cream「女中浮世の怪談」プレイ感想

何やらフリーで遊べるってことだったので、サクッと手を出したら面白かったので感想をと思い申したでござるござる。

さて、この作品はホラーノベルゲームでオムニバス形式となった作品。
5つの怪談を女中である浮世と言う可愛らしい女の子が寝る前に語ってくれるという形だ。
寝る前に聞かせるおとぎ話にしては些か歪んでいると思うのだが、聞き手の主人公はそれでよく眠れるのだろうか……?

まあ、考えても仕方ない。
とりあえず紹介だ。
5つのお話は次の通り。

「十三年前の夏井沢」
「裏切りの対花」
「恋人形ノガミくん」
「優しいお肉屋さん」new
「数字の悪魔」new
(作品ページから引用)

newと付いているものは最近追加されたものっぽい。(20/12/01現在)
お話を読むのにちょっとした選択肢が用意されているが、特に気にするレベルではない。
プレイ時間は書いてる通りに約1時間程度だろうか。
1つのお話が大体10分程度で読めるので、慣れていればもう少し早く終わるだろう。

作品ページはここで

あと、PVまでご用意されてるので見てもろて

短いけど、しっかりホラーなので安心してプレイしてみて欲しい。
叫びだすようなホラーではないけども、やはり怪談というならこう言うゾクッとするようなお話が良き。


以下、ネタバレ


「裏切りの対花」
これは因果応報のお話。
好きなものを取り上げたいと言う願望ゆえの破滅。
好きな相手が自分の友人を好きだったと言う、ありがちもありがちな恋のから騒ぎ。
人のものを取ったらその後はどうなるかなんて言わずもがな。
とは言え、これは怪談として考える場合とそうじゃない場合とで考えが分かれる。

1.彼女の生霊が現れた。
2.追い詰めてしまったことへの自責の念で妄想に囚われ、ありもしない幻想を見た。

どちらも有り得る話。
ただまあ、最後の彼女の笑みを見ると1が正しいのかもね。
それと、取り上げる相手を間違ったね。
彼女を気弱と評していたが、実際に気弱に見える人間は内側ではとんでもない欲望の渦が蜷局巻いているなんてことはよくある。
それを見抜けなかったのは痛い。
人は外見で判断してはいけない。
窮鼠猫を噛むと言うが、追い詰められた人間は平気で人を殺すし、衝動的に行動する。
経験上一番厄介なのは暴力的な面で脅してくる奴らじゃない。
内側で牙を研いでいざという時にそれを剥いてくる奴らだ。
その時こっちは本当に死にかけるんだから。
忘れちゃいけない人間の怖さ。
恨みはどこまでも降り積もる。
知らない内に、舐めてる内に。

「恋人形ノガミくん」
これは人形に知らない魂が入り込んだお話。
「ノガミくん」という実在する人間の名前をつける悪手。
これは呪いの藁人形と同じ効果を出してしまう。
だが、実際に人形に入り込んだ存在と実在のノガミくんは違う存在。

人形神(ひんながみ)という富山県に伝わる憑き物の話がある。
こいつは人の願いを叶えると言う人形で家に富をもたらすが、欲にまみれたお願いを続けると、取り殺されると言う。
式神のように使える願いを叶える道具だが、結果として主の望まぬ結末を用意すると考えればこれは人形神なのかも知れない。
怖ろしい事を平気でする女子高生の恋路は中々侮れない。

ちなみに、もう一つ面白い怪談があって、人形が捨てたのに何度も戻ってくると言う話。
これ実は人形に操られて、人が何度も取りに言っては戻していたと言う結末だったりする。
もし、このお話も同じ様に人が操られて居たのだとしたら、実在するノガミくんは自ら焼却炉に落ちたと言う事になったりするなって考えたりもした。
お人形には気をつけよう。


「優しいお肉屋さん」
豚鼻を理由にいじめられていた主人公だが、彼は病気になっていたのかも知れない。
作中でも語られているがミラという男はその名の通り「ミラー(鏡)」で、自分を映し出すもう一人の自分だったのかも知れない。
助けてくれていた老夫婦の居ないお店という「夢」を見て、そこで自分に言い聞かせたのだろう。
これは単純に妄想に囚われた人間のお話。
ミラが関西弁なのは自分とは明確に違うという差別化のためだったりするのかも知れない。
しかし、トイレに現れたミラは一体誰だったのだろうか……。

ちなみにいじめは黙ってやり過ごすよりも反撃する方が効果的なので、いじめられているなら椅子でも投げて窓ガラス割って脅しでもしてやればいい。
窓ガラスなんて大した金額じゃないから大丈夫だし、なんだったら割っても払わないという選択肢も学校ならあるぞ()
いや、普通に証拠押さえて警察に被害届と弁護士挟むのが一番だけど。
とは言え、賠償の話になるとあんまり旨味は無いけどね。

「数字の悪魔」
BでLな感じ!
どうしても人気者になりたい男と、人に必要とされたい男のお話。
お話は割と簡単に想像のつく結末だった訳だけど、このシナリオめっちゃ気合入っててビビった。
最初に動画が入っていたりして、恐怖を掻き立てられるのめっちゃ良きだった。
まあ、彼としては結果的に注目されてよかったね。
ただ、人の死を弄んだ代償としては少し足りないと思うので、折角だから向こうで二人でお手々繋いで賽の河原で石を積み上げるのがいいと思うよ。
手を繋いでたら一生終わらんだろうけど。
あ、繋いでなくても終わらんかったわ()

「十三年前の夏井沢」
さて、順番通りに行くならこのお話が一番最初に来るんだけど、この怪談は私が作中で一番お気に入りのお話なので最後に回した。

このお話は作中でも言ってた通りに2つの考えがある。

1.本当に事実として死んだ女の子に誘われた
2.主人公は死に場所を探していて、ありもしない妄想で死んだ理由を付けた

このシナリオの一番怖い所は水底にある女の子の骸と言う絵によるインパクトではなくて、どちらとも取れる様なお話の構成にあると私は思う。
13年前の話を何となく思い出して行く様は、ENDを見た後なら間違いなくその時点で「彼女に呼ばれていた」と見えるだろう。
そして、もう一つの考えに沿えば、主人公は仕事で疲れ切っていて、既に病んでいた。
だから下らない青春時代の失恋の思い出を追いかけるようにして下車し、その想い出に下らない妄想を結びつけて、「自分の責任ではない形」でこの世から退場するという。
それにお話を終えてからそっと添えるように語り手の浮世が説明してくれるので、そこでもゾクッと来るという。
ちなみにこのお話なんで私が気に入っているかと言うと、後味の悪さ(良さとも言える)である。
このお話を見た人はこれが後味悪いか?と思うかも知れないが、私にとっては後味が悪いのである。
何故か。
これを読んだ人はみんな思うかも知れないが、1の事実であれば、彼女も彼も「見つからないのだ」。
今後、この先誰にも見つからずに彼らは一生水底で二人きりなのだ。
彼女が祭りの日に行方不明なって見つかっていない様に、彼もまた捜索願は出されるだろうが、見つからないのだ。
そして見つからないまま彼らは一生二人で水底で愛し合えるのだ。
良くない?え、キモい?ほよよ……。
そして、仮に2の事実だった場合、彼は「彼女」という妄想に囚われながら水底に沈むのだ。
ありもしない「彼女」の幻想を抱いたまま永劫誰にも見つからずに眠りに付くのだ。
きっと骸すら幻想だろう。
にも関わらず、彼は「彼女」によってあの世に引っ張られたと勘違いしたまま死ぬのだ。
きっと賽の河原があればそこで気付くだろう。
馬鹿なことをしたと。
ああ、愛おしい。
良くない?え?キモい?ほよよ……。


ってな感じで、感想終わり。
やっぱ怪談って楽しいわ。


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