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妻の記録:いつの間にか眉が太眉に

画像:https://eclat.hpplus.jp/article/65695/01/ から。

妻が右手首を打ち身して、手首が腫れ、料理もできないが、化粧もできない。もともと化粧をする方ではない。化粧しても薄化粧である。しかし、眉は、どういう訳か、剃って形を整えようとする。

もともと妻の眉は太眉である。妻の高校生の時の写真を1枚だけ見たことがある。広い額(おでこ)に眉がくっきりと太い。知り合った当初も眉は太かった。太い眉はオードリー・ヘップバーンの眉を見てから意識し始めた。付き合い始めた彼女が太い眉で気に入っていた。

化粧を覚え始めた頃から次第に眉が細くなっていき、終いには眉を描いて整えている。平安時代には引き眉だったようだが、明治時代(明治3年:1870年には禁止令が出て、お歯黒とともに廃れ、大正時代には自然の眉になっており、太眉が好まれたようだ。

1920年代頃から、世情で目立つ眉が流行し始め、1980年代頃から眉墨で黒々と描く眉が流行している。そのご、一転し、眉は細くなり、それに乗じて妻の眉も細くなり、描かれるようになった。

あまり好みではないので、途中で眉を自然にしたらと問いかけても一向に埒があかない。諦めるしかなかった。

右手を打ち身してからは化粧できないので、自然のまま、なすがままに、化粧もしない。妻の服を着せたり、脱ぐのを手伝っているとき、ふと眉に目がいった。眉が太い眉に戻っていた。若いときの妻らしくなり、心の中で

「おー」

と叫んでしまった。髪はすでに白くなっているが、眉はまだ黒さを残している。

*手が自由になれば、化粧が戻るかもしれない。眉もまた手入れするかもしれない。つかの間の時めきと思うが、妻の手の骨折が治り、指が自由に使えるに超したことはない。