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ごくうが行く:アメリカネナシカズラがここにも

キングとさくらは散歩に出かけるとき、団地から出ると、坂を下っていた。ごくうはわがままである。団地から出たところで、上り坂を見つめ、どうしても坂を上がろうとする。とうとう根負けした。坂を上がるコースも散歩のコースの一つになった。

やがて、ごくうは自ら散歩コースを選択するようになった。登りか、下りかを選択する。最初の頃は、ほぼ几帳面に、坂を下に散歩に行くと、次の日は坂を上って行く。

次第に飽きてきたのか、今までの散歩コースをアレンジして行き始めた。もう空間認識ができているのだろう。散歩コースから別の団地への薄暗い道がある。ごくうはコースから外れるので、一瞥して散歩を続けていた。

その道は昔からの小高い丘とも言える山の林縁部に沿っている。その林縁部の中程に土の表面が流出して剥き出しになっているところがある。そこに2本のヤマツツジがしな垂れて自生している。5,6本は若木であり、横に這うタイプと上に向けて立っているタイプがある。ヤマツツジの花は朱色であるが、よく見ると、透明感があり、ビロード状に艶めいている。

その薄暗い道を抜けると、別の団地への道が舗装され、登っていく。道の途中に雑草がある。その雑草に「黄色い網を掛けたようなもの」を2カ所ほど見つけた。

よく見ると、小さな白い花が咲いている。花期は8月-10月とあるが、地方により異なると思われ、ここ(北緯34°)では、6月にはすでに咲いている。

「植物だ。」「ツル植物?」「根がなさそうだが?」「タネは?」

次々と疑問が湧いてくる。今まで見たことはない。後で分かったことだが、日本全国に移入分布している「アメリカネナシカズラ」と分かった。1970年には、多摩川で確認されているので、もうかなり広範囲にわたって分布していても不思議はない。国立環境研究所の「侵入生物データベース」に記載されているので、深刻度は高い。環境省の「外来生物法」で「要注意外来生物」に指定されている。

「アメリカネナシカズラ」は、他の植物に絡みつく「ツル植物」だった。ツルは細く、雑草に絡まっている。高さは30cmは越えているが、低い植物に絡んでいる。反対側の道路の端には15メートル以上に亘って長く伸びたものと2,3メートルに覆われている場所がある。

種が発芽し、成長すると、他の植物に寄生し、根を無くして生活するらしい。いわゆる「寄生植物」である。雑草などに絡む場合、小さな突起状の寄生根(吸盤と言われている)が出る。興味を引くのは、「葉緑素をもたず、葉も退化している」ことである。葉緑素を持たないのは、他の植物に寄生してその植物から得られるので、必要が無い。しかし、葉はあり、ツルから出る子ズルに小さな鱗片状の葉がある。

受精すれば、果実ができ、やがてその果実から少数のタネができる。タネは落ちるだけで飛び散りそうにはない。しかし、花が無数と言えるぐらいあり、タネは結果として沢山作られる。アリがネットの上を這い回り受精の手助けをしている。

「抜き取ったり、刈り取ったりして処分する」とあるが、雑草ごと抜き取らねば残ってしまう。現物は広さが40cm×60cm位と、1m×3mと広いものもある。雑草ごと刈り取り、袋詰めにし、処分するのが手っ取り早い、と思われる。幸いと言えるかどうかは分からないが、アメリカネナシカズラは1年草なので、タネができる前に刈り取れば、繁茂を押さえられる可能性がある。

ごくうはそのような植物には目もくれず、観察中は周辺をマーキングして彷徨いていた。帰る途中で長い散歩に疲れたのか、途中で立ち止まり、顔を向けて目で促す。「ダッコだけど。」