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ごくうと行けば:夕焼けに向かう二人だけ

光熱費が上がっている。かなりの上昇率だ。こまめに電気を消して回っている。エアコンのフィルターが気になりだした。エアコンのフィルターを掃除してもらうことにした。

見ると、エアコン2台はもうかなり古い。1台は引っ越し以来そのまま使っている。もう1台も2009年製で、これもかなり古い。確かに使う頻度が低く、まだ稼働はするだろう。しかし、古いエアコンは電気消費型であると聞く。この際、エアコンを変えることにした。

エアコンを取り付けに来たスタッフが3人来た。うち1人はかなり若い。工事が始まるとき、ごくうが庭に出るという。庭に出すと、若いスタッフが「めっちゃ可愛い」と思わず言葉が漏れる。

どこかで聞いたセリフだ。もう5年は経っている。中学3年生の女子3人が散歩途中で近寄ってきた。その中の一人が「めっちゃ可愛い」と言いながらごくうを撫でにかかる。続いて2人が「かわいい」「生き返るぅ」と言いながら撫でまわす。可愛がられるのはごくうの得意技。鼻泣きでも応える。

その三人と同じ世代のスタッフを交えたスタッフが、3人でエアコンを取り換えた。その夕方、ごくうは坂を下りる散歩コースを選んだ。途中川筋をたどって散歩する。途中で川を渡り、山手を回る。ごくうは自分で散歩コースを選ぶが、妻が同行するときには、お大師堂コースを採ることが多い。

案の定、お大師堂コースを選んだ。黙々とお大師堂に向かって歩いていく。妻がお大師堂にお参りするときには、ごくうは抱っこを待っている。抱っこされながら、一緒にお祈りする。

お大師堂は川筋にある。お祈りが終わると、川筋をのぼりながら散歩を続ける。少し歩いたところで、前方から二人組が並んで歩いてくる。歩道が狭いので、ごくうは歩道に、リードだけを持って、車道の端を歩く。

前方から来た二人組はシベリアンハスキーを連れた二人だった。(あれ、今日はハスキーは?)頭の中で過る。ハスキーを散歩させているときには、用心していた。1度だけニアミスしたことがある。おとなしいハスキーはごくうにやさしく接するが、争いを避けるように、すぐ散歩を続けて離れていった。数か月前の話だ。

散歩で出会ったときには、互いに少し避けながら散歩をしていた。夕方の散歩時間は変わっていない。二人は並んでゆっくりと川筋にそって歩いてくる。ごくうが近づくと、女性の方がごくうと同じ目線で可愛がり出した。男性は数歩先に行き、振り返り見つめている。

女性はごくうをいつくしむように撫でている。毛の感触を味わいたいのか、その仕草がいつもしている仕草に近いのか、慣れた手つきだ。しかし、どこか懐かしむような仕草だ。男性は振り返りながら女性とごくうを見守っている。

ひとしきり、撫でた女性は立ち上がり、「ありがとう」と一声掛けて、男性に近づき、二人並んで川筋に沿って西に歩く。夕陽が赤く染め始めていた。背後の雰囲気を感じながらごくうと川筋に沿って歩いていく。暖かさを増した西日を感じながら。

妻もそのことに触れず、黙々と歩いていく。ごくうは妻と別れてさらに散歩を続ける。よく歩く。その夕方は、なんと2回分の散歩をこなすことになった。

---終わり