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ラストサムライでトム・クルーズは「丸い田」を見たか。昔々、田は「卵型」だった!?

画像:「最近の野生イネの分布」出典:『イネの歴史を探る』196頁。

『ラスト サムライ』(The Last Samurai)は、2003年、アメリカで制作された時代劇アクション映画。見に行ったとき、どこかのシーンで「丸い田んぼ」が背景シーンにあった。象徴的なシーンかと思い、長く記憶に残っている。

イネの遺跡が中国の浙江省と江蘇省にある。

浙江省・寧波(上海からほぼ南西寄り100km)では、田螺山遺跡(でんらんさんいせき、紀元前5000年-4000年、浙江省)がイネの栽培化に関して重要視されている。この遺跡では、紀元前7000年-6500年前の「地層」からイネの小穂軸が見つかっている。※小穂(しょうすい)=イネ科など、花の付いている穂

江蘇省蘇州市(上海から西南西に50km)では、草鞋山遺跡(そうあいさんいせき、6900年前-6600年前まで)があり、イネの栽培化の様子が分かる。この遺跡では、小穂軸の過半数が栽培イネで、野生イネは20%程度である。これは同時に、野生植物が食料として利用されなくなり、食生活が植物採集形態からコメを中心とする形態へ変化したことを示す。

草鞋山遺跡では、小さな水田が残っており、6000年前のイネ栽培は瘦せた土地を耕して行われていた。このような土地の水田では、水量と土の養分管理が重要である。イネの栽培成果を上げるために、水田を小さくするとともに、作業効率の観点からも水田を(ここでは)卵型にして耕作したと思われる。

『イネの歴史を探る』199頁

水田は「卵型」!ラスト・サムライの背景で水田が丸いのは、よく歴史的考証の結果かもしれない。


・佐藤洋一郎・赤坂憲雄編(2013年)『イネの歴史を探る』玉川大学出版部。