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ごくうが行く:「1,2,3,4,5」あるいは円背の矯正運動

老齢にもなると、男女を問わず、背中が丸くなってくることが多い。妻の背中がどことなく丸みを帯びている。太って丸くなるのではなくて、肩から背中の掛けて全体が丸みを帯びている。いわば、円背(えんぱい)状態になっている。

妻の背中の円背状態が進行する前に、なんとか維持しょうと後ろから羽交い締めにしながら背中を元に戻すように力をゆっくり加える。それを始めてから1ヶ月経過した頃、ごくうの前で、円背矯正運動をやってしまった。ごくうは半身になり、起き上がり気味に見ている。

「ごくうもやるの?」

聞いてみた。ごくうは恥ずかしげに左足を浮かせる。

妻の円背矯正運動を終えると、ごくうの後ろに回る。ごくうは立ち上がり、不安げに成り行きを見ている。ごくうを羽交い締めのように後ろから抱き、背中を反らせる格好で

「1,2,3,4,5」

と、唱える。格好をするだけで、反り返らせるわけではない。ごくうは神妙に応じている。

5の数を数え終えると、ごくうの姿勢を戻してやる。ごくうは待ってましたとばかりに、4つ足ジャンプを始める。ご褒美の催促である。

「アヒル投げ→さくらん棒」(さくらん棒は棒状のささみである。)

「しまった」と思うと同時に、まんまとこちらがしつけられた瞬間だ。

それから妻の円背を矯正する運動をする度に、影に隠れてやっていても覗きに来て、4つ足ジャンプを繰り返す。ごくうの楽しみが増えた出来事である。