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イチオシです。写真との出会いやカメラマンとしての人生を振り返り中です^^
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2020年6月の記事一覧

ep.12 代表作。

「カメラマンには代表作が必要だ」と教えてくれたのはN山さんだった。N山さんは僕ら世代のサッカー好きなら絶対に見たことがあるNumberの表紙「We did it !」を撮った人だ。 「代表作ってちょっと大げさなんじゃ?」と思っていたけれど、今になって思うとこの写真が僕にとっての最初の代表作になった。荒川静香さんのバタフライ。2005年6月に撮ったこの一枚によって、僕のカメラマン人生は一気に動き始めた。 この写真は「VS.(バーサス)」というスポーツ総合誌に掲載されたのだけ

ep.11 ターミナル。

という映画をご存知だろうか。2004年に公開されたトム・ハンクス主演作で、アメリカに向かう機中でトム演じる主人公の国がクーデターにより無政府状態に陥り、パスポートとVISAが失効。アメリカに入国することも祖国に帰ることもできずに、JFK空港に閉じ込められるというお話だ。 2005年の僕はノッていた。2月のバーレーン取材を皮切りに3月にイラン、6月には再びバーレーンとイランへ行くことになっていた。 逃走しまくったバーレーン取材を終え、無観客の北朝鮮戦のために多くの日本メディ

ep.10 逃走中。

「あ、来る! 来てるっ!」 2005年6月。僕はマナーマの競技場にいて、目の前ではジーコジャパンがバーレーン代表と戦っていた。いつもなら試合に集中しているところだけれど、この日はそういう訳にもいかなかった。 追手の目を盗みながら撮影する羽目になったからだ。 なぜそんなことになってしまったのか。数時間前におこなわれたメディアブリーフィングで事件が発生した。 中東訛りのプレスオフィサーは、会見場でおこなわれたブリーフィングで、日本からやってきた60名余りのカメラマンに対し

ep.9 フリーランスの流儀。

2005年3月。僕はテヘランにいた。ドイツW杯を目指すジーコジャパンにとってはアウェイの初戦。対戦相手は強豪イラン。つまり、このシリーズで最も難しい試合を取材するためだった。 テヘランのアザディ・スタジアムは女人禁制(当時)。10万の野郎どもが集まる世界一圧が強いスタジアム。 その圧力の前にジーコジャパンは屈してしまった。 実はこの試合の前にあるトラブルがあった。同行していたカメラマンさんが、試合の前日にADカードをどこかに落としてしまったのだ。普段は何事にも動ない人だ