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ごくうと行けば:後を追うように
ごくうは坂を下がるコースを選んだ。交差点で右に曲がり、川筋に向かって進んで行く。川筋の手前から、こちらへ向かってくるおばあさんが見えた。歩道を歩かず、車道を歩いている。車がやってくる気配はないが、危険だ。
歩道を歩くようジェスチャするが、そのまま擦れ違うまで接近。おばあさんはごくうを見て、「可愛いね」。ごくうはいつもの調子でマーキング。言われたのに気づいたのか、おばあさんの方に寄っていく。おばあさんは車が気になったのか、辺りを警戒する。車は来ていない。
おばあさんはごくうを見ながら、「うちにも飼い犬がいたんよ」「柴犬じゃった」「番犬じゃったけどね」短い間に立て続けに話す。信号が変わろうとしている。
「主人が亡くなってから、後を追うように死んだんよ」
「それは・・・」
言葉が出ない。妻はおばあさんを歩道に近づけようと促している。ごくうはもう次の散歩と、歩き去るように勢いが良い。
おばあさんが歩道に近寄り、やがて歩道を歩き出した。それを確認して妻が散歩を開始する。
追いついた妻に「ほらね、エピソードがあるじゃろ」。妻は散歩を早めに切り上げる。妻が立ちさってから散歩中のエピソードが多発する。先回の記事からもう7,8度ではないエピソードがある。最近は、ごくうは人を選んで近寄ることが多くなっている。それでも、エピソードは後を絶たない。
おばあさんの安寧を祈りながらごくうの散歩が続く。