ごくうが行けば:パッカ、パッカ歩きの黒柴は、お約束通り

ごくうがやって来て、ほどなく、中学校のグラウンドを回って旧山陽道沿いを散歩しだした。グラウンド側の里山の林縁部にミツバツツジと雑種のツツジが数本自生している。その連なりに、雑木とメダケ(女竹)が入り混じっている。

旧山陽道にはお堂がいくつかある。体裁を整えたお堂がある。そのお堂の傍を、パッカ、パッカと歩調を飼い主に併せるようにして歩く黒柴が目に入ってきた。散歩に、はやる気持ちを調整するかのように歩いている。

細い道なので、近づいてくると、飼い主が手綱を引くがごとく、立ち止まり、黒柴と一緒に並んで、ごくうをやり過ごすかのように待っている。ごくうは目に入るのか、入らないのか、道端を歩きながら、通り過ぎていく。ごくうはまったく関心を示さない。黒柴はごくうの過ぎ去るのを見やりながら待っている。

飼い主はごくうが過ぎ去ると、黒柴と一緒に歩き出す。70歳前の男性のようだ。黒柴は飼い主と歩調を合わせてパッカパッカと歩き去っていく。しつけられたわけではなく、思いやる気持ちが歩調を馬の様に調整しているようだ。

早い段階で、会釈をしながら通り過ぎるようになった。しかし、犬同士の交流をするようにはなれない。遠慮しているわけでもなく、ただひたすら譲っているように見える。

何度か出会ううち、黒柴はごくうに関心があるようだ。でも、リードを引っ張っていこうとする姿勢は微塵もない。挨拶はするが、ごくうが通り過ぎるのを自然のままに待っている。

何度か出会いながら時が過ぎ、ある夕方、髪を乱した高齢の女性が黒柴を伴って散歩している。奥さんと思われる。いつものように黒柴は待とうとしているが、成り行きの様にごくうとすれ違う。軽い会釈で互いに去っていく。

3回目に出会った後、黒柴と一緒に散歩する人が男性に代わった。しばらくすると、別の男性に代わっていた。何度か出会っていた。と思っていたら、雨の日に高齢の女性が傘をさして黒柴の散歩に付き合っている。団地の入り口近くだ。高齢の女性は黒柴が散歩する方に付き従っているようだ。

歩道としては、広い道幅だ。左右に分かれてすれ違おうとすると、黒柴もごくうもエールの交換か、互いに近づいた。しばらく2頭は少し間近づいた。

「何歳ですか」「13才です」

意外と高齢なのに驚く。

(男性がかわるがわる散歩する機会も目にしていた。)

まもなくして、また雨の日に高齢の女性が黒柴の散歩に付き合っている。今度はカッパまで調達したのか、きちんとした散歩姿だ。今度は交差点近くの道幅が広い歩道だった。

「お名前は?」「コマです。」

黒柴はごくうを見ている。ごくうは道そばをウロウロ。

今夕、妻が柏餅を食べたいという。スイカも3割引きで手に入れて団地に帰ると、坂を上る高齢の女性が黒柴「コマ」を連れているのに遭遇。先ほどごくうの散歩から帰ったばかりだった。