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佐藤先生は手製のプロジェクターでゾウリムシを投影

生物には毛がある。ヒトにも毛があり、ツツジにも毛がある。単細胞であるゾウリムシにも毛がある。ゾウリムシは原生生物であり、ゾウリムシの毛には繊毛と鞭毛がある。繊毛がゾウリムシの細胞の周囲に短く、細胞を覆うように多数付いている。これらを細かく動かして移動する。鞭毛は動く方向に逆らう毛と考えられている(方向が変えられる)。漂う生物から動く生物へ変化した例である。

高校に入学して生物学に出合った。工学には興味があったが、生物学には興味の欠片もなかったかもしれない。「小鮒釣りし」の釣りはよくしていた。母は結婚してから生計を立てるために商店を営んでいた。

その商店のお客に高校の教員が来ていた。高校では生物学を担当していた。すでに結婚しており、新婚さんだった。主人は優しくしっかりしていた。奥さんは可憐で穏やかだった。

店番をしていると、生物の先生が自転車で買い物に来た。近所なのに、自転車だった。帰りに寄ったのだろう。自転車に乗ったまま、「君は生物部に入らんかね-」と誘ってきた。いわれるまま生物部に入った。

文化祭の前になり、プロジェクターの制作に取りかかった。父が家具製作をしており、手伝っていたので、教員の指導よろしく、初めてのプロジェクター製作を困難なく仕上げた。全面が薄い曇りガラスで、後面に丸い穴(5センチくらい)が開けられ、そこから顕微鏡の映像を映す。光源には工夫が凝らされていた。奥行きは2メートルもあり、大型の筒だった。

しかし、プロジェクターの制作現場は、男子4クラス+女子1クラスの高校だったが、他所に女学生の高校があった。次年度は高校を統合する予定だったが、その年は文化祭を2施設で行うということだった。生物部は女子校を割り当てられていた。

手製の大型プロジェクターを女子校に搬入しなければならない。教員がトラックを調達し、女子校キャンパスに運んだ。トラックから展示場所に、男子4人で手製プロジェクターを運んでいく。女子高生が群がって遠くから見ている。中学校はすでに共学だったが、高校になると、男子だけのクラスだった。ぶり帰って来たような女子高生の群れに怯んでしまった。手製の大型プロジェクターが一段と重く感じ、やっとの思いで設置した。

あの時の噎せ返るような雰囲気は二度と味わっていない。女性の怖さを再確認していたが、なんとなく香しい雰囲気も脳裏に残った。