ごくう日記:ごくうが呼び止められた

ごくうの散歩道に古い家があり、空き家が2軒あった。1軒が取り壊され、戸建て家が2棟建てられた。2軒目も程なく取り壊され、戸建てが3棟建てられた。併せて5棟の家が建てられた。家は瞬く間に売れ、住人が入居したらしく、生活感を感じられるようになった。

その頃、ごくうは新しい散歩コースを探索するのが楽しいのか、5棟の家を回るコースには行くことがなかった。1ヶ月が経ち、2ヶ月が経った頃、妻が散歩コースの分岐点で

「ごくうは最近上に回らないわね」

と呟いた。ごくうは自分の行きたいところへ行くのが習わしだ。しかし、ごくうは何の風向きか、上に回るコースと自分で開発したコースとの分かれ道に来たとき、踵を返した。上に回るコースを選んだ。妻と二人で慌てる。てっきり開発したコースを行くものと思っていた。

上に回るコースを淡々と散歩していく。止まってはマーキング、陸橋を渡り、クウマ君の家を過ぎ、新築の家を通り過ぎようとしたとき、女の子が駆け寄ってきた。

「待ってぇ」

ごくうが振り向くと、女の子が追いつき、強引気味に撫でる。後ろにいた母親が慌てて追いついた。子供の手を取ったが、ごくうが追いすがる。

「あら、可愛いわね」

母親は娘の手を取り、

「ばいばい」

帰ろうと向きを変えた。後ろから男の子がごくうに小走りで近づく。母親が慌てて向きを変える。もうそのときには、男の子はごくうを撫でている。物怖じしない子供たちに、母親は小驚き、男の子の手を取ろうと、女の子の手を離す。

女の子は自由になると、再びごくうを撫でに掛かる。女の子が撫でるのを見た男の子は母親の手を摺り抜け、ごくうを撫でに掛かる。

二人で撫でている、諦め呆れる母親はゆっくり近づいてくる。男の子の手をゆっくり取ると、女の子を身体で押しながら行こうとする。

「ありがとうございました」

「このワンちゃんは吠えたりしませんが、気をつけてくださいね」

女の子と男の子が誤解しないように、ちょっと心配になったので、付け加えてしまった。

ごくうは一段落したと思ったのか、もう家路に急いでいる。ワンちゃんと暮らす家族が1軒増えるかもしれないな。