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ブレッドボード式ユニバーサル基板、自分で作ると超便利

ユニバーサル基板が、憎い。

ブレッドボードは実験するのには超便利なんだけど、いったん実験にカタがついた後は、取り扱いに困ってしまう。

SN76489の実験

そのまま保存しておいても、ジャンパーワイヤーが抜けてオシャカになってしまうのが関の山だし、写真に撮って記録してからバラすんでも、また必要になった際に繋げ直すのが面倒だ。特に、飽きっぽい性格の俺は、3つ4つの実験を並行して走らせているのが常なので、たまにフと「あの実験と、こっちの実験を組み合わせたら面白いんじゃないか?」と思いついても、ブレッドボードに組み直すことを思うとウンザリしてしまう。まずやる気を出すまでがひと苦労なのだ。

それに、成功した実験の通りに接続しても、すぐ動くとは限らない
上手くいった実験というのは、ただ接続が上手くいったというだけではなく、不良部品をはじく「検証工程」であったり個体差の選別であったり、部品の加工であったりと、見えない工程が積み重なった上での「成功」なのだ。部品箱をもう1回あさるのとか、面倒すぎるだろ。

スキルのある人間なら、こういう時は、上手くいった実験をそのままユニバーサル基板に移植するんだろうけど…

…あいにく俺は、子供の頃からユニバーサル基板という奴が苦手で…というか嫌いで…むしろ憎んですらいるのだった。

“universal”って「万能」とか「万人向け」って意味じゃないの?
なんであんなに難しいんだよ!
俺向けじゃねえぞ!

なんかもう、汚くしか作れない。憎い。

どうあがいても上手く作れないし、ちゃんと作ったはずなのに動かない。あるいは動いても、数日後に引っ張り出すと動かなくなってる。

だいたい、ランドにいったん半田付けした後、なんで、もう1回配線を半田付けさせるんだよ!?

配線の半田付けを拒絶するかのような構造。憎い。

二度付けは禁止だろ!

関西人はユニバーサル基板を告発すべきだ。

ユニバーサル基板が、憎い!

――そんなある晩、解決策を突然思いついたのだ。


ブレッドボード式ユニバーサル基板

要は、ユニバーサル基板の「配線」が難しいのだから、あらかじめ基板上に配線があればいいのだ。
なら、「ブレッドボード」のような仕組みを持ったユニバーサル基板があればいい。というか、ブレッドボードの仕組みをそのままパクッちゃえ! それなら、実験した結果をそのまま移植できるぜ!

そう思いついた俺は、矢も盾もたまらず、KiCadを立ち上げて基板の設計を始めたのであった。

とりあえず、2.54mmピッチでランドを並べて開始。

大きな設計方針としては「ブレッドボードをパクって作る」ということなんだけど、その他にもユニバーサル基板には不満が多い。例えば、片面だけにランドがあるユニバーサル基板とか、何度も熱を加えているとランドが剥がれることがよくある(それも憎みポイントのひとつだ)。両面ランドのスルーホールにしておけば、配線難易度もさらに低減できるだろう。

そうそう、これだよこれ…

色々な部分を、ブレッドボードと少し変えてある。

これこそ真の「万人向け(ユニバーサル)」基板だろ!

データが出来たんで、即行で発注。発注先は、いつもお世話になってるJLCPCBだ。先日知ったKiCadのプラグイン「Fabrication Toolkit」を使えば、ワンクリックでガーバーデータが生成できてしまうのであった。KiCadのプラグイン検索で出てくるので、インストールもラクチンだ(調べてはないけど、JLCPCB以外の業者でも、発注データを作れるプラグインはあると思う。さすがオープンソースのKiCadはスゲエ)。

ワンクリックでデータができるの、本当に便利。

プラグインでは、ガーバーデータが圧縮されたZIPファイルが作られるんで、発注業者(今回はJLCPCB)のサイトで、それをドラッグ&ドロップするだけだ。

基板製造業者のサイトって、大抵はこの形。

というわけで、着想してから発注するまで、実に「2時間」しかかからなかった。まあ、構造が単純だったり、ブレッドボードというお手本もあったり、自動化プラグインもあったりと、環境が揃っていたということもあったけれど、何より、「ユニバーサル基板が憎い! 奴と永遠にオサラバしたい!」という想いが強いモティベーションとなって、俺をここまで駆り立てたのであった。ふう、やったぜ、俺!


――発注したあと、何気なくアマゾンで「ブレッドボード ユニバーサル基板」と検索したら、同じような基板が山ほどあったけどさwww

そりゃ、誰でも考えつくよなあ。

作る必要なかったのか? 否! 自分で作れば10枚で5ドル!(送料別)
しかも自分の使いやすいように設計できる! これが自作の醍醐味だぜ!


到着

発注から7日間で到着。
実は、SとLの2サイズを発注していたのであった。それぞれ10枚ずつで、合計10ドル。うん、アマゾンで同じような商品を買うよりも、ギリ安いw(まあアマゾンなら2日後には届くけど…)

下側の2枚が、今回の基板。

ブレッドボードよりも穴の数は多めにして、ESP32 DevKitC(幅が広くて、普通のブレッドボードだと配線する隙間がない)でも配線できるようにした。こういうことができるのが、自作の良さだよね。

ESP32 DevKitCでも両脇に配線の余裕がある。

あと、細かいところも自分が使いやすいようにしてたりする。たとえば内部配線は1.5Aぐらい流せるような太さにしてある(ブレッドボードは0.5Aぐらい)。また、四隅にはマウンティングホールも作ったので、できた後はスペーサーを差したり、ケースに固定したりしやすい。

うんうん、これよこれ。

スペーサーで二枚重ねするのも夢があるね。

というわけで、ブレッドボード上に組んだ実験回路を見ながら、そのまま配線していく。マジ簡単。

想像以上に簡単。

そうそう、マッキーなんかで書き込みできるように、基板の色は「白」を選んだんだけど…。

書き込みできるのは便利なんだけど…。

半田付けのとき、反射してめっちゃ見づらい!
これは、黒い基板に白マッキーで書き込むとかの方がいいかも。今後、改善の余地ありかな(まあ、白じゃないとブレッドボードっぽくはないけどね)。

白い基板は、どこに半田付けしたかが分かりづらい。

なお、配線用のワイヤーは、俺は秋月で買ってあったものがあったんで使ったけど、単芯の「ブレッドボードに使えます」と謳った製品だったら大丈夫だと思う。

KYOWA「耐熱通信機用ビニル電線 H-PVC 0.65mm」。

ってわけで、ブレッドボードからの移植も完成。
例の「2度付け」配線が必要ないだけで、「こんなにも簡単なのか!?」と驚くほどだったよ。

これぞ真のユニバーサル基板だ!

あと、ブレッドボード式ユニバーサル基板だと、ここからさらに実験を発展させやすいという利点もあるな。なにせ、最初から配線されたランドがいくつも余ってるわけだし。

うん、大満足!

ユニバーサル基板よ、永遠にさようなら!


データはこれだよ

今回発注したデータは、Googleドライブで公開してある。このまま注文できるんで、もしよければどうぞ。
JLCPCBは新規ユーザーだと54ドルのクーポンがもらえるんで、ほとんど通関手数料(1~2ドル)だけで何十枚も作れると思う。
(※とは云え、品質その他の保証はできません。不具合があった場合も責任は持てませんので、悪しからず)

動画もあるよ

今回の内容は、六百デザイン工作部のチャンネルにも上げてある。よければそちらもどうぞ。

(この項、了)










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