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読書メモ:『人類が変えた地球』の副題は「新時代アントロポセンに生きる」

原著;Gaia Vince (2014) Adventures in the Anthropocene: A Journey to the Heart of the Planet We Made, Milkweed Editions.

*ガイア・ヴィンス(2015)/小坂恵理訳『人類が変えた地球:新時代アントロポセンに生きる』化学同人。

アントロポセン、地質年代を定義するには、何という奇をてらった用語。アントロポセンAnthropoceneは、ノーベル賞を「オゾンホール」で受賞したパウル・クルッツェンによる造語であり、「人新世」と訳される。

おまけに「新時代-」と副題を付ける。このような内容の本の副題に「新」を付けるべきかどうかは慎重に考える必要がある。「新」には「肯定感」が内包されていると考える人は多い。

内容的には、『危機に瀕する地球』が妥当であり、地球の危機は、気候変動などで象徴的に表されるが、人類が惹起させたものである。また、人類が惹起させた地球の危機は、始まりに過ぎない。

(不確かだが、気づいたのは1990年頃か。)2002年はNatureに投稿され、アントロポセンが口上に登り始め、地球の危機について論じ始められた。この地球の危機は、人類活動の「成功」の証故(あかしゆえ)に引き起こされていることを認識する必要がある。

地球の危機に、手を拱いていては、長きに亘って影響が人類自身に降りかかってき、将来は破滅的な事象も起こりえることを念頭に置かざるを得ない。

日本の2000年生まれの人は、半数前後が100才を越える人生をおくることが予想されている。2000年生まれに限らず、大きく影響される人は、もうすでに誕生している。その存命中、長きに亘って、気候変動などの事象は、影響度をあげながらのしかかってくる。

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地質年代(疑問は大いに残るが)として、アントロポセンを容認したとしても、危機に瀕している地球の概念を明確にする必要はある。誰もが、共通に認識できるタームを概念づけることが、解決に向かって進む上で重要と思われる。

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著者は「エピローグ」で、母親が書き残した本書を、子供(キップ)が将来取り出した様子として、将来の地球の姿を描いている。そこで描かれている地球の姿はユートピアでさえある。ここに「新時代」の地球の姿が描かれており、副題はこのような観点から選ばれたのだろう。希望を托して。

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訳者も「訳者あとがき」で、「人間も自然の一部」であることを書き留めている。地球は人間の生存環境であり、活動環境である。地球環境から独立の生物はいない。地球の変化の中で,進化や滅亡も含めた生物は自然に対応していく。人類だけが地球に「加工」を加え、良いと思うかどうかは別としてきたが、跳ね返りも強い。地球歴史の中で、当面、少なくともこれからの2世代くらい(120年程度か、意外と短いのでは)は、自らの首を自ら絞めていく行為を改める時期には来ているように思われる。

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タイトルは『人類が変えた地球』。2014年初出。(8頁

目次
序 人類の惑星
1章 大気 : 山奥のワイファイネットワーク
2章 山: 氷河を作り,山を塗る
3章 川 :ダムがもたらすもの
4章 農地 : 食は確保できるか
5章 海 : 沈んでいく島
6章 砂漠 :不毛の地の可能性
7章 サバンナ:作られた野生
8章 森 : アマゾンで何が進んでいるか
9章 岩:枯渇する地下資源と向き合う
10章 都市 :アントロポセンの希望
エピローグ 私たちが作った時代