妻の記録:般若の涙顔
ごくうの散歩を終え、アメリカネナシカズラを刈り取りに出かけた。アメリカネナシカズラは外来生物法で要注意外来生物に指定されている。放っておくと、繁茂してしまう危惧があり、他の植物を痛めてしまう。現在の所は雑草に寄生しているに過ぎないが、繁茂場所も広がり、やがて野菜畑にも進出していく。本来は早めに除去するのが得策である。役所に届けたが、悠長であった。せめて一部だけでもと、刈り取った。それをゴミ袋に入れ、家に持ち帰った。翌朝、ゴミとして焼却処分する積もりでいた。
妻は料理するとき出るゴミを纏めるが、ゴミ袋に入れるのは夫の役割である。いつもはほぼそうしているが、アメリカネナシカズラを刈り取ってきたとき、どうしたことか、自分でゴミ袋に入れようとして、袋を開けていた。
「あー・・・タネが出るかも。どうしてしたん・・・」
驚いたが、もうすでにある症状が出ているのを知っており、日頃から注意して、怒こったりせず、平常に話していた。このときも、優しく言ったつもりであった。
タネが落ち、繁茂する植物は多い。もう5種類くらいは経験している。根絶はなかなかできない。アメリカネナシカズラは寄生植物なので、庭には侵食させたくない。そう思った響きが声に出たのだろう。
受け取る妻は事情が飲み込めず、受け止めきれないのか、押し寄せる奇妙な恐ろしさに、顔が歪み、般若のように変化し、涙顔になった。
ーーー1週間前(20210729)の出来事である。