ごくうが行く:おぼろ月が雲間に消えた

5時過ぎに散歩に出かけたのに、もう薄暗い。秋になっている。肌寒く、1枚着物を多くしている。明日は雨かも、と放送で知らされている。星が出ないだろうし、月も出ないかもしれない。

それでも、ごくうはどこ吹く風とばかりに、散歩コースをなぞっていく。坂を上がるコースに2階建てのアパートがある。下の階の住人は家庭菜園が好きだった。水遣りの際に、ごくうに出会うと、可愛がってくれた。

ある日、ネギ1本を残して引っ越していった。しばらくして新たな借り手が現れたが、菜園には興味がなかった。偶然の一致か、外に出ていたとき、ごくうの散歩に遭遇した。犬が好きらしくごくうを可愛がる。それはただ一度きりだった。すぐに引っ越していった。

ごくうが上のコースを選んだ日、新しいカーテンが吊られた。しかし、ごくうに出会うこともなく、数日後すぐにカーテンが外されていた。

そのアパートの筋向かいはちょっとした家で、庭もあり、倉庫らしきものもある。その家が改装されていた。しかし、人の出入りは見られない。その隣の家もすでに「売り物件」の看板が立っていた。

この筋は新築される家も多い。最近では、中学校の前に、今まで空き家だった2軒が取り壊され、新築の家が5軒になり、すぐに入居者が現れた。中学校を回ると、旧山陽道になる。この筋には昔からの家が軒を連ねているところがある。

一昨年、雨が降ったとき、居住者のいない旧家が崩れていた。その家は取り壊され、今は会社の駐車場になっている。旧家も建て替えられる家も多い。古い家と新しい家が半々くらいだろうか。

ごくうは最近旧山陽道に沿って進む。新築の家がチラホラとあり、故郷に錦を飾れた人なのか、一層大きな家が1軒ある程度で、街道筋のどの家も今では古く、ある意味情緒がある。

ごくうは中心部を横目に川筋に沿って歩き出した。放し飼いの犬が2頭、遠吠えする。川の下りに沿いながら歩いていると、雲間に満月に向かう月が顔を出した。おぼろ月だ。公民館に差し掛かる手前でおぼろ月も雲に覆われてしまった。この季節になると、ごくうの散歩も、もう明かりを携えながら歩かなければならない。

*このような町は高齢人口がピークであり、次の団塊世代ジュニア(今の中年世代)が高齢化を向かえるまで高齢人口は減少する。団塊世代が高齢者になったあとは高齢人口も減少していく。