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妻の記録:はじまりは

画像:http://www.med.osaka-cu.ac.jp/Neurosci/introduce.htmlから。

*キチンとした診断は受けていないので注意。

先代犬さくらが12歳の時(妻が60代中頃)、散歩中に歩を弛めて立ち止まる。散歩途中だからといって急かしはしない。さくらは止まったまま動かない。何かを堪えるようにじっとしている。2,3分経った頃、ゆっくりと歩き出す。不思議に思いながら後を付いていく。そんなことがしょっちゅう起こる。

病院に連れて行くと、前庭神経炎だった。治療らしい治療もせず、しばらくすると、症状が和らぎ、発症頻度も少なくなった。同じ頃、妻も目の前がおかしい。盛んにおかしいと言い出した。原因を探るべく、病院に行くと、検査では探ることはできない。「おかしい、おかしい」と言いながら暮らし、別の病院の診察を受ける。「少し眼振が見られるなー」治療は踏み込んで行われなかった。

症状が和らいだり、時に治ったり、時にぶり返したりするので、脳神経外科の診察を受ける。それでも、原因は分からず、治療も行われない。その内、症状が治まってきた。

妻はうどんが好きである。「明日はうどんにする?」と聞いても、「うぅん」と生返事。うどんは食卓から消えた。その内、刺身が食べたいと言い出した。刺身を食べても1,2日をおかず、また「刺身を食べたい」と言い出す。機会があれば、望みに応える。

そのうち、同じことを繰り返し聞き出した。1日に何度も同じことを確かめるように聞く。そのうち、財布の中身を確認したり、預金通帳を引っ張り出したり、収めたり、繰り返し同じようなことをする。困ることは場所を決めておいているものが、場所を変えて保管されていることである。探し、問いただすのに感情を殺して尋ねなければならない。きつく言うと、すぐ落ち込んでしまう。

そうこうしている内に、アミロイドβのことが放送番組で報じられた。似ている症状に予防措置を執り始めた。気づかれないように対応する。料理は食材の位置が変わるくらいで、味は変わらない。時に、思わぬことが起こるが、生活にさして支障がないので、そのままにしている。

ところが9月末、何を思ったのか、椅子に上がり、窓の汚れを取ろうとする。その際、椅子から落ちてしまった。頭を打ってはいけないと判断し、右手を突いてしまった。結果、骨にヒビが入り、リハビリに通うようになる。

リハビリに通う日を何度も尋ねだした。「明日はリハビリ?」と聞いてくる。「金曜日だよ」というと、「時間は2時50分?」とカードに書かれた時間を数度確認してくる。

その内、歯科医院に行くようになった。リハビリと歯科医院の割り振りは見事にできるが、確認は数度もしてくる。

子供が帰省して来た。車で迎えに行き、子供に話す。「すでに分かっていると思うけれど」というと、子供は無言で聞いている。治療をするかどうか大いに悩んでいるが、以前その話しをしたとき、本人は「しない」と一言。それを子供に伝えると、子供はそのまま聞いている。認識はしたようだ。

リハビリの帰りに買い物に行く。妻がうどんを食べたいという。うどんを買うとき、夫は肉うどんにしょうと思い、肉を買う。リハビリの効果か、料理はできて来だした。ちゃんと肉うどんも出てくる。もともと料理は好きだったので、リハビリを兼ねて料理を大部分し出した。洗濯もするし、風呂掃除もする。

妻はちらし寿司を作るのが好きだ。美味しくもある。子供にちらし寿司を食べさせたいと張り切る。美味しいといつもの評価を受け、ご満足。さらに拍車が掛かりそうだ。

子供の引っ越しが一段落しそうで、引っ越し作業も落ち着いてくると、同じように落ち着いてきた。ごくうの世話も一通り出来るようになっている。ごくうもこのところよく食べている。

今のところ、緩慢な変化であり、取り立てる程の事象はない。