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日本が抱える3つのリスク要因 - #ベッドタウンが生き残るためにいま考えるべきこと


このシリーズでは、これから日本がどんなリスクを抱えているか、ベッドタウンがどうやってサバイブしていけば良いのかを考えています。

前回の記事では、人口減少がどんな危機を招くのかを確認しました。人手不足、利用者不足、後継者不足などで住民の生活はどんどん不便になります。公共料金もあがり、生きるのが困難になっていきます。これらは現在進行形の現実です。今はまだ多くの人にとって気がつかない程度ですが、あと数年もすれば誰の目にも明らかなほどに街の風景が変わります。

問題は山積みです。劇的な解決策などありません。ひとつひとつ丁寧に進めていくしかないのです。

具体的な問題点や対策を考えて行く前に、今回の記事ではこれまでに確認したリスクをまとめてみます。

私が注目している日本のリスクは以下の3点です。

  • 出生率の減少

  • 人口の減少

  • 団塊世代が健康寿命を終える

まさに『静かなる有事』です。
これが現在日本の最大の課題です。



出生数の減少


子どもが産まれる数、出生数が減少しています。

そもそも出生数の減少はなにが問題なのでしょうか。
いくつかありますが、将来の日本を支える人が減り、国力を維持できないからです。つまり出生数減少問題とは、人口減少問題のひとつの側面なのです。

政府も出生数減少について問題意識を持っているようです。
故安倍元首相は、2017年の解散総選挙にあたって少子高齢化が「国難」であると訴えました。このときの出生数は90万人でした。現在の出生数はさらに減少し、昨年は80万人を割り込み77万人台となる見込みです。「国難」はさらに深刻化しています。

[国難突破解散の意味に関する質問主意書](https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a195005.htm)

[今年の出生数、推計77万人 少子化が一層加速 朝日新聞独自算出:朝日新聞デジタル](https://www.asahi.com/articles/ASQDP6FPSQDPUTFL012.html)


岸田首相は2023年新年早々、「異次元の少子化対策」を行うと宣言しました。

小倉大臣の下、異次元の少子化対策に挑戦し、若い世代からようやく政府が本気になったと思っていただける構造を実現するべく、大胆に検討を進めてもらいます。

[令和5年1月4日 岸田内閣総理大臣年頭記者会見 | 総理の演説・記者会見など | 首相官邸ホームページ](https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2023/0104nentou.html)

「異次元の少子化対策」、その中身は具体性がとぼしく、実効性に疑問があります。


2021年の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に産む子どもの数)は1.3でした。

[第1部 少子化対策の現状(第1章 2): 子ども・子育て本部 - 内閣府](https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2022/r04webhonpen/html/b1_s1-1-2.html)

出生数は年々減少しています。人口を維持できる出生率は2.07と試算されています。2.07をこえないと人口は増加しません。

仮に「異次元の少子化対策」が有効に機能して出生率が劇的に改善したとします。それでも人口が増加するのは数十年後です。なぜなら、死者数が出生数を大きく上回っているからです。
2021年の死者数は約145万人でした。同年の出生数は約81万人ですから、生まれる子どもの倍近い数の人が亡くなっています。

[人口動態調査 結果の概要|厚生労働省](https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html)

亡くなる人の数と同数の子どもが産まれないと人口減少は止まりません。短期的には出生率が4をこえて初めて現在の人口を維持できるのです。
どんなに「異次元の少子化対策」をしたとしても、一人の女性が平均で生涯に4人の子どもを産むのは現実的ではないでしょう。無理に進めようとすれば人権侵害がおきます。

もちろん、子どもを産み育てたいと希望する人に対するさまざまな行政サービスや経済的支援、社会の理解はまだまだ足りません。「異次元」の速度でやるべきことをやらなければならないでしょう。

しかし現時点での出生数減少対策は、人口減少対策にほぼ関係ないのです。人口を維持したり増加する日が来るのは、どんなに早くても数十年後です。このポイントをおさえておく必要があります。



人口減少


「日本の人口は減少している」、誰もが知っている事実です。
では、どれくらい減少しているかご存知でしょうか。

人口は死亡者数を出生数が上回れば増加し、下回れば減少します。これを「自然増減」といいます。

日本の人口は戦後一貫して増え続けました。
もっとも人口が増えたのは1949年です。この年は1年間で175万人も人口が増えました。いわゆる団塊の世代です。団塊世代の子ども世代である団塊ジュニア世代のピークは1973年で、138万人の増加です。

初めて人口が減少したのは今から約20年前の2005年で、2万1千人の減少でした。では現在どれくらいの減少でしょうか。
コロナ禍が始まった2020年は53万2千人の減少、翌年2021年は62万8千人の減少です。私が住んでいる埼玉県鶴ヶ島市の人口が7万人です。鶴ヶ島市人口の9倍も1年間に減少したのです。
人口減少は加速しています。昨年2022年の数字はまだ出ていませんが、さらに減少幅が大きくなるのは確実です。

2017年にだされた推計では、2065年の日本人人口は約8800万人と予想されています。今が約1億2千5百万人ですから、今後40年で日本人の人口が今の約3分の2になるというのです。しかも、ここ数年の人口減少スピードは予想よりもはるかに速く進んでいるのです。

[日本の将来推計人口(平成29年推計)|国立社会保障・人口問題研究所](https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp_zenkoku2017.asp)


団塊世代の健康寿命終了


人口が減少するだけなら、実は大きな問題ではありません。

例えばドイツは人口約8千万人、イギリスが約6千8百万人、フランスが約6千5百万人、韓国が約5千万人です。人口が数千万人規模だからといってそれ自体が問題ではないのです。

注目すべきは人口減少のスピードと人口構成比です。
とくに人口構成比のアンバランスさは深刻な問題を引き起こします。少ない若者でたくさんの高齢者を支えないといけなくなるからです。

日本は戦後に人口が急激に増加しました。終戦の数年後に生まれた団塊世代は今、健康寿命を終えようとしています。

健康寿命とは、「日常生活に制限のない期間の平均」「自分が健康であると自覚している期間の平均」のことです。健康寿命を終えると働いたり地域活動に参加するのが困難になります。旅行にでかけたりグルメを楽しむなどの消費活動も鈍化します。心身ともに不具合がでてくるので他人のサポートがないと日常生活が困難になってきます。

[健康寿命の定義と算出方法 | e-ヘルスネット(厚生労働省)](https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/hale/h-01-001.html)

日本人の健康寿命は、男性72.68歳、女性75.38歳です。団塊世代は1947年から1949年に生まれた人です。団塊世代は現在、74歳から76歳です。団塊世代の男性はすでに健康寿命を終え、女性もほぼ終えかけています。

もちろん健康寿命は統計的な数字であって、健康や寿命は個人差があります。しかし、人口があまりに多い団塊世代の健康寿命終了は、社会的インパクトが極めて大きいのです。

以上のことは、日本全体で進行している現実です。
出生数の減少・人口減少・団塊世代の健康寿命終了そのものは問題ではありません。これらはさまざまな深刻な問題を呼び寄せるリスク要因です。

国としても問題意識をもっているようですが、地域によって必要な対策が異なります。国だけではすべての地域特性にあった施策をうつことはできません。

私はいわゆるベッドタウンに住んでいるので、このシリーズを通して、ベッドタウンがどうやってこの『静かなる有事 』に対応していくかを考えていきます。

国や自治体に任せておけばなんとかなるような問題ではありません。さまざまな立場の住民が知恵を持ち寄って力を合わせて取り組んでいかなければ、今後ますます生きづらくなります。世代や立場、党派性をこえて意見交換をする必要性を強く感じます。

一緒に考えましょう。
ぜひ、ご意見・ご感想を寄せてください。
おまちしています。


鶴ヶ島たろう


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