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さちの七不思議・小志郎の七不思議②

*大した仕掛けがあるわけではありません。

小志郎と同僚の勤める会社は元々は大阪が本社だった。本社移転で東京になった。大阪で就職し、東京に勤務する人も多い。二人はリクルート姿の列の中に女性を見つけた。

同僚は思わず、抑えて叫ぶ。

「あっ、あの嬢だ」

小志郎も確認するように注目する。彼女はもはや優雅ではなく、理知的だった。本来持っている気の太さには変わりがなさそうだが、顔が幾分気つげだ。何か信念に目覚めたような様相を呈している。

入社式を終えて所属部署に臨むのか、三々五々と分かれて行く。

友人は呟くように。「どこに配属させられるかな」

友人と一緒に仕事するときも多い、友人は何かにつけて彼女の話をする。取り留めもない話しだ。

友人も時々廊下で出会っていたようだ。小志郎も彼女に出会うことがあるが、軽い会釈だけで擦れ違う。

2年が経ち、人事の季節に、彼女が同じフロアーになったことを知った。部としては、同じ部署だが、部によっては、人事組織もライン型からチーム型に変わっていた。

「細見さち」彼女の名前を同僚が伝えてきた。同僚は同じプロジェクトをこなす渉外担当だった。何度か会議を重ね、さちはプロジェクトを進行するためのドキュメントを持ってきた。誰も出払っていた。さちはオフィスの中を覗き込むようにして、ドキュメントを手渡しする。

「コジ君、中村さんに渡して置いてください」

言葉は丁寧だが、完全に上から目線だ、(年下なのに)小志郎は心の中で反発する。「コジ」は、どうも同僚が話の途中で使ったらしい。(まぁ、いっか)さちはドキュメントを渡すと、クルリと飜り、スニーカーで帰って行く。リクルートスーツなのに。流行だった。

小志郎はさちの真剣な眼差しを思い出していた。(あの優雅さはどこに行った)怜悧とも言える理知的な容貌が記憶に残った。(性格は意外とキツそうだな)小志郎の心の中に浸透していく。

プロジェクトが実行された。最高のできだったわけではないが、皆が手応えを感じていた。上層部もチームリーダーを労った。プロジェクトの合併チームで、打ち上げ会をすることになった。

宴会場もあったが、ホテルでパーティー形式だった。同僚を含めて皆盛り上がっていた。しかし、さちは考え込むような姿勢を見せていた。皆は気にする様子も見せず、盛り上がっていた。さちの様子は知れ渡っていた。参加はすれど、騒ぐことはない。そうであっても、浮いているようには見られなかった。

パーティーがお開きになった。「コジ君、帰ろう」と肘の所を捕まれて引っ張られるように連れて行かれた。同僚はあっけにとられてみている。さちは次のプロジェクトを考えていた。一人で帰るのは寂しいのか、着いてきそうな小志郎を誘った。家に帰り際、駅で別れた。「今度、食事しょう」の言葉を残していた。

同僚など3名が一緒だった。さちは次のプロジェクトのことを聞いて貰いたかったらしい。食事しながら時に熱弁を振るう。皆も目を瞠る内容だった。

---続