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ごくうが行く:69と70は違うね-

妻がリハビリに行くので、ごくうの散歩時間が遅くなる。一番星が出始めてから出かけることが多くなっている。リハビリに行く必要がないとき、ごくうは時間になると、怒るように吠える。ちょうど仕事の区切りでごくうが吠えてきた。

「少し早いが散歩に出よう」

ごくうは雰囲気で分かるのか、嬉しそうにソワソワする。

散歩に出かけると、まだ明るい。ごくうは坂を下がるコースを選んだ。100メートルも行かない内に、交差点だ。ちょうど手を振るシルバーが交差点を渡ろうとしている。一緒に渡る。シルバーはごくうには挨拶程度だ。

四方山話から、

「いやー、70になったとき、今までとは違ったいね」

「69才とは違うよ」

「そうですか」

でも、手を振るシルバーは元気そのものだ。

「あれ、奥さんは?」

「いや-、右手の打ち身で・・・」

「そりゃいけんのー」

「うちのは大腿骨が悪いんよ」

手を振るシルバーはいつも一人で散歩している。

「うちのは骨粗鬆症で注射を打っています」

「そうかいね-」

同情の響きがある。

ごくうはお大師堂に行こうとする。シルバーは橋を渡って団地に入る。

互いに手を振って行く方向に歩を進める。ごくうがお大師堂に頭を向けたところで、後ろから30代後半の男性が小走りしながら追い越して行った。走り方を見ると筋肉に力を入れているようだ。お尻が弾むようにプリプリとしている。軽快な走りだ。

ごくうはあちらにマーキング、こちらに逆立ちマーキング。すぐに男性は遠ざかった。

あんな走りができれば、「69才の壁は楽に越えられそうだ」と勝手思いしながら筋肉に力を入れながら歩いて行く。

まだ一番星は出ていない。今日も長い散歩になりそうだ。

*堺正章もテレビで69才と70才について触れていた。