公園のベンチで、思い出しながら先ほどの女性の話に触れている。「かわいいな」「いや、キレイだな」友人は思いつくまま感想を述べている。

白服の女性が出て来た。駐車場側のベンチに座っている二人を見つけた。
「先ほどはごめんなさい」「うっとうしかったから」
二人を急かしたことが気に掛かったのか、謝ってきた。
「どこに帰るの」
白服の女性は自分達よりも若いはずなのに、尊大ともいえないが、気が太そうだ。
「ロープウエイで・・・」
言いかけたとき、「乗っていく?」
促してきた。

駐車場に着いてみると、真っ赤なセダンだ。スポーツタイプ。友人は小志郎に助手席に乗るように促した。

確かに颯爽とする走りだ。小志郎の手足が緊張する。(もっと優しい運転ができないのか)小志郎は心の中で叫んでいた。

六甲駅で降ろされた。白服の女性は車中で色々話したが、二人の耳には残っていない。走り去る真っ赤な車を見送るしかできない。

彼女は同じ大学だった。キャンパスで3回出会ったが、軽い会釈を交わすだけだった。

小志郎と同僚の勤める会社は元々は大阪が本社だった。本社移転で東京になった。大阪で就職し、東京に勤務する人も多い。二人はリクルート姿の列の中に白服の女性を見つけた。

---続