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翻案:おさごの憂鬱が晴れる

画像:室戸岬:下記から加工。

https://goo.gl/maps/hiKmfRMY8N2kuyeUA

未来社から[新版]日本の民話シリーズが刊行されている。地域別に75巻と、別巻4巻を併せたものである。土佐の民話は第1集と第2集がある。第2集の中から、「おさご女郎と食わずの芋」がある。その前半部分は「おさご女郎」に関する物であるが、悲しいシーンが下敷きとなっているので、その部分を翻案した。

翻案:おさごの憂鬱が晴れる

とんとむかし。
室戸岬に近い、津呂の港に、おさごという漁師の娘がおったそうな。おさごはこのあたり一帯で、くらべほどのない美人じゃったそうな。

その美しさは評判になり、毎日、若衆たちが、あっちの村からこっちの村から押しかけてきたそうな。皆、真面目で、誠実で、律儀だったそうな。

あまりにもぎょうさんの人たちが、おさご見物にやってくるき、おさごは何をするにも人の目を意識せんずっにはおれざった。ほんで、とうとう身も心も疲れ果ててしもうたと。

あまりにも多い若衆たち。おさごはわざと身なりを構わず、小汚くしておった。それでも、若衆たちの心をそらすことはできざった。

おさごの綺麗さを聞きつけた村の娘達は、まけんじと身ぎれいにし、身なりを整え、洗練させていったそうな。

おさご見物に来ていた若衆が一人去り、二人去り、三人去り、村の娘達と結婚したそうな。真面目で、誠実で、律儀さに加えて、優しさを全面にあらわす若衆だけが残っていたとさ。

おさごはその若衆と結婚し、二人の娘をもうけたそうな。二人とも美人に育ったそうな。村の娘達が、もうけた娘達も綺麗で美人じゃったそうな。その後も、室戸には、たくさんの美人が出ておることは、おまさんらぁもよう知っちょりますのう。


・市原鱗一郎編(2016年)「おさご女郎」『土佐の民話』[新版](第2集)、日本の民話54、未来社、74-76頁。(初版は1974年)。